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7 酒に呑まれて
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「リュウ、勧められるままに飲んでたら、つぶれるよ。おまえ、酒はあんまり強くないだろう?」
レイが心配そうに注意する。
レイだって、さっきから何杯も飲んでいるじゃないか…、自分のことを心配した方がいい。
リュウは意固地になっていた。
この店で、女たちにちやほやされているレイを見ているのが腹立たしかったのだ。
二人きりで食事にきたはずなのに、いつものようにレイを独り占めできない。甘い蜜に引き寄せられる蜂のように、次々と女が集まってくるのだ。
しかも今夜のレイは、その女たちに冷たい視線を浴びせることも、厳しい声で追い払うこともしない。
二人でこんな店に来るのは初めてだから、普段もこんな風なのかは分からないが。
レイがふわっとした雰囲気のままだから、いつの間にか、たくさんの女に囲まれてしまったのである。
女たちに笑みを見せ、グラス片手に楽しそうにしているレイ。
ストレスを発散させているのかと思うと、リュウは自分の不甲斐なさによけいに嫌気がさして、ついつい注がれた酒をあおってしまうのだった。
もう、頭がくらくらしている。
気が大きくなって、隣に座った女の肩に手を回して抱き寄せてみた。レイに対抗したのである。女はうれしそうに、リュウの胸に頭を寄せてきた。
その髪をやさしくなでながら、腕の中にいるのがレイだったらいいのにと不埒なことを考えていた。そんな胸の内を知られたら張り倒されそうだけれど。
リュウの胸の内を知る由もないレイである。
女を愛おしそうな抱く姿に、エメラルド・グリーンの瞳がギラリと光る。不穏な光。
レイは自分の肩にのっていた女の頭をやさしく押しやって、
「リュウ、もう帰るよ。俺は疲れてるんだ。早くベッドに入りたい」
ベッドという言葉に周りの女から嬌声があがる。
暗黙のうちに、今夜、誰がこの男のベッドに潜り込むかという熾烈な闘いが繰り広げられていたようである。
「ごめんね、今夜はパスさせて。キケロに着いたばかりなんだ。これ以上は体がもたないよ。ほら、リュウ。立てる?」
がっかりした女たちのことなど少しも気にかけずに、優雅に立ち上がったレイがリュウに手を差し伸べた。
その手を取ろうとしたが、腕に抱いた女が邪魔で手が伸ばせない。
それに手を引いて立ち上がらせてもらうなんて、情けないもいいところ。
「いいよ、レイ。先に帰ってくれて。俺はもう少し、飲んでいくから」
レイのエメラルド・グリーンの瞳が再び、ギラリと光った。
そのキツい光に身がすくむが、リュウは平静を装った。酔っているからそんなことができたのかもしれない。
「どうせ帰っても、レイはベッドに倒れ込むだけだろ。俺は話し相手がほしいんだ」
精一杯おとなぶってみせる。
わがままを言うなと無理やりソファから引きずり出されるかと思っていた。抵抗しても、押さえ込んで連れて帰るだけの力がレイにはある。
なのに。伸ばしていた手を腰に当てると
「勝手にすればいい」
冷たい声で吐き捨てて、レイはくるりと背を向けた!
つられて腰を上げた女たちを振り返りもせずに、ということは、こちらをも振り返らなかったということだが…、ゆっくりとテーブルの間を遠ざかっていく。
細身のしなやかな身体にやわらかい蜂蜜色の髪が揺れている。
誇り高い黒豹が自分を見せつけるように歩を進める感じだった…。誰もレイから目を離すことなどできない。
「ほおっ」とか「いい男ねえ」という溜め息が周りの女たちからだけでなく、店じゅうからもれたほどだ。
「いいの?」
腕の中の女がささやく。
「ああ」と応えて、また酒をあおった。
平気そうな顔をするのがつらい。どうして! そんなに簡単に俺を捨てていくんだ。心が悲鳴をあげている。
危険な目にあわせても、わがままを言っても、レイは叱ってくれない。自分で始末をつけろと突き放すだけ。
やさしく諭されたなら。いや、身が竦むほど恐くてもかまわない。冷たい声で詰られても、殴り倒されても、かまわないのに。
俺のことなど、もうどうでもいいんだろうか。
叱ってもらえないのが、これほどつらいとは思わなかった。
黙り込んでしまったために、周りが白けていく。レイがいるだけで座が華やぐのに。腕の中にいる女は別だが、ほかの女たちは帰り支度がしたくてそわそわしているようだ。
「ねえ、話し相手はもちろんだけど。ほかのお相手をしてもいいわよ」
女がこちらの瞳を見上げて、微笑みながらそんなことを。
考えもしなかった。そんなつもりは毛頭ない…。
「ちょっとトイレに行ってくる」
そう言って女の頭をどける。立ち上がって、ふらつかないように歩み出す。きっと、さっきのレイの後ろ姿とは比べものにならないくらい無様だろうな。
レイが心配そうに注意する。
レイだって、さっきから何杯も飲んでいるじゃないか…、自分のことを心配した方がいい。
リュウは意固地になっていた。
この店で、女たちにちやほやされているレイを見ているのが腹立たしかったのだ。
二人きりで食事にきたはずなのに、いつものようにレイを独り占めできない。甘い蜜に引き寄せられる蜂のように、次々と女が集まってくるのだ。
しかも今夜のレイは、その女たちに冷たい視線を浴びせることも、厳しい声で追い払うこともしない。
二人でこんな店に来るのは初めてだから、普段もこんな風なのかは分からないが。
レイがふわっとした雰囲気のままだから、いつの間にか、たくさんの女に囲まれてしまったのである。
女たちに笑みを見せ、グラス片手に楽しそうにしているレイ。
ストレスを発散させているのかと思うと、リュウは自分の不甲斐なさによけいに嫌気がさして、ついつい注がれた酒をあおってしまうのだった。
もう、頭がくらくらしている。
気が大きくなって、隣に座った女の肩に手を回して抱き寄せてみた。レイに対抗したのである。女はうれしそうに、リュウの胸に頭を寄せてきた。
その髪をやさしくなでながら、腕の中にいるのがレイだったらいいのにと不埒なことを考えていた。そんな胸の内を知られたら張り倒されそうだけれど。
リュウの胸の内を知る由もないレイである。
女を愛おしそうな抱く姿に、エメラルド・グリーンの瞳がギラリと光る。不穏な光。
レイは自分の肩にのっていた女の頭をやさしく押しやって、
「リュウ、もう帰るよ。俺は疲れてるんだ。早くベッドに入りたい」
ベッドという言葉に周りの女から嬌声があがる。
暗黙のうちに、今夜、誰がこの男のベッドに潜り込むかという熾烈な闘いが繰り広げられていたようである。
「ごめんね、今夜はパスさせて。キケロに着いたばかりなんだ。これ以上は体がもたないよ。ほら、リュウ。立てる?」
がっかりした女たちのことなど少しも気にかけずに、優雅に立ち上がったレイがリュウに手を差し伸べた。
その手を取ろうとしたが、腕に抱いた女が邪魔で手が伸ばせない。
それに手を引いて立ち上がらせてもらうなんて、情けないもいいところ。
「いいよ、レイ。先に帰ってくれて。俺はもう少し、飲んでいくから」
レイのエメラルド・グリーンの瞳が再び、ギラリと光った。
そのキツい光に身がすくむが、リュウは平静を装った。酔っているからそんなことができたのかもしれない。
「どうせ帰っても、レイはベッドに倒れ込むだけだろ。俺は話し相手がほしいんだ」
精一杯おとなぶってみせる。
わがままを言うなと無理やりソファから引きずり出されるかと思っていた。抵抗しても、押さえ込んで連れて帰るだけの力がレイにはある。
なのに。伸ばしていた手を腰に当てると
「勝手にすればいい」
冷たい声で吐き捨てて、レイはくるりと背を向けた!
つられて腰を上げた女たちを振り返りもせずに、ということは、こちらをも振り返らなかったということだが…、ゆっくりとテーブルの間を遠ざかっていく。
細身のしなやかな身体にやわらかい蜂蜜色の髪が揺れている。
誇り高い黒豹が自分を見せつけるように歩を進める感じだった…。誰もレイから目を離すことなどできない。
「ほおっ」とか「いい男ねえ」という溜め息が周りの女たちからだけでなく、店じゅうからもれたほどだ。
「いいの?」
腕の中の女がささやく。
「ああ」と応えて、また酒をあおった。
平気そうな顔をするのがつらい。どうして! そんなに簡単に俺を捨てていくんだ。心が悲鳴をあげている。
危険な目にあわせても、わがままを言っても、レイは叱ってくれない。自分で始末をつけろと突き放すだけ。
やさしく諭されたなら。いや、身が竦むほど恐くてもかまわない。冷たい声で詰られても、殴り倒されても、かまわないのに。
俺のことなど、もうどうでもいいんだろうか。
叱ってもらえないのが、これほどつらいとは思わなかった。
黙り込んでしまったために、周りが白けていく。レイがいるだけで座が華やぐのに。腕の中にいる女は別だが、ほかの女たちは帰り支度がしたくてそわそわしているようだ。
「ねえ、話し相手はもちろんだけど。ほかのお相手をしてもいいわよ」
女がこちらの瞳を見上げて、微笑みながらそんなことを。
考えもしなかった。そんなつもりは毛頭ない…。
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