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8 惑星フェンネルへ
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「連合宇宙軍宇宙船、『VU-011』。救難信号をキャッチした。どうした?」
ぶっきらぼうな通信である。
が、こんな宙域で連絡がもらえるとは思わなかったリュウたちにとって、それは天の声であった。
「連合宇宙軍宇宙船、『VU-011』です。コンピュータの故障で操縦が制限されていますし、この辺りのナビもしてくれないんです。それに、燃料タンクにヒビかなんか入ってるようで、減りが早くて…」
「それじゃあ、近くの惑星に降りりゃいいんだろうが。今、どこにいるんだ? そうか。ちょっと待ってな、着陸できそうな惑星のデータを教えてやるよ」
クリスタル号の航路から、まだ辺境へはずれたあたり。宇宙船の位置を確かめたランディは、宙航図に見入っている。
「その辺には、大きな惑星はないよ。そうだな、YZの方向に一時間くらい行けば、何とか降りられそうな惑星はあるけど…。確かフェンネル、今は見捨てられてる。燃料が少ないなら、そこに降りて助けを待つしかないだろうね」
チラッと宙航図に目をやったレイが言う。
「へえ~、ほんとだ。あんた辺境には詳しいな。そしたら早々に済ませるか」
ランディは通信に戻った。
「『VU-011』、そこからYZの方向に1時間程度のところにフェンネルという惑星がある。今は見捨てられた惑星だが、昔は鉱物が採れてそれなりに行き来があったから宙港は残っているはずだ。宇宙軍へは連絡しておくから、そこに降りて待ってろ!」
名乗りもせずに、それで通信を終わらせようとしたランディに、VU-011から悲痛な声が帰ってきた。
通信士であるトーマスからエヴァが通信機を取り上げて叫んでいた。惑星を教えられただけではどうしようもないのである。
「待ってください! あの…、フェンネルの座標、ありがとうございます。でも、この宇宙船、スピードが落ちないんです! 僕たちは簡単に着陸できない…」
ランディとレイが顔を見合わせた。
操縦に問題があるならレイの担当である。レイは目でランディに促されてしぶしぶ操縦席のマイクをオンにした。はあ。
「ねえ、スピードが落ちないってどういうこと? 説明してくれるかな…」
相手は切羽詰まった状態にあるらしい。レイはやさしく問いかけた。
エヴァと会話をかわすその口調が、リュウの頭のどこかにひっかかった。通信機から流れる声に耳を澄ますと、ほかの誰よりも聞きたかった声?
……っ、えッ? もしかして! あんまり俺がレイが居てくれたらって考えていたから、レイの声に聞こえるのか。
でも!
エヴァから引ったくったマイクを握ると、リュウは叫んだ。
「レイッ! レイなのか?」
「へえっ…、なに? リュウが乗ってるんだ。こんな辺鄙なところで何やってんの?」
通信機を通して聞こえてきたのんびりした声に、リュウは涙ぐみそうになった。それでも無理に強がる。
「士官訓練センターの指揮演習だよ。レイこそ、なんでこんなとこに居るんだ?」
「俺はちょっと近道しようと思っただけだけど…。ふ~ん。こんな辺鄙なところで演習してるんだ? もしかして迷子になったとか?」
近道って、小惑星帯がか? リュウの部下たちがぎょっとしたのがわかった。それに。くそっ、レイは面白がってる! 俺たちはそれどころじゃないのに。
「レイッ! 冗談抜きで困ってるんだ。コンピュータが狂っちまって、操縦が制御できなくて、燃料も残り少ない…」
威勢良く始まった言葉が、尻すぼみに消えてしまう。
「指揮演習って、もしかして、おまえが指揮してるの?」
「もしかしなくても、そうだよ。頼りない俺がキャプテンなんだ。だから、トラブルが起こってもどうしようもなくて、こんな辺鄙なところにいる…」
わざと皮肉っぽい調子で喋るのに、レイはリュウがほんとうに心細かったんだ気づいた。今度は真面目な調子で話しかけた。
「ごめんね、からかったりして。リュウ。落ち着いて、最初から説明してごらん」
リュウはトラブルに気づいたところから、順を追って説明した。できる限り詳しく。レイは時々口をはさみながらも、黙って聞いている。
リュウの話を聞いているうちに、レイの頭には宇宙船が小惑星帯にぶつかって爆発した光景が浮かんだ。
ぶるっと身を震わせる。よく…、無事に小惑星帯を抜けられたもんだ。レイはリュウを助けてくれた、そして自分と逢わせてくれた幸運の女神に心から感謝した。
「コンピュータがおかしいんだね。誰かコンピュータに詳しい人間はいるの?」
「うん。ヒューが見てる。替わるよ」
「ヒューくんか。キミなら何があったかわかるだろう?」
「はい、どん欲なワームがいて自動操縦のためのデータを食い荒らしています。スピードや旋回なんかの操縦制御のデータも。旋回だけは回復しましたけど、修復する後から、ワームが現れて…、なかなか殲滅できなくて」
「そう…、それじゃあ、まともに操縦できるようにはならないの?」
「頑張ってるんですけど力が及びません」
「そんなこと、ないよ。少なくともキミのおかげで旋回できるようになったんだろう。自信を持っていい」
レイはそう声をかけておいてから
「リュウ。考えこんでても仕方ないよ。とにかくフェンネルに航路をとりなさい。それは、できるね」
「はい、できます」
応えたのはエヴァだ。リュウは通信機をヒューに譲ってから、安心のあまり? ぐったりシートに崩れ込んでいたから。
「俺もこれからフェンネルに向かうから。ちゃんと来るんだよ!」
でも…。
行ってもハイスピードのままじゃ、着陸できない。通り過ぎてしまうだけじゃないかとリュウだけでなく全員が思った。レイをのぞいて。沈黙の向こうから
「こらっ、リュウ! 返事は!」と。
厳しい口調にビクリとしたリュウがとっさに「はい! すぐにフェンネルに向かいます」と返す。これはもう、兵士の条件反射である。
「スピードが落ちないんだね。心配しなくていいよ。ランデブーするまでに、どうすればいいか考えとくから、しっかりね!」
ふっという笑い声とともに通信が切れた後、リュウはしばらくスピーカーを見つめていた。考えとくって、どうする気だろう。
「キャプテン!」
エヴァの声にハッと我に返る。心配するのはよそう。レイがきっと何とかしてくれる。今はここにいる隊員たちのためにしっかりしなくてはいけない。
「カルヴィン、フェンネルに向かってくれ」
リュウは自信を持って指示を出した。
ぶっきらぼうな通信である。
が、こんな宙域で連絡がもらえるとは思わなかったリュウたちにとって、それは天の声であった。
「連合宇宙軍宇宙船、『VU-011』です。コンピュータの故障で操縦が制限されていますし、この辺りのナビもしてくれないんです。それに、燃料タンクにヒビかなんか入ってるようで、減りが早くて…」
「それじゃあ、近くの惑星に降りりゃいいんだろうが。今、どこにいるんだ? そうか。ちょっと待ってな、着陸できそうな惑星のデータを教えてやるよ」
クリスタル号の航路から、まだ辺境へはずれたあたり。宇宙船の位置を確かめたランディは、宙航図に見入っている。
「その辺には、大きな惑星はないよ。そうだな、YZの方向に一時間くらい行けば、何とか降りられそうな惑星はあるけど…。確かフェンネル、今は見捨てられてる。燃料が少ないなら、そこに降りて助けを待つしかないだろうね」
チラッと宙航図に目をやったレイが言う。
「へえ~、ほんとだ。あんた辺境には詳しいな。そしたら早々に済ませるか」
ランディは通信に戻った。
「『VU-011』、そこからYZの方向に1時間程度のところにフェンネルという惑星がある。今は見捨てられた惑星だが、昔は鉱物が採れてそれなりに行き来があったから宙港は残っているはずだ。宇宙軍へは連絡しておくから、そこに降りて待ってろ!」
名乗りもせずに、それで通信を終わらせようとしたランディに、VU-011から悲痛な声が帰ってきた。
通信士であるトーマスからエヴァが通信機を取り上げて叫んでいた。惑星を教えられただけではどうしようもないのである。
「待ってください! あの…、フェンネルの座標、ありがとうございます。でも、この宇宙船、スピードが落ちないんです! 僕たちは簡単に着陸できない…」
ランディとレイが顔を見合わせた。
操縦に問題があるならレイの担当である。レイは目でランディに促されてしぶしぶ操縦席のマイクをオンにした。はあ。
「ねえ、スピードが落ちないってどういうこと? 説明してくれるかな…」
相手は切羽詰まった状態にあるらしい。レイはやさしく問いかけた。
エヴァと会話をかわすその口調が、リュウの頭のどこかにひっかかった。通信機から流れる声に耳を澄ますと、ほかの誰よりも聞きたかった声?
……っ、えッ? もしかして! あんまり俺がレイが居てくれたらって考えていたから、レイの声に聞こえるのか。
でも!
エヴァから引ったくったマイクを握ると、リュウは叫んだ。
「レイッ! レイなのか?」
「へえっ…、なに? リュウが乗ってるんだ。こんな辺鄙なところで何やってんの?」
通信機を通して聞こえてきたのんびりした声に、リュウは涙ぐみそうになった。それでも無理に強がる。
「士官訓練センターの指揮演習だよ。レイこそ、なんでこんなとこに居るんだ?」
「俺はちょっと近道しようと思っただけだけど…。ふ~ん。こんな辺鄙なところで演習してるんだ? もしかして迷子になったとか?」
近道って、小惑星帯がか? リュウの部下たちがぎょっとしたのがわかった。それに。くそっ、レイは面白がってる! 俺たちはそれどころじゃないのに。
「レイッ! 冗談抜きで困ってるんだ。コンピュータが狂っちまって、操縦が制御できなくて、燃料も残り少ない…」
威勢良く始まった言葉が、尻すぼみに消えてしまう。
「指揮演習って、もしかして、おまえが指揮してるの?」
「もしかしなくても、そうだよ。頼りない俺がキャプテンなんだ。だから、トラブルが起こってもどうしようもなくて、こんな辺鄙なところにいる…」
わざと皮肉っぽい調子で喋るのに、レイはリュウがほんとうに心細かったんだ気づいた。今度は真面目な調子で話しかけた。
「ごめんね、からかったりして。リュウ。落ち着いて、最初から説明してごらん」
リュウはトラブルに気づいたところから、順を追って説明した。できる限り詳しく。レイは時々口をはさみながらも、黙って聞いている。
リュウの話を聞いているうちに、レイの頭には宇宙船が小惑星帯にぶつかって爆発した光景が浮かんだ。
ぶるっと身を震わせる。よく…、無事に小惑星帯を抜けられたもんだ。レイはリュウを助けてくれた、そして自分と逢わせてくれた幸運の女神に心から感謝した。
「コンピュータがおかしいんだね。誰かコンピュータに詳しい人間はいるの?」
「うん。ヒューが見てる。替わるよ」
「ヒューくんか。キミなら何があったかわかるだろう?」
「はい、どん欲なワームがいて自動操縦のためのデータを食い荒らしています。スピードや旋回なんかの操縦制御のデータも。旋回だけは回復しましたけど、修復する後から、ワームが現れて…、なかなか殲滅できなくて」
「そう…、それじゃあ、まともに操縦できるようにはならないの?」
「頑張ってるんですけど力が及びません」
「そんなこと、ないよ。少なくともキミのおかげで旋回できるようになったんだろう。自信を持っていい」
レイはそう声をかけておいてから
「リュウ。考えこんでても仕方ないよ。とにかくフェンネルに航路をとりなさい。それは、できるね」
「はい、できます」
応えたのはエヴァだ。リュウは通信機をヒューに譲ってから、安心のあまり? ぐったりシートに崩れ込んでいたから。
「俺もこれからフェンネルに向かうから。ちゃんと来るんだよ!」
でも…。
行ってもハイスピードのままじゃ、着陸できない。通り過ぎてしまうだけじゃないかとリュウだけでなく全員が思った。レイをのぞいて。沈黙の向こうから
「こらっ、リュウ! 返事は!」と。
厳しい口調にビクリとしたリュウがとっさに「はい! すぐにフェンネルに向かいます」と返す。これはもう、兵士の条件反射である。
「スピードが落ちないんだね。心配しなくていいよ。ランデブーするまでに、どうすればいいか考えとくから、しっかりね!」
ふっという笑い声とともに通信が切れた後、リュウはしばらくスピーカーを見つめていた。考えとくって、どうする気だろう。
「キャプテン!」
エヴァの声にハッと我に返る。心配するのはよそう。レイがきっと何とかしてくれる。今はここにいる隊員たちのためにしっかりしなくてはいけない。
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