189 / 430
第一六四話 シャルロッタ 一六歳 ハーティ防衛 一四
しおりを挟む
「クハハハハッ! 逃げてばかりだのう!」
アンセルモの人間離れした膂力で振り回される戦斧を盾で受け流し、身をかわしてよけていくエルネットだが、防戦一方となってからは恐ろしい圧力を感じる斬撃を避けるので手いっぱいのように見えている。
だがハーティ守備隊や、第八軍団の兵士たちもその二人の間に入って行けるほどの胆力は持ち合わせていない……。
後者は特にアンセルモが味方などお構いなしに攻撃を叩きつけるような残虐な性格だと判っているが故にその場から前に出られず、守備隊もその中に入れば無駄に命を散らすということが理解できているからだ。
「本当に人間離れしているな、全くっ! 何喰ったらこうなるんだよ!」
「肉を食え! 大量にだ! そして鍛え上げろっ!」
「ああ、そうかよっ!」
エルネットは戦斧を振り回すアンセルモのほんのわずかな隙をついて、恐ろしく速い斬撃を見舞うが、難なくその攻撃に対し手に持った戦斧を回転させて受け止める。
斬撃を防がれたと理解した瞬間、防御に回していたはずの戦斧がすさまじい勢いで回転し、刃先が自らに迫るのを見てエルネットは大きく後ろに身を投げ出し、身体を回転させながら着地する。
それまで彼がいた場所に轟音を立てて戦斧が食い込むのを見て思わず背筋が寒くなる……恐ろしく強い……第八軍団が今まで温存していたのがわかるくらい、一騎打ちというフィールドでは圧倒的な武力を持っている。
「クハハッ! お前は戦士として王国でも上位と言われているが、少し拍子抜けだな」
「臆病なんでね、生きるか死ぬかの戦いじゃ慎重になるさ」
「だが俺の攻撃をここまで防いだ奴は今までいねえ、お前は極上の食材だなぁ……うれしいぜ」
緩んだ口元から涎をあふれさせながらアンセルモは軽く腕を使って拭い、下卑た笑みを浮かべる……彼は目の前にある最高の食材エルネット・ファイアーハウスをどうやって殺すかをひたすらに考えている。
そしてその動物的な本能、猟奇的な思考が城壁の上からエルネットをじっと見つめる女性の姿に気が付いた。
赤い髪を靡かせ、短弓に矢をつがえたままじっとこちらを見ている美しい女性……それに気が付いたアンセルモはエルネットへと視線を戻すとそれまで以上に残虐な笑みを浮かべる。
「お前の女が心配そうに見ているな、安心しろお前を殺した後、たっぷり俺が可愛がってやるよ……何発目で堕ちるかなぁ?!」
「……お前に彼女は渡さないッ!」
アンセルモが考えた通りエルネットの表情が一気に怒りに満ち、それまで以上の速度で攻撃を繰り出す……だがその攻撃は感情が乗りすぎており、アンセルモはすぐさま反応してその一撃をかわす。
しかし速度はそれまで以上……大きく後方へと跳躍するように身を躍らせたアンセルモへとエルネットが一気に距離を詰めていく。
炎のような連続攻撃……一対一の戦いに優れたアンセルモであってもこのすさまじい連撃には対応仕切れず、彼が着用する鎧でカバーできない腕や、足に切り傷が作られていく。
「クハハッ! いい、いいじゃねえか! もっとだ! もっとお前の技を見せてみろっ!」
「……これでっ!」
エルネットが大きく横斬撃を繰り出すと、その攻撃を戦斧を使って受け止めたアンセルモだが、威力に押されその巨躯が大きく揺らいだように見えた。
その隙を逃さずエルネットは剣を水平に構えると、追撃の刺突を繰り出す……その速度は先ほどまでよりも早く、連続した突きはアンセルモの体を刺し貫くはずだった。
だが……アンセルモはその体の大きさから考えるよりも遥かにしなやかに猫科の肉食獣を思わせる動きを見せて、跳ねるようにエルネットから距離をとると口の周りを舌で軽く舐めて笑った。
「……今のは良いな、お前の殺気が感じられて起っちまうよ」
「下種が……」
「お前俺がまともな騎士だと思ってねえだろ?」
アンセルモがにやりと笑うと肩へと戦斧を担ぐように構えると、空いた左手でかかってこいとばかりに手招きをして見せた。
誘っている……エルネットは思ったよりも強敵だった目の前の男を前に、ヒリヒリとした感覚を覚えている。
ここ最近悪魔と戦った時以来の緊張感、油断すると死ぬという実感……これを人間相手に感じるとは思わなかった。
「……腐っても英雄クラスってことか、あんた本当に強いんだな」
「少なくともこの国の騎士に負ける気はしねえよ、お前は俺を楽しませているが……殺せるかな?」
「ああ、俺はお前よりも圧倒的に強い武を見た、絶望的な力の差を見せつけられた……だが、一歩一歩努力して強くなっていった……」
「……俺より強い? ハッ……俺は突然変異した魔物ですら殺した男だぞ?」
「そんなものより強い者がたくさんいる……それを知らないお前に俺は負けることはないよ」
エルネットは今まで出会ってきた人たちの顔を思い浮かべる……シャルロッタだけでなく、ユルも圧倒的な強さだった。
シビッラですら本気で殺しあえば自分が勝てるかも怪しいところだ……そして何度も戦った悪魔達、第四階位の悪魔ですら命を懸けてようやく倒せるレベルで、第三階位とは一〇回戦って一回勝てるかどうかという状態だろう。
だが、いつかそれすらも超える者になる……そう決めたのだ、だから目の前の男がいくら強いと言っても必ず倒さねばならないのだ。
「負けるかよ! 俺はこの大陸、最も強い冒険者になる……エルネット・ファイアーハウスの名前を世界にとどろかせてやるッ!」
「……駄目ね、このままやっていても埒が明かないわ」
ハーティを攻める第八軍団の動きが恐ろしく鈍っている……先ほどまでは鬨の声が響き渡り、武器が打ち合う音や、悲鳴が聞こえていたが露骨に少なくなっているのだ。
すべては「赤竜の息吹」が戦場へと介入したタイミングから顕著に現れ、今陣地をめぐってエルネットとアンセルモが一騎打ちを繰り広げているため、戦場の視線はそこへと集中してしまっている。
戦場を遠巻きに見ている欲する者からすると、一体何をやっているんだと言いたくなるような状況に陥っているわけだが……この膠着状態を打開するには何が必要だろうか?
「……戦場に余計な者が侵入しないようにってそこにいるんでしょ……私が顔を出せばすぐにすっ飛んでくるつもりでしょうね」
欲する者の目にははるか上空に魔法陣を展開し、悠々と見物を決め込んでいるシャルロッタの姿が見えている。
先ほど戦場を揺るがした破壊的な魔力は彼女が放ったものだった……熟練した魔法使いでもあそこまで集約できないであろう恐しいくらいに集約した魔力。
一瞬で地形を破壊するだけの超火力は、以前訓戒者である知恵ある者を瀕死に追い込んだ魔法に比類している。
今このタイミングで戦って勝てるか? と言われれば欲する者は善戦するだろうと応えたかもしれない、いや……今のままなら負けるだろうな、と彼女は冷静に判断する。
「……準備を整えて、彼女を確実に倒せると判断するまで私は貴女とは戦わない……私はワガママだけど、すべてを手に入れるためなら我慢ができる女なのよ」
彼女は口元をゆがめて笑うと、懐から小さな小箱を取り出す……黒くゆがんだ魔力を立ち昇らせる不気味な小箱には、幾重にも巻かれたくすんだ銀色の鎖が巻きつけられており、まるで何かを封印しているかのような奇妙な雰囲気を漂わせている。
小箱を見つめてクスッと笑うと、欲する者はくすんだ鎖を手で引きちぎり、小箱を少し乱暴に地面へと放り投げた。
小箱はカシュッ! という軽い音を立てると有機的な動きを見せながら展開していき、幾何学的な形状へと変化すると再び元の形へと戻るかのように形を変えた後、ぶるぶると震えながら泥濘のように溶けて地面へと沈み込んでいく。
「大いなる深淵の鍵たる小箱を解放すると、対となる小箱を目指して深淵に潜む魔獣が召喚される……小箱は入り口であり、出口……」
欲する者はくすくす笑いながら黒い瘴気を上げながら消滅した小箱の跡を見つめて笑う。
異様かつ人にとって不快な魔力が立ち上り、周囲の空気を汚染していくのがわかる……どこか見えない場所にいる何かの獲物を求める荒い息使いが聞こえるような気がする。
その何かは、カツカツと何か固いものが地面にぶつかるような音を立てながら辺りを徘徊している……だが姿は見えず、何かを探しているかのように、唸り声をあげて苛立つように何度も匂いを嗅ぐ鼻息を撒き散らしている。
だが、すぐにその見えない何かは目的のものを見つけたのか、グルルルル……と獰猛な肉食獣のような唸り声を上げながら、次第にその場を遠ざかっていくが音は第八軍団の本営がある方向へと消えていった。
「あらあら……もう出口を見つけちゃったのね、でも出口がきちんと開くまでは待てができるかしらね……」
口元をそっと押さえると、欲する者は歪んだ笑みを浮かべ、再びその場から去るためにゆっくりと歩き出す。
あのレーサークロス子爵と名乗る少しだけ良い男があの小箱の力を使おうとするその瞬間、入り口たる小箱により召喚された深淵の魔獣が世に解き放たれる。
魔獣は生けるものを皆殺しにし、魂をむしゃぶり尽くすが決して飢えを満たすことがない永遠に飢餓に苦しむ哀れな生き物でもあるのだ。
早くこの世の中に醜く哀れな姿を見せて上げてほしい……その時人間が浮かべる表情はとてつもなく惨めで、哀れで……そして美しい顔なのだろうと、妄想するだけで下腹部が疼くような気がしてならない。
「……感じちゃうわぁ……絶望と死と苦痛の表情がなにより見たいわぁ……考えただけで私のココが疼くわぁ♡」
アンセルモの人間離れした膂力で振り回される戦斧を盾で受け流し、身をかわしてよけていくエルネットだが、防戦一方となってからは恐ろしい圧力を感じる斬撃を避けるので手いっぱいのように見えている。
だがハーティ守備隊や、第八軍団の兵士たちもその二人の間に入って行けるほどの胆力は持ち合わせていない……。
後者は特にアンセルモが味方などお構いなしに攻撃を叩きつけるような残虐な性格だと判っているが故にその場から前に出られず、守備隊もその中に入れば無駄に命を散らすということが理解できているからだ。
「本当に人間離れしているな、全くっ! 何喰ったらこうなるんだよ!」
「肉を食え! 大量にだ! そして鍛え上げろっ!」
「ああ、そうかよっ!」
エルネットは戦斧を振り回すアンセルモのほんのわずかな隙をついて、恐ろしく速い斬撃を見舞うが、難なくその攻撃に対し手に持った戦斧を回転させて受け止める。
斬撃を防がれたと理解した瞬間、防御に回していたはずの戦斧がすさまじい勢いで回転し、刃先が自らに迫るのを見てエルネットは大きく後ろに身を投げ出し、身体を回転させながら着地する。
それまで彼がいた場所に轟音を立てて戦斧が食い込むのを見て思わず背筋が寒くなる……恐ろしく強い……第八軍団が今まで温存していたのがわかるくらい、一騎打ちというフィールドでは圧倒的な武力を持っている。
「クハハッ! お前は戦士として王国でも上位と言われているが、少し拍子抜けだな」
「臆病なんでね、生きるか死ぬかの戦いじゃ慎重になるさ」
「だが俺の攻撃をここまで防いだ奴は今までいねえ、お前は極上の食材だなぁ……うれしいぜ」
緩んだ口元から涎をあふれさせながらアンセルモは軽く腕を使って拭い、下卑た笑みを浮かべる……彼は目の前にある最高の食材エルネット・ファイアーハウスをどうやって殺すかをひたすらに考えている。
そしてその動物的な本能、猟奇的な思考が城壁の上からエルネットをじっと見つめる女性の姿に気が付いた。
赤い髪を靡かせ、短弓に矢をつがえたままじっとこちらを見ている美しい女性……それに気が付いたアンセルモはエルネットへと視線を戻すとそれまで以上に残虐な笑みを浮かべる。
