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3 お客さま
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ランディがあわてて話題を変える。
「そうそう、弟が士官訓練センターに入ったんだろ?」
レイの唯一の弱点であるリュウの話である。
どんな時でも、リュウの話になるとレイの頬がゆるむのをランディは知っているのだ。
普段はあまり感情を表さないのに、リュウの話になるとレイは人が違ったようになる。その甘い表情を見ていると、年の離れた弟が可愛くて仕方ないのがよくわかる。
「そうなんだ。今朝、連合宇宙軍のブルーの制服姿を見た時は、涙がでそうだったよ。小さかったリュウが大きく立派になって…、俺も苦労した甲斐があったって。でも…。もう少ししたら俺なんかいてもいなくてもよくなるかと思うと、ちょっと寂しいね」
はあっ、とレイは溜め息をついた。
「なんだ、なんだっ! あんたはブラコンか? 頼むからクライアントにそんな情けないツラ見せてくれるなよ。どんな危険な宙域へでも確実にブツを届ける『美貌のクーリエ』ってのがウリなんだからな。その偶像が壊れるとギャラが下がる」
冗談めかした言葉に。
「俺が安い仕事を受けたことある? 高い仕事しかしてないよ」
「キツすぎて、割がいいとは思えないけどな」
レイは仕事を受けるとき、いつも最高額のギャラを要求する。
抜群の実績を持つクーリエだからと言えば聞こえはいいが、要するに危険度の高い仕事ばかりを選んでいるようなものなのだ。困難を巧みに切り抜け、時間通り、指定通りに相手にブツを届けてきたからこそ、押しも押されもせぬトップの座を得ているのであるが…。
「そうだ! 今夜、リュウが士官訓練センターに入ったお祝いをするんだ。ランディもおいでよ」
「おっ、いいのか。これまでは、頼んでも家にご招待してもらえなかったのに!」
「いいよ。お祝いだし、こんなにうれしいことって、めったにないからね」
真面目になって言葉を続ける。
「それに。もし俺に何かあったとき、リュウが頼れる男のひとりくらい紹介しておかないと、安心できないからね」
「なに言ってんだ。一緒の宇宙船に乗ってるんだから、あんたに何かあったときってのは、俺にも何かあるってことだろうが」
それもそうだね、とレイは考えこむ。その顔を見て、ついランディはフォローしていた。
「心配しなくても、俺はまだまだ死ぬ気はない。あんたも簡単には死にそうに見えないよ。…でも、もしもあんたに何かあったら、できる限りのことをするさ。レイのかわいい、かわいい弟のためにな。誓うよ」
誠実に言うと、まるで王に忠誠を誓う貴族のように胸に拳を当ててみせてから、ランディはにやりと笑った。
「あんたの大切なリュウにようやく会えるのか。楽しみだな」
「だめだよ、悪いことを教えちゃ。まだ子どもなんだから」
悪いことってどんな、と聞き返そうとした時、船内に急を告げるブザーが鳴り響いた。
「おっ、何だ?」
小さく絞ったコンピュータの音声が、宇宙船が接近中だと知らせている。
スクリーンに目をやったレイが簡潔に応えた。
「お客さま、だね。囲まれそうだ」
穏やかな言葉とは裏腹に、今まで漂っていたほんわかした雰囲気が跡形もなく消え去った。
レイの表情はきりりと引き締まっている。
エメラルド・グリーンの目に鋭い光が宿りグレーの縞のようになっている。豹がいままさに獲物に飛びかかろうとする警戒態勢。ランディが密かに闘いのモードと呼んでいるレイのもうひとつの顔だ。
操縦席にきちんと座り直したレイはスクリーンに目をやりながら、テキパキと操縦パネルを操りだした。
「前から2隻。上と後ろに1隻ずつか。おいおい、今日のブツは何なんだ? 狙われるようなモノか? さっさと届けて早く帰るとか言うから、楽な仕事だと思ってたのに」
ランディの文句にレイが律儀に応えた。
「確か、鉱物の見本だと聞いたけどね。近場の仕事でギャラが良かったんだけど、お客さま付きじゃ割に合わないね」
言葉だけはあくまでも変わらない。
「危険かどうかチェックしてから、仕事を受けろよッ!」
「今度から、そうする」
「そうそう、弟が士官訓練センターに入ったんだろ?」
レイの唯一の弱点であるリュウの話である。
どんな時でも、リュウの話になるとレイの頬がゆるむのをランディは知っているのだ。
普段はあまり感情を表さないのに、リュウの話になるとレイは人が違ったようになる。その甘い表情を見ていると、年の離れた弟が可愛くて仕方ないのがよくわかる。
「そうなんだ。今朝、連合宇宙軍のブルーの制服姿を見た時は、涙がでそうだったよ。小さかったリュウが大きく立派になって…、俺も苦労した甲斐があったって。でも…。もう少ししたら俺なんかいてもいなくてもよくなるかと思うと、ちょっと寂しいね」
はあっ、とレイは溜め息をついた。
「なんだ、なんだっ! あんたはブラコンか? 頼むからクライアントにそんな情けないツラ見せてくれるなよ。どんな危険な宙域へでも確実にブツを届ける『美貌のクーリエ』ってのがウリなんだからな。その偶像が壊れるとギャラが下がる」
冗談めかした言葉に。
「俺が安い仕事を受けたことある? 高い仕事しかしてないよ」
「キツすぎて、割がいいとは思えないけどな」
レイは仕事を受けるとき、いつも最高額のギャラを要求する。
抜群の実績を持つクーリエだからと言えば聞こえはいいが、要するに危険度の高い仕事ばかりを選んでいるようなものなのだ。困難を巧みに切り抜け、時間通り、指定通りに相手にブツを届けてきたからこそ、押しも押されもせぬトップの座を得ているのであるが…。
「そうだ! 今夜、リュウが士官訓練センターに入ったお祝いをするんだ。ランディもおいでよ」
「おっ、いいのか。これまでは、頼んでも家にご招待してもらえなかったのに!」
「いいよ。お祝いだし、こんなにうれしいことって、めったにないからね」
真面目になって言葉を続ける。
「それに。もし俺に何かあったとき、リュウが頼れる男のひとりくらい紹介しておかないと、安心できないからね」
「なに言ってんだ。一緒の宇宙船に乗ってるんだから、あんたに何かあったときってのは、俺にも何かあるってことだろうが」
それもそうだね、とレイは考えこむ。その顔を見て、ついランディはフォローしていた。
「心配しなくても、俺はまだまだ死ぬ気はない。あんたも簡単には死にそうに見えないよ。…でも、もしもあんたに何かあったら、できる限りのことをするさ。レイのかわいい、かわいい弟のためにな。誓うよ」
誠実に言うと、まるで王に忠誠を誓う貴族のように胸に拳を当ててみせてから、ランディはにやりと笑った。
「あんたの大切なリュウにようやく会えるのか。楽しみだな」
「だめだよ、悪いことを教えちゃ。まだ子どもなんだから」
悪いことってどんな、と聞き返そうとした時、船内に急を告げるブザーが鳴り響いた。
「おっ、何だ?」
小さく絞ったコンピュータの音声が、宇宙船が接近中だと知らせている。
スクリーンに目をやったレイが簡潔に応えた。
「お客さま、だね。囲まれそうだ」
穏やかな言葉とは裏腹に、今まで漂っていたほんわかした雰囲気が跡形もなく消え去った。
レイの表情はきりりと引き締まっている。
エメラルド・グリーンの目に鋭い光が宿りグレーの縞のようになっている。豹がいままさに獲物に飛びかかろうとする警戒態勢。ランディが密かに闘いのモードと呼んでいるレイのもうひとつの顔だ。
操縦席にきちんと座り直したレイはスクリーンに目をやりながら、テキパキと操縦パネルを操りだした。
「前から2隻。上と後ろに1隻ずつか。おいおい、今日のブツは何なんだ? 狙われるようなモノか? さっさと届けて早く帰るとか言うから、楽な仕事だと思ってたのに」
ランディの文句にレイが律儀に応えた。
「確か、鉱物の見本だと聞いたけどね。近場の仕事でギャラが良かったんだけど、お客さま付きじゃ割に合わないね」
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「危険かどうかチェックしてから、仕事を受けろよッ!」
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