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7 救難信号
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同じ頃、クリスタル号。
レイがのんびりと操縦席に座っていた。いつものように、緊張のカケラもない様子で。
「ちょっと遅くなっちゃったね」
しかめ面をしたランディがわめく。
「何言ってんだ! あんたのせいだろうが。いくら起こしても起きないんだから」
「ん~。遊びすぎたかな。でも、ランディも楽しんだでしょう?」
朝帰りなんだから、という言葉は省かれた。
「ああ、楽しませてもらった。しかし、俺はちゃんと起きただろ! ほんっと、あんたを起こすのはひと苦労だぜ。つくづく、リュウはよくやってるって感心するよ」
「間に合わせるから、そんなに責めないでくれる?」
レイがすまなそうに謝ると、ランディはそれ以上キツい言葉を吐けなくなった。
あ~あ、俺はこの頼りなさそうな顔に弱い。精神も身体もものすごく強いと知っていても。トクだよなぁ。顔を見てるとぜんぶ許してやりたくなるんだから。
ランディは心の中でつぶやいてから話題を変える。
「なあ、この荷物、いつまでに届けなくちゃならないんだ?」
「今日の夕方に欲しいって言われてるから、あと5~6時間ってとこかな」
「ああんッ? それじゃあ、間に合わないじゃねえか」
「そんなことないよ。近道すれば、ベルン星系まで2時間くらいで戻れるから」
「……って! また小惑星帯を抜けるのかよ? あんたも好きだな」
「いいじゃない。邪魔者はいないし、俺が操縦してれば危くないんだから。それに、退屈しなくてちょうどいい」
小惑星帯に入るのは危険だし、そこでの操縦は緊張を伴うから、普通のやつなら疲労困憊するはずだとランディは思うのだが、レイは小惑星帯が好きなのだ。多分、障害物が多い野山を好んでマウンテンバイクで走るようなもの。何もなくても小惑星帯を通りたがるのに、今は時間がないのである。反対しても無駄である。
「まあ、操縦するのはあんただから、文句は言わないけどな」
「ん。今回は飛んでて面白いことなかったから、せめて星降る眺めでも楽しもうよ!」
ふふっと笑って、小惑星帯へと航路を向ける。もちろん、コンピュータ任せではなく手動操縦である。
「めったに通らない端の方を通ってみる? 速いし、景色が違うかも…」
「お好きなように。俺はしばらく昼寝させてもらうよ。昨日の睡眠を取り戻しておくさ」
「いいよね、ランディは。朝寝坊しなくても、昼寝ができるんだから」
さっきのお返しである。
「はいはい。何とでも非難してくれ。なんか困ったことがあったら、泣きついてくれていいぜ」
そんなことはあり得ないだろうが…。
ランディはシートを倒して寝てしまった。レイはそんなこと気にしない。宇宙を飛んでいる限り、話し相手などいなくても平気なのだ。目の前に現れる星々を見ていると酔いの残った頭が冴えてくる。
いつ見ても宇宙は神秘的でキレイだ。
レイは眠ってしまったランディを起こそうなどとは夢にも思わなかったのだが、コンピュータが急を告げる。救難信号が入ったのだ。
「あ、ん、どうしたんだ?」
寝ぼけ眼のランディが訊く。
「SOS、SOS…。こちら連合宇宙軍宇宙船、船舶番号『VU-011』。応答願います。SOS、SOS…。こちら連合宇宙軍宇宙船、船舶番号『VU-011』。応答願います」
通信機から流れ出した音声に、ランディがレイを振り返る。
「連合宇宙軍の宇宙船がこんなところで、何やってんだ?」
「どうする、ランディ。時間がないから知らんぷりしちゃう?」
一年前なら迷わず救難信号をあっさり無視したであろう2人である。
「宇宙軍にはできるなら関わり合いたくないよなあ。でも、あんたのかわいいリュウがお世話になってるんだから、見過ごすわけにいかねえんじゃないか?」
レイは、ふう~とため息をつく。
「だよ、ね。リュウがお世話になってるんだから…、兄貴としては見過ごせない、よね。こんなとこ通りかかる宇宙船ってめったにないだろうし…」
「おっ! わかってるじゃないか。人が飛ばないとこばかり選んで飛んでるってこと」
「ん、まあね。でも、せっかく近道したのに、よけい時間を食いそうだ。もしかして、俺のクーリエ伝説もお終いか?」
「大げさな。大丈夫なんだろ、小惑星帯を通ったら2時間くらいで抜けられるってさっき言ったじゃないか! それに、一度くらい時間に間に合わなくても、『美貌のクーリエ』の人気は落ちないさ」
にやっと笑ってランディが言う。
「助けてやろうぜ」
「状況を聞いて宇宙軍に伝えるくらい、ランディなら、軽いもんね」
面倒な手続きをランディに押しつけるつもりである。
「やっぱり! 俺の仕事になるか…」
「俺は一応、操縦してるから」
操縦など片手でやってのけるくせに。こんな時だけ強調する。
「言ってろ! ……わかったって。わざとややこしい操縦して見せなくても、この仕事は俺が責任持つよ」
「ありがと♡」
天を仰いだランディが、やおら通信機のスイッチを入れた。
レイがのんびりと操縦席に座っていた。いつものように、緊張のカケラもない様子で。
「ちょっと遅くなっちゃったね」
しかめ面をしたランディがわめく。
「何言ってんだ! あんたのせいだろうが。いくら起こしても起きないんだから」
「ん~。遊びすぎたかな。でも、ランディも楽しんだでしょう?」
朝帰りなんだから、という言葉は省かれた。
「ああ、楽しませてもらった。しかし、俺はちゃんと起きただろ! ほんっと、あんたを起こすのはひと苦労だぜ。つくづく、リュウはよくやってるって感心するよ」
「間に合わせるから、そんなに責めないでくれる?」
レイがすまなそうに謝ると、ランディはそれ以上キツい言葉を吐けなくなった。
あ~あ、俺はこの頼りなさそうな顔に弱い。精神も身体もものすごく強いと知っていても。トクだよなぁ。顔を見てるとぜんぶ許してやりたくなるんだから。
ランディは心の中でつぶやいてから話題を変える。
「なあ、この荷物、いつまでに届けなくちゃならないんだ?」
「今日の夕方に欲しいって言われてるから、あと5~6時間ってとこかな」
「ああんッ? それじゃあ、間に合わないじゃねえか」
「そんなことないよ。近道すれば、ベルン星系まで2時間くらいで戻れるから」
「……って! また小惑星帯を抜けるのかよ? あんたも好きだな」
「いいじゃない。邪魔者はいないし、俺が操縦してれば危くないんだから。それに、退屈しなくてちょうどいい」
小惑星帯に入るのは危険だし、そこでの操縦は緊張を伴うから、普通のやつなら疲労困憊するはずだとランディは思うのだが、レイは小惑星帯が好きなのだ。多分、障害物が多い野山を好んでマウンテンバイクで走るようなもの。何もなくても小惑星帯を通りたがるのに、今は時間がないのである。反対しても無駄である。
「まあ、操縦するのはあんただから、文句は言わないけどな」
「ん。今回は飛んでて面白いことなかったから、せめて星降る眺めでも楽しもうよ!」
ふふっと笑って、小惑星帯へと航路を向ける。もちろん、コンピュータ任せではなく手動操縦である。
「めったに通らない端の方を通ってみる? 速いし、景色が違うかも…」
「お好きなように。俺はしばらく昼寝させてもらうよ。昨日の睡眠を取り戻しておくさ」
「いいよね、ランディは。朝寝坊しなくても、昼寝ができるんだから」
さっきのお返しである。
「はいはい。何とでも非難してくれ。なんか困ったことがあったら、泣きついてくれていいぜ」
そんなことはあり得ないだろうが…。
ランディはシートを倒して寝てしまった。レイはそんなこと気にしない。宇宙を飛んでいる限り、話し相手などいなくても平気なのだ。目の前に現れる星々を見ていると酔いの残った頭が冴えてくる。
いつ見ても宇宙は神秘的でキレイだ。
レイは眠ってしまったランディを起こそうなどとは夢にも思わなかったのだが、コンピュータが急を告げる。救難信号が入ったのだ。
「あ、ん、どうしたんだ?」
寝ぼけ眼のランディが訊く。
「SOS、SOS…。こちら連合宇宙軍宇宙船、船舶番号『VU-011』。応答願います。SOS、SOS…。こちら連合宇宙軍宇宙船、船舶番号『VU-011』。応答願います」
通信機から流れ出した音声に、ランディがレイを振り返る。
「連合宇宙軍の宇宙船がこんなところで、何やってんだ?」
「どうする、ランディ。時間がないから知らんぷりしちゃう?」
一年前なら迷わず救難信号をあっさり無視したであろう2人である。
「宇宙軍にはできるなら関わり合いたくないよなあ。でも、あんたのかわいいリュウがお世話になってるんだから、見過ごすわけにいかねえんじゃないか?」
レイは、ふう~とため息をつく。
「だよ、ね。リュウがお世話になってるんだから…、兄貴としては見過ごせない、よね。こんなとこ通りかかる宇宙船ってめったにないだろうし…」
「おっ! わかってるじゃないか。人が飛ばないとこばかり選んで飛んでるってこと」
「ん、まあね。でも、せっかく近道したのに、よけい時間を食いそうだ。もしかして、俺のクーリエ伝説もお終いか?」
「大げさな。大丈夫なんだろ、小惑星帯を通ったら2時間くらいで抜けられるってさっき言ったじゃないか! それに、一度くらい時間に間に合わなくても、『美貌のクーリエ』の人気は落ちないさ」
にやっと笑ってランディが言う。
「助けてやろうぜ」
「状況を聞いて宇宙軍に伝えるくらい、ランディなら、軽いもんね」
面倒な手続きをランディに押しつけるつもりである。
「やっぱり! 俺の仕事になるか…」
「俺は一応、操縦してるから」
操縦など片手でやってのけるくせに。こんな時だけ強調する。
「言ってろ! ……わかったって。わざとややこしい操縦して見せなくても、この仕事は俺が責任持つよ」
「ありがと♡」
天を仰いだランディが、やおら通信機のスイッチを入れた。
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