「お前の女が心配そうに見ているな、安心しろお前を殺した後、たっぷり俺が可愛がってやるよ……何発目で堕ちるかなぁ?!」
「……お前に彼女は渡さないッ!」
アンセルモが考えた通りエルネットの表情が一気に怒りに満ち、それまで以上の速度で攻撃を繰り出す……だがその攻撃は感情が乗りすぎており、アンセルモはすぐさま反応してその一撃をかわす。
しかし速度はそれまで以上……大きく後方へと跳躍するように身を躍らせたアンセルモへとエルネットが一気に距離を詰めていく。
炎のような連続攻撃……一対一の戦いに優れたアンセルモであってもこのすさまじい連撃には対応仕切れず、彼が着用する鎧でカバーできない腕や、足に切り傷が作られていく。
「クハハッ! いい、いいじゃねえか! もっとだ! もっとお前の技を見せてみろっ!」
「……これでっ!」
エルネットが大きく横斬撃を繰り出すと、その攻撃を戦斧を使って受け止めたアンセルモだが、威力に押されその巨躯が大きく揺らいだように見えた。
その隙を逃さずエルネットは剣を水平に構えると、追撃の刺突を繰り出す……その速度は先ほどまでよりも早く、連続した突きはアンセルモの体を刺し貫くはずだった。
だが……アンセルモはその体の大きさから考えるよりも遥かにしなやかに猫科の肉食獣を思わせる動きを見せて、跳ねるようにエルネットから距離をとると口の周りを舌で軽く舐めて笑った。
「……今のは良いな、お前の殺気が感じられて起っちまうよ」
「下種が……」
「お前俺がまともな騎士だと思ってねえだろ?」
アンセルモがにやりと笑うと肩へと戦斧を担ぐように構えると、空いた左手でかかってこいとばかりに手招きをして見せた。
誘っている……エルネットは思ったよりも強敵だった目の前の男を前に、ヒリヒリとした感覚を覚えている。
ここ最近悪魔と戦った時以来の緊張感、油断すると死ぬという実感……これを人間相手に感じるとは思わなかった。
「……腐っても英雄クラスってことか、あんた本当に強いんだな」
「少なくともこの国の騎士に負ける気はしねえよ、お前は俺を楽しませているが……殺せるかな?」
「ああ、俺はお前よりも圧倒的に強い武を見た、絶望的な力の差を見せつけられた……だが、一歩一歩努力して強くなっていった……」
「……俺より強い? ハッ……俺は突然変異した魔物ですら殺した男だぞ?」
「そんなものより強い者がたくさんいる……それを知らないお前に俺は負けることはないよ」
エルネットは今まで出会ってきた人たちの顔を思い浮かべる……シャルロッタだけでなく、ユルも圧倒的な強さだった。
シビッラですら本気で殺しあえば自分が勝てるかも怪しいところだ……そして何度も戦った悪魔達、第四階位の悪魔ですら命を懸けてようやく倒せるレベルで、第三階位とは一〇回戦って一回勝てるかどうかという状態だろう。
だが、いつかそれすらも超える者になる……そう決めたのだ、だから目の前の男がいくら強いと言っても必ず倒さねばならないのだ。
「負けるかよ! 俺はこの大陸、最も強い冒険者になる……エルネット・ファイアーハウスの名前を世界にとどろかせてやるッ!」
「……駄目ね、このままやっていても埒が明かないわ」
ハーティを攻める第八軍団の動きが恐ろしく鈍っている……先ほどまでは鬨の声が響き渡り、武器が打ち合う音や、悲鳴が聞こえていたが露骨に少なくなっているのだ。
すべては「赤竜の息吹」が戦場へと介入したタイミングから顕著に現れ、今陣地をめぐってエルネットとアンセルモが一騎打ちを繰り広げているため、戦場の視線はそこへと集中してしまっている。
戦場を遠巻きに見ている欲する者からすると、一体何をやっているんだと言いたくなるような状況に陥っているわけだが……この膠着状態を打開するには何が必要だろうか?
「……戦場に余計な者が侵入しないようにってそこにいるんでしょ……私が顔を出せばすぐにすっ飛んでくるつもりでしょうね」
欲する者の目にははるか上空に魔法陣を展開し、悠々と見物を決め込んでいるシャルロッタの姿が見えている。
先ほど戦場を揺るがした破壊的な魔力は彼女が放ったものだった……熟練した魔法使いでもあそこまで集約できないであろう恐しいくらいに集約した魔力。
一瞬で地形を破壊するだけの超火力は、以前訓戒者である知恵ある者を瀕死に追い込んだ魔法に比類している。
今このタイミングで戦って勝てるか? と言われれば欲する者は善戦するだろうと応えたかもしれない、いや……今のままなら負けるだろうな、と彼女は冷静に判断する。
「……準備を整えて、彼女を確実に倒せると判断するまで私は貴女とは戦わない……私はワガママだけど、すべてを手に入れるためなら我慢ができる女なのよ」
彼女は口元をゆがめて笑うと、懐から小さな小箱を取り出す……黒くゆがんだ魔力を立ち昇らせる不気味な小箱には、幾重にも巻かれたくすんだ銀色の鎖が巻きつけられており、まるで何かを封印しているかのような奇妙な雰囲気を漂わせている。
小箱を見つめてクスッと笑うと、欲する者はくすんだ鎖を手で引きちぎり、小箱を少し乱暴に地面へと放り投げた。
小箱はカシュッ! という軽い音を立てると有機的な動きを見せながら展開していき、幾何学的な形状へと変化すると再び元の形へと戻るかのように形を変えた後、ぶるぶると震えながら泥濘のように溶けて地面へと沈み込んでいく。
「大いなる深淵の鍵たる小箱を解放すると、対となる小箱を目指して深淵に潜む魔獣が召喚される……小箱は入り口であり、出口……」
欲する者はくすくす笑いながら黒い瘴気を上げながら消滅した小箱の跡を見つめて笑う。
異様かつ人にとって不快な魔力が立ち上り、周囲の空気を汚染していくのがわかる……どこか見えない場所にいる何かの獲物を求める荒い息使いが聞こえるような気がする。
その何かは、カツカツと何か固いものが地面にぶつかるような音を立てながら辺りを徘徊している……だが姿は見えず、何かを探しているかのように、唸り声をあげて苛立つように何度も匂いを嗅ぐ鼻息を撒き散らしている。
だが、すぐにその見えない何かは目的のものを見つけたのか、グルルルル……と獰猛な肉食獣のような唸り声を上げながら、次第にその場を遠ざかっていくが音は第八軍団の本営がある方向へと消えていった。
「あらあら……もう出口を見つけちゃったのね、でも出口がきちんと開くまでは待てができるかしらね……」
口元をそっと押さえると、欲する者は歪んだ笑みを浮かべ、再びその場から去るためにゆっくりと歩き出す。
あのレーサークロス子爵と名乗る少しだけ良い男があの小箱の力を使おうとするその瞬間、入り口たる小箱により召喚された深淵の魔獣が世に解き放たれる。
魔獣は生けるものを皆殺しにし、魂をむしゃぶり尽くすが決して飢えを満たすことがない永遠に飢餓に苦しむ哀れな生き物でもあるのだ。
早くこの世の中に醜く哀れな姿を見せて上げてほしい……その時人間が浮かべる表情はとてつもなく惨めで、哀れで……そして美しい顔なのだろうと、妄想するだけで下腹部が疼くような気がしてならない。
「……感じちゃうわぁ……絶望と死と苦痛の表情がなにより見たいわぁ……考えただけで私のココが疼くわぁ♡」
1
あなたにおすすめの小説
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる