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6 どーでもいい仕事?
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「アレクセイ、どうなっている?」
「はい。総督代理、連絡が遅くなりました。明日から10日間の予定で、宇宙艦の実践演習に出ます。予定通りです」
「いよいよ、か」
「はい…」
「おまえも、祈っていてくれ」
「珍しいですね、総督代理が弱気ですか?」
「いや、相手があの男だから…。こちらは万全を期している。違和感のない程度にスケジュールを押さえさせた。わたしが出向くつもりでいるが、それでも100%成功すると思えない、…やはり弱気か?」
総督代理がふっと笑った、ようだ。
「総督代理が出向かれるなら、間違いありません。僕もそちらでお手伝いできればいいのですが…」
「自分の勤めを果たしてくれ。切り札を握っているのは、おまえだからな」
「はい…。では、成功をお祈りします」
「ああ。期待してくれ」
クリスタル号である。
ここ2週間ばかり、クーリエの仕事が立て込んでいる。依頼が多いのはいいことなのだが…。
「ねえ、ランディ。ここんとこ、長距離飛ぶだけって仕事が多くない?」
「なんだ? 危ない荷を運んで襲われることもないし、平和すぎるってか?」
「ん~。なんか、どーでもいい積み荷をあちこちの辺境に運んでるような気がするんだけど…、なんでこんな仕事が俺に回ってくるんだろうって」
「言われてみりゃあ、そうだよなあ。こんな簡単な仕事、大金はたいて『美貌のクーリエ』に頼むほどじゃないよな。まあ、どっかの金持ちか道楽者じゃないか。もしかして、あんたの腕より、あんたのカラダに興味があったりして!」
「やだな~。契約の時に舐めるような視線を浴びたら、いやでもわかるよ。俺はそんなに鈍くない」
ランディがうなずく。
確かに、レイは敏感だ。露骨な視線は当然だが、どの取引先がどの程度自分を信頼しているか、単なる道具としてみているか、それとも秘めた好意を抱いているかなどなど、的確に把握している。
仕事だと割り切っているから顔には出さないけれど、あまりお付き合いしたくない相手も多いはずだ。多すぎるほど、かも?
レイに限っては、身の安全を心配する必要がないので(取引先をなくしたり、相手を傷つけるっていう心配はアリだが)、ランディは気が楽だ。レイがもし、自分より弱かったら、相手をはねつける術を知らなかったら、星の数ほどの相手から守ってやらなくちゃならないだろうと思って苦笑した。
「同じ企業からの依頼ばっかり、だよね」
レイは状況をよく把握していた。
「おう。詳しくは知らないけど、この時期、グループ間のやりとりが頻発するから優先的にって頼まれた。危険度も低いし、いい稼ぎになるから組んでたんだけど、いやか?」
レイは、危機回避能力はもちろん、予知能力があるのではないかと思うほど危険に鼻が利く男である。違和感を感じるなら…。
「う~ん。楽しくないってのは確かだね。でも、クリスタル号の修理費やら何やら散財しちゃったし、生活のためって割り切ったら、こんな仕事も必要なんだろうね」
「へえ~。あんたの口から生活のためって言葉を聞くとは思わなかったな。知ってるぜ。ここ2~3年荒稼ぎしたから、一生仕事しなくても困らないくらい貯めてんだろ」
「そうだね、いま俺が死んでもリュウが困らないくらいは、あるかな。ランディも誰に残すかは知らないけど貯まってるでしょう?
リュウも士官訓練センターを卒業したら、自分で稼げるようになるだろうし…、つまんない仕事でたんまり稼いで、もっとスピードが出る新型宇宙船でも買おうかな」
「おっ、いいね。大きい宇宙船を買って、クルーも増やそうぜ、俺もそろそろ楽がしたい。それに、リュウの仕事のこともあるしな」
「ええっ~! ランディは俺と2人がイヤなの?」
とぼけるレイである。
遠回しな腹のさぐり合いに嫌気が差して、ランディが問いただす。
「そういう意味じゃない! リュウは卒業したらあんたと一緒に働きたがってる。どうして反対するんだ?
それに…、レイ。この間から何かたくらんでるだろう。新しい仕事でも始めようってのか。その仕事にスピードの出る新型宇宙船がいるのか?」
ランディって、何にも気が付かないふりしてるくせに鋭い。それとも俺が、心の内を探られるほどやわになったってことか。
レイは肩をすくめた。全身からふんわりした雰囲気が消え、顔には冷たい仮面が張り付いて、エメラルド・グリーンの瞳に、ギラリと不穏な光がよぎる。
ちっ! 深入りしすぎたか。ランディは後悔した。
ずっとレイと一緒に仕事をしてきて、わかっていると思っていたのに。
目の前にいる男は、見知らぬ他人のようだった。誰をも寄せ付けない。心の闇をのぞかせはしない。
なあレイ。あんたは心の奥底に何を隠しているんだ。それを誰にも見せはしない。俺やリュウにまで隠し通さないといけないものなのか。
あんたはどこまで強いんだ。どこまで、一人で生きるつもりだ。
「はい。総督代理、連絡が遅くなりました。明日から10日間の予定で、宇宙艦の実践演習に出ます。予定通りです」
「いよいよ、か」
「はい…」
「おまえも、祈っていてくれ」
「珍しいですね、総督代理が弱気ですか?」
「いや、相手があの男だから…。こちらは万全を期している。違和感のない程度にスケジュールを押さえさせた。わたしが出向くつもりでいるが、それでも100%成功すると思えない、…やはり弱気か?」
総督代理がふっと笑った、ようだ。
「総督代理が出向かれるなら、間違いありません。僕もそちらでお手伝いできればいいのですが…」
「自分の勤めを果たしてくれ。切り札を握っているのは、おまえだからな」
「はい…。では、成功をお祈りします」
「ああ。期待してくれ」
クリスタル号である。
ここ2週間ばかり、クーリエの仕事が立て込んでいる。依頼が多いのはいいことなのだが…。
「ねえ、ランディ。ここんとこ、長距離飛ぶだけって仕事が多くない?」
「なんだ? 危ない荷を運んで襲われることもないし、平和すぎるってか?」
「ん~。なんか、どーでもいい積み荷をあちこちの辺境に運んでるような気がするんだけど…、なんでこんな仕事が俺に回ってくるんだろうって」
「言われてみりゃあ、そうだよなあ。こんな簡単な仕事、大金はたいて『美貌のクーリエ』に頼むほどじゃないよな。まあ、どっかの金持ちか道楽者じゃないか。もしかして、あんたの腕より、あんたのカラダに興味があったりして!」
「やだな~。契約の時に舐めるような視線を浴びたら、いやでもわかるよ。俺はそんなに鈍くない」
ランディがうなずく。
確かに、レイは敏感だ。露骨な視線は当然だが、どの取引先がどの程度自分を信頼しているか、単なる道具としてみているか、それとも秘めた好意を抱いているかなどなど、的確に把握している。
仕事だと割り切っているから顔には出さないけれど、あまりお付き合いしたくない相手も多いはずだ。多すぎるほど、かも?
レイに限っては、身の安全を心配する必要がないので(取引先をなくしたり、相手を傷つけるっていう心配はアリだが)、ランディは気が楽だ。レイがもし、自分より弱かったら、相手をはねつける術を知らなかったら、星の数ほどの相手から守ってやらなくちゃならないだろうと思って苦笑した。
「同じ企業からの依頼ばっかり、だよね」
レイは状況をよく把握していた。
「おう。詳しくは知らないけど、この時期、グループ間のやりとりが頻発するから優先的にって頼まれた。危険度も低いし、いい稼ぎになるから組んでたんだけど、いやか?」
レイは、危機回避能力はもちろん、予知能力があるのではないかと思うほど危険に鼻が利く男である。違和感を感じるなら…。
「う~ん。楽しくないってのは確かだね。でも、クリスタル号の修理費やら何やら散財しちゃったし、生活のためって割り切ったら、こんな仕事も必要なんだろうね」
「へえ~。あんたの口から生活のためって言葉を聞くとは思わなかったな。知ってるぜ。ここ2~3年荒稼ぎしたから、一生仕事しなくても困らないくらい貯めてんだろ」
「そうだね、いま俺が死んでもリュウが困らないくらいは、あるかな。ランディも誰に残すかは知らないけど貯まってるでしょう?
リュウも士官訓練センターを卒業したら、自分で稼げるようになるだろうし…、つまんない仕事でたんまり稼いで、もっとスピードが出る新型宇宙船でも買おうかな」
「おっ、いいね。大きい宇宙船を買って、クルーも増やそうぜ、俺もそろそろ楽がしたい。それに、リュウの仕事のこともあるしな」
「ええっ~! ランディは俺と2人がイヤなの?」
とぼけるレイである。
遠回しな腹のさぐり合いに嫌気が差して、ランディが問いただす。
「そういう意味じゃない! リュウは卒業したらあんたと一緒に働きたがってる。どうして反対するんだ?
それに…、レイ。この間から何かたくらんでるだろう。新しい仕事でも始めようってのか。その仕事にスピードの出る新型宇宙船がいるのか?」
ランディって、何にも気が付かないふりしてるくせに鋭い。それとも俺が、心の内を探られるほどやわになったってことか。
レイは肩をすくめた。全身からふんわりした雰囲気が消え、顔には冷たい仮面が張り付いて、エメラルド・グリーンの瞳に、ギラリと不穏な光がよぎる。
ちっ! 深入りしすぎたか。ランディは後悔した。
ずっとレイと一緒に仕事をしてきて、わかっていると思っていたのに。
目の前にいる男は、見知らぬ他人のようだった。誰をも寄せ付けない。心の闇をのぞかせはしない。
なあレイ。あんたは心の奥底に何を隠しているんだ。それを誰にも見せはしない。俺やリュウにまで隠し通さないといけないものなのか。
あんたはどこまで強いんだ。どこまで、一人で生きるつもりだ。
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