56 / 61
プロローグ
これまでのあらすじ&プロローグ
しおりを挟む
これまでのあらすじ(『宇宙に舞う』)
阿刀野レイと阿刀野リュウの兄弟は、辺境の惑星ベルンで暮らしていた。
兄のレイは、荷物や書簡、人などあらゆるものを運ぶ『クーリエ』だ。やばい宙域であろうが、たとえ途中で海賊に襲われようが、指定された場所に、指定された時間までにきちんと荷物を届けることで知られ、その整った容貌から『美貌のクーリエ』として高い評価を得ていた。レイはそれだけの操船技術を持っていたのだ。
だが、宇宙一の海賊団であるコスモ・サンダーと因縁があり、生きていることを知られてはならなかった。
一方、弟のリュウは、連合宇宙軍の士官訓練センターで宇宙軍士官を目指すための訓練を受けていた。しかし、リュウの望みは、宇宙軍に入るつもりはなく、兄と一緒にクーリエとして働くこと。士官訓練センターでその力をつけたいと考えていたのだ。
士官訓練センターで学ぶなかで、リュウは軍家で知られるアドラー家の息子、ルーインと同室になり、親交を深める。
ルーインは自信家で傲慢であったが、リュウと一緒にいる中でレイと知り合い、操縦の腕はもちろん、秀でた戦闘能力、人を従わせる力に驚き、憧れ、師とあおぐこととなった。
リュウの小隊メンバーたちにとっても、レイは憧れの人となった。
そんななか、レイの存在がコスモ・サンダーに知られてしまった。
レイの生を確信したアレクセイは、コスモ・サンダーの総督代理であるマリオンに命じられてベルンの訓練センターに入り込む。そこで、レイが育てた阿刀野リュウに出会うが、操縦の腕もなく、ただの訓練生だったリュウに失望する。「こんな男のために──」と。
そして、リュウの修了試験でもある宇宙船演習が始まった。
アレクセイの仕掛けたバグのせいで、リュウの指揮する宇宙船は制御を失い、小惑星隊に突入した。リュウは精一杯の指揮を執るが、どうしようもなくなったとき、SOS信号に反応してくれたのが辺境を飛んでいた宇宙船「クリスタル号」。レイの船だ。小隊のメンバーが無事に帰還できたのは、すべてレイのおかげだった。
ある日のこと。
極東地域で荷を運んでいるクリスタル号はコスモ・サンダーに囲まれる。レイは覚悟を決めた。クリスタル号の自爆装置を作動させ、ランディを救命艇に急がせた。
レイがランディの後を追おうとした時、コスモ・サンダーの総督代理であるマリオンが立ちはだかる。レイが勝てないと思っていた唯一の男だった。
しばらくして、クリスタル号は鮮烈な光を発し、爆発してしまった。
士官訓練センターの修了式の直前、リュウはランディから「クリスタル号がレイを乗せたまま爆発した」と連絡を受ける。リュウは何をする気力もなくし、玄関で膝を抱えるだけになってしまた…。
プロローグ
マホガニーの机の後ろに、見目麗しい男がゆったりと身を沈めていた。エメラルド・グリーンの瞳に蜂蜜色のやわらかそうな髪。
誰もが目を見張る美貌の若者が、夢見るような表情でにっこり微笑んだ。
その天使のような笑顔に男がひとりぐっと怒りをため、机の前に詰め寄る。
整った容貌。背高く引き締まった身体。美しい銀の髪に鋭い暗灰色の瞳。薄い唇から、冷たく厳しい声が発せられた。
「ゴールドバーグ様! うれしそうな顔をしてもらっては困ります! あいつらが命令違反を犯したとはいえ、宇宙軍に戦闘部隊ひとつ潰されたんですよ。処刑すら覚悟してあなたの前に立った部下たちを、叱責なり、処罰なり…、してもらわないと示しがつかないッ。もっと、ビシッとしてください!」
冷酷で知られた男に、こんな諌言をせねばならないとは…、考えたこともなかった。
しかも、うれしいからと言って、執務室で天使のように微笑むなんて! わたしはあなたをそんな風に育てた覚えはない。次期総督としての威厳はどうなるんだ。
いや、それよりも。
威厳など必要ないと思っている。総督としての采配など振るうつもりがない、というのが問題である。
誰よりも冷徹にコスモ・サンダーを仕切れる男。分裂寸前のコスモ・サンダーをまとめることができる唯一の男、のはず…、なのに。
「後の始末は任せるよ、マリオン。適当に罰しておいてくれる?」
「ゴールドバーグ様ッ!」
目に冷たい光を煌めかせ、声に厳しい叱責の響きを込める。それなのに…。あなたには、もう、わたしの脅しなど通じない。
優雅に肩をすくめたかと思うと、
「いいじゃない。俺よりあなたの方が慣れてるんだから。俺はいま、誰かを罰する気になんてなれないよ。あいつが宇宙軍で立派に指揮を執っているんだ。少しくらいうれしそうな顔をしたっていいだろう?」
さらに小言を続けようとしたところを。
邪魔をするなと振られた手に口をつぐむ。マリオンは心の中で大きく舌打ちをして執務室を後にした。
今のおまえに欠けているのは
冷徹な態度?
誰をも逆らわせない威厳?
それとも…。
──わたしのクール・プリンスは、いつになったら戻ってくるのだろう──
阿刀野レイと阿刀野リュウの兄弟は、辺境の惑星ベルンで暮らしていた。
兄のレイは、荷物や書簡、人などあらゆるものを運ぶ『クーリエ』だ。やばい宙域であろうが、たとえ途中で海賊に襲われようが、指定された場所に、指定された時間までにきちんと荷物を届けることで知られ、その整った容貌から『美貌のクーリエ』として高い評価を得ていた。レイはそれだけの操船技術を持っていたのだ。
だが、宇宙一の海賊団であるコスモ・サンダーと因縁があり、生きていることを知られてはならなかった。
一方、弟のリュウは、連合宇宙軍の士官訓練センターで宇宙軍士官を目指すための訓練を受けていた。しかし、リュウの望みは、宇宙軍に入るつもりはなく、兄と一緒にクーリエとして働くこと。士官訓練センターでその力をつけたいと考えていたのだ。
士官訓練センターで学ぶなかで、リュウは軍家で知られるアドラー家の息子、ルーインと同室になり、親交を深める。
ルーインは自信家で傲慢であったが、リュウと一緒にいる中でレイと知り合い、操縦の腕はもちろん、秀でた戦闘能力、人を従わせる力に驚き、憧れ、師とあおぐこととなった。
リュウの小隊メンバーたちにとっても、レイは憧れの人となった。
そんななか、レイの存在がコスモ・サンダーに知られてしまった。
レイの生を確信したアレクセイは、コスモ・サンダーの総督代理であるマリオンに命じられてベルンの訓練センターに入り込む。そこで、レイが育てた阿刀野リュウに出会うが、操縦の腕もなく、ただの訓練生だったリュウに失望する。「こんな男のために──」と。
そして、リュウの修了試験でもある宇宙船演習が始まった。
アレクセイの仕掛けたバグのせいで、リュウの指揮する宇宙船は制御を失い、小惑星隊に突入した。リュウは精一杯の指揮を執るが、どうしようもなくなったとき、SOS信号に反応してくれたのが辺境を飛んでいた宇宙船「クリスタル号」。レイの船だ。小隊のメンバーが無事に帰還できたのは、すべてレイのおかげだった。
ある日のこと。
極東地域で荷を運んでいるクリスタル号はコスモ・サンダーに囲まれる。レイは覚悟を決めた。クリスタル号の自爆装置を作動させ、ランディを救命艇に急がせた。
レイがランディの後を追おうとした時、コスモ・サンダーの総督代理であるマリオンが立ちはだかる。レイが勝てないと思っていた唯一の男だった。
しばらくして、クリスタル号は鮮烈な光を発し、爆発してしまった。
士官訓練センターの修了式の直前、リュウはランディから「クリスタル号がレイを乗せたまま爆発した」と連絡を受ける。リュウは何をする気力もなくし、玄関で膝を抱えるだけになってしまた…。
プロローグ
マホガニーの机の後ろに、見目麗しい男がゆったりと身を沈めていた。エメラルド・グリーンの瞳に蜂蜜色のやわらかそうな髪。
誰もが目を見張る美貌の若者が、夢見るような表情でにっこり微笑んだ。
その天使のような笑顔に男がひとりぐっと怒りをため、机の前に詰め寄る。
整った容貌。背高く引き締まった身体。美しい銀の髪に鋭い暗灰色の瞳。薄い唇から、冷たく厳しい声が発せられた。
「ゴールドバーグ様! うれしそうな顔をしてもらっては困ります! あいつらが命令違反を犯したとはいえ、宇宙軍に戦闘部隊ひとつ潰されたんですよ。処刑すら覚悟してあなたの前に立った部下たちを、叱責なり、処罰なり…、してもらわないと示しがつかないッ。もっと、ビシッとしてください!」
冷酷で知られた男に、こんな諌言をせねばならないとは…、考えたこともなかった。
しかも、うれしいからと言って、執務室で天使のように微笑むなんて! わたしはあなたをそんな風に育てた覚えはない。次期総督としての威厳はどうなるんだ。
いや、それよりも。
威厳など必要ないと思っている。総督としての采配など振るうつもりがない、というのが問題である。
誰よりも冷徹にコスモ・サンダーを仕切れる男。分裂寸前のコスモ・サンダーをまとめることができる唯一の男、のはず…、なのに。
「後の始末は任せるよ、マリオン。適当に罰しておいてくれる?」
「ゴールドバーグ様ッ!」
目に冷たい光を煌めかせ、声に厳しい叱責の響きを込める。それなのに…。あなたには、もう、わたしの脅しなど通じない。
優雅に肩をすくめたかと思うと、
「いいじゃない。俺よりあなたの方が慣れてるんだから。俺はいま、誰かを罰する気になんてなれないよ。あいつが宇宙軍で立派に指揮を執っているんだ。少しくらいうれしそうな顔をしたっていいだろう?」
さらに小言を続けようとしたところを。
邪魔をするなと振られた手に口をつぐむ。マリオンは心の中で大きく舌打ちをして執務室を後にした。
今のおまえに欠けているのは
冷徹な態度?
誰をも逆らわせない威厳?
それとも…。
──わたしのクール・プリンスは、いつになったら戻ってくるのだろう──
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる