4 / 6
4
しおりを挟む
広くはない湯舟の中、人間ふたり同時に入るなら必然的に距離が近くなる。
横並びは難しいのでサリエラがミケルの足の間に収まる体勢になる。
彼に背を向け、膝を抱えて縮こまる。
自分から誘ったものの、その後どうするかなんて考えていなかった。
会話もなく無言でふたり湯に浸かる。
「……おい」
水音と共にミケルのぶっきらぼうな声がする。
彼が体を動かしたのだろう、風呂の水面が揺れている。
「な、なに」
サリエラの声もつられて不愛想になる。
怒ったような返事がしたいわけではないのに。
後悔しても出てしまった言葉は戻らない。
自身の可愛げのなさに落胆していると、腕に彼の手が触れた。
「もっとゆっくり入れ」
後ろに引っ張られて体が傾く。
咄嗟に対応できずに彼の胸へ背中から倒れ込んだ。
肌が密着し、驚きと緊張で鼓動が高鳴る。
ふと彼の鼓動も同じくらい強く速いことに気付く。
自分だけじゃない、そう思うと、無駄に緊張していたことがなんだか滑稽に感じて、小さく笑いが込み上げた。
「……なんだよ」
背後からふてくされたような彼の声がする。
「久し振りだなって思って」
ミケルとゆっくり過ごしたのはいつが最後だっただろうか。
互いの仕事が忙しくなって、次第にどことなくよそよそしくなって。
いつの間にか彼の態度に距離を感じるようになっていた。
複雑な心境を思い出し、ぎゅっと心臓の辺りが痛くなる。
「……新しい人が出来たんだったら、正直に言って」
涙声になりそうなのを必死に押し留めて言う。
問いただして責め立ててやろうとも思ったが、そんなことが出来るほどサリエラは図太くなかった。
たったひと言なのにわずかに声が震えていた。
「…………は?」
たっぷりと時間をおいてからミケルが怒ったような声を出す。
思わず肩がびくりとなる。
ここで怯むわけにはいかない。
毅然とした口調で続ける。
「ミケルの態度が最近おかしいの、気付かないとでも思った? 私と中途半端に付き合うくらいならもう別れたほうが……」
「別れるなんてあり得ないって言ってるだろ」
サリエラが言い終わる前に言葉が被せられる。
苛立ちを隠しもしない彼の声色。
折角ゆっくり話ができるのに、最後の会話かもしれないのに、こんな言い争いみたいなことをしたくはない。
けれど一度零れ出した言葉は止められなかった。
「なにそれ。堂々と二股宣言? 新しい恋人と付き合いながらも私はキープしとこうってこと?」
「さっきからなんの話してるんだよ」
売り言葉に買い言葉、とでも言うんだろうか。
意図せずサリエラ自身の言葉もとげとげしくなる。
「私、浮気とか許せるタイプじゃないから」
「おい」
「もう引き止めたりしない」
「なに言って……」
「今日で、終わりに」
「おい……」
ミケルの手が頬に触れ、親指が目尻をなぞる。
「泣くなよ」
彼の言葉で自身が泣いてしまっていることに気付く。
「別れるつもりはない。そもそもお前以外と付き合うわけないだろ」
声色が優しい。
まっすぐサリエラを見つめながら言うミケルは嘘をついているようには見えない。
自分の思い違いだったのか。
浮気ではないとわかった安堵と、彼を疑ってしまった罪悪感でまた涙が溢れた。
ぽろぽろと零れ落ちるたびに彼の指が柔らかく拭ってくれる。
早く泣き止まないと、と思えば思うほど泣いてしまう。
「ごめ……ミケル…………ごめんね」
「大丈夫だ」
咎めることなく、ミケルはただただ優しく触れた。
ひとしきり泣き終え徐々に思考がはっきりしてくる。
ここでひとつの疑問が湧いた。
「ぁ、え、でも、今日のあの人は?」
「あ、あの人は……」
途端に口ごもる。
なりを潜めたはずの不安が再び顔を出し、思わず表情を歪めてしまう。
「いや! 違う!」
サリエラの心中を察したミケルは慌てて否定する。
言いにくそうに視線を泳がせているが、彼の言葉を根気よく待つ。
「あ、アドバイザー、だ……」
なんとも歯切れの悪い返事が返ってきた。
「……ん?」
斜め上の返答にサリエラは困惑する。
「っ……本当だ」
はっきりと言ってはいるが、ミケルはどこかバツが悪そうな様子だ。
「なんの?」
「…………」
沈黙してしまった。
そんなにも言いにくいことのアドバイスをもらっているのだろうか。
失業している、多額の借金がある、実は隠し子が居る、など様々な憶測が脳内を飛び回る中、ミケルが気まずそうに口を開く。
「…………恋愛相談」
「…………は?」
予想外の言葉に間の抜けた声が出てしまった。
「恋愛って……誰との?」
落ち着いたまま聞き返すがサリエラ自身少なからず動揺し、今さっきお前だけだと言われた言葉を忘れてしまったかのような質問をする。
「…………お前以外いるかよ」
彼は言いにくそうに口をもごもごしながら不明瞭に呟く。
風呂で温められただけではない頬の紅潮が見えた。
「お前の態度がだんだんよそよそしくなって、かと思ったら急に距離を詰めてきたり。こういう時は浮気されてるんだって聞いたから」
「よそよそしいって、いつの話?」
サリエラにその自覚はなった。
「何か月か前、夜、終わった後つらいって言ってただろ」
全く覚えがない。
「……あ」
ひとつだけ思い至る。
「サリエラが俺に触られるのが嫌なら控えようと思った。けど、どうしてもお前に触れたくて、せめて最小限にしようと……」
だから距離を感じたのだと合点がいった。
同時に彼が大きな勘違いをしていることにも気付く。
「お前が、か、わ……可愛すぎて……抑えられないから、距離を置こうと……」
口元を手で覆いながらもごもご言うミケルの顔は真っ赤に染まっていた。
普段甘い言葉など言わない彼の言葉にサリエラまで顔が熱くなる。
嬉しさと恥ずかしさで思考が止まりそうになりながらも、早く真相を伝えて彼を安心させなければと焦る。
「ごっごめん! 違うの!」
だが、つらいと言った理由をはっきり言葉にするのはためらわれた。
言い淀む時間が長くなるごとにミケルの表情が曇っていく。
早く言わなければ。
彼を不安にさせたくない。
意を決して口を開く。
「あの……気持ち、良すぎて……」
「なに?」
声が小さすぎて彼には聞き取れなかったようだ。
顔を寄せ、サリエラの口元に自身の耳を近付ける。
「っ! 感じすぎてつらいって言ったの!」
ヤケクソで声を張り上げる。
「…………」
彼からの反応がない。
さすがに大声過ぎたか、いや、内容が伝わっていないのか。
もう一度同じことを言うのはさすがに恥ずかしすぎる。
沈黙が痛い。
照れすぎてだんだんミケルのことを直視できなくなってくる。
早くなにか言ってよ、と心の中で彼を急かす。
ちゃぷり、と湯が揺れる気配に視線を上げる。
「っお前……」
顔を逸らすミケルは耳まで真っ赤になっていた。
「なんだよ、そういう……」
ぶつぶつもごもご言っている。
「ミケル? ……っ!」
強めに抱き締められた。
響いてくる彼の鼓動が速い。
「……じゃあなに? 俺とするの嫌じゃない?」
ぶっきらぼうに問われる。
顔は見えないが、彼のなりの照れ隠しだとわかった。
「嫌なわけないでしょ」
サリエラもミケルに負けず劣らずぶっきらぼうな声になる。
「したいのに、ミケルがなんかよそよそしくて。もっと魅力的にならなきゃって色々頑張ってたの」
「浮気じゃなくて?」
「そんなわけないでしょ! もう! うるさいなあ!」
照れもあいまって口が悪くなる。
「ぅわっ」
彼の首に腕を回し、少々強引に口付ける。
「ミケル以外好きになるわけないでしょうが」
人のことを言えないぐらい、サリエラも語尾がごにょごにょと消え入る。
「………………」
「………………」
互いに照れて言葉が出ない。
沈黙がいたたまれない。
「ちょっと、なんとか言ったらどうな……っ!」
耐えかね強気に発言するが、噛みつくようなキスに遮られた。
ミケルの大きな口に吸い付かれ貪られる。
強引に押し入ってきた舌が熱い。
呼吸が苦しくなるが、後頭部と腰に彼の手がまとわり逃げ道を奪われている。
口内をくまなくねぶられ、熱っぽい吐息が洩れてしまう。
彼に答えたくてサリエラも舌を伸ばせばすぐに絡め取られた。
裏側を根本から舐め上げ、先端を吸われる。
「舌、出して」
素直に従う。
表面を合わせゆっくり擦られた。
濡れた肉の感触に背筋が甘く震える。
口端から唾液がしたたるのも構わず彼の舌を味わう。
ミケルの指先がうなじを撫でた。
背骨に添ってゆっくりなぞられていく。
腰に辿り着いた時ぐっと引き寄せられた。
お腹に彼の中心が押し付けられる。
硬く怒張し下腹を突いてくる。
「ああ……だめだ。もっとサリエラに触れたい」
余裕のない言葉は吐息にまみれ、荒ぶる劣情を隠そうともしていない。
ミケルの表情が嬉しいと同時に官能を揺さぶられた。
唇が離れたのもつかの間、少しの隙間も惜しいというように荒々しくキスをされる。
口内を蹂躙されながら肌を滑っていく彼の手に感覚が鋭くなっていく。
背中、腰、ふともも。
肩や腕、首筋に至るまでじっとりなぞられていく。
全身くまなく指が添っていくのに、敏感な核心には触れてこない。
もどかしく焦らされ、腹の奥がきゅんと切なくなる。
「サリエラ、っ……は、ぁ」
キスの合間にうわごとのように名前を呼ばれる。
熱っぽい色香に脳の芯が痺れてしまう感覚に陥った。
突然、ざばりと派手に湯を揺らして体が離される。
「出るぞ」
腕を掴まれ湯船から引っ張り出される。
そのまま足早に脱衣所へ向かい、タオルで包まれ水分を拭われる。
無言でてきぱき動く彼を見つめたまま、ぽかんとしてされるがままのサリエラ。
髪もある程度拭き終わったところで体にタオルを巻かれ抱き上げられた。
「えっちょっと待……」
「待てはなしだ」
強くて速い彼の鼓動が伝わってくる。
熱い肌にどきどきした。
「……抱かせてくれ」
まっすぐな視線に射抜かれた。
触れてほしい。
サリエラは小さく頷いた。
横並びは難しいのでサリエラがミケルの足の間に収まる体勢になる。
彼に背を向け、膝を抱えて縮こまる。
自分から誘ったものの、その後どうするかなんて考えていなかった。
会話もなく無言でふたり湯に浸かる。
「……おい」
水音と共にミケルのぶっきらぼうな声がする。
彼が体を動かしたのだろう、風呂の水面が揺れている。
「な、なに」
サリエラの声もつられて不愛想になる。
怒ったような返事がしたいわけではないのに。
後悔しても出てしまった言葉は戻らない。
自身の可愛げのなさに落胆していると、腕に彼の手が触れた。
「もっとゆっくり入れ」
後ろに引っ張られて体が傾く。
咄嗟に対応できずに彼の胸へ背中から倒れ込んだ。
肌が密着し、驚きと緊張で鼓動が高鳴る。
ふと彼の鼓動も同じくらい強く速いことに気付く。
自分だけじゃない、そう思うと、無駄に緊張していたことがなんだか滑稽に感じて、小さく笑いが込み上げた。
「……なんだよ」
背後からふてくされたような彼の声がする。
「久し振りだなって思って」
ミケルとゆっくり過ごしたのはいつが最後だっただろうか。
互いの仕事が忙しくなって、次第にどことなくよそよそしくなって。
いつの間にか彼の態度に距離を感じるようになっていた。
複雑な心境を思い出し、ぎゅっと心臓の辺りが痛くなる。
「……新しい人が出来たんだったら、正直に言って」
涙声になりそうなのを必死に押し留めて言う。
問いただして責め立ててやろうとも思ったが、そんなことが出来るほどサリエラは図太くなかった。
たったひと言なのにわずかに声が震えていた。
「…………は?」
たっぷりと時間をおいてからミケルが怒ったような声を出す。
思わず肩がびくりとなる。
ここで怯むわけにはいかない。
毅然とした口調で続ける。
「ミケルの態度が最近おかしいの、気付かないとでも思った? 私と中途半端に付き合うくらいならもう別れたほうが……」
「別れるなんてあり得ないって言ってるだろ」
サリエラが言い終わる前に言葉が被せられる。
苛立ちを隠しもしない彼の声色。
折角ゆっくり話ができるのに、最後の会話かもしれないのに、こんな言い争いみたいなことをしたくはない。
けれど一度零れ出した言葉は止められなかった。
「なにそれ。堂々と二股宣言? 新しい恋人と付き合いながらも私はキープしとこうってこと?」
「さっきからなんの話してるんだよ」
売り言葉に買い言葉、とでも言うんだろうか。
意図せずサリエラ自身の言葉もとげとげしくなる。
「私、浮気とか許せるタイプじゃないから」
「おい」
「もう引き止めたりしない」
「なに言って……」
「今日で、終わりに」
「おい……」
ミケルの手が頬に触れ、親指が目尻をなぞる。
「泣くなよ」
彼の言葉で自身が泣いてしまっていることに気付く。
「別れるつもりはない。そもそもお前以外と付き合うわけないだろ」
声色が優しい。
まっすぐサリエラを見つめながら言うミケルは嘘をついているようには見えない。
自分の思い違いだったのか。
浮気ではないとわかった安堵と、彼を疑ってしまった罪悪感でまた涙が溢れた。
ぽろぽろと零れ落ちるたびに彼の指が柔らかく拭ってくれる。
早く泣き止まないと、と思えば思うほど泣いてしまう。
「ごめ……ミケル…………ごめんね」
「大丈夫だ」
咎めることなく、ミケルはただただ優しく触れた。
ひとしきり泣き終え徐々に思考がはっきりしてくる。
ここでひとつの疑問が湧いた。
「ぁ、え、でも、今日のあの人は?」
「あ、あの人は……」
途端に口ごもる。
なりを潜めたはずの不安が再び顔を出し、思わず表情を歪めてしまう。
「いや! 違う!」
サリエラの心中を察したミケルは慌てて否定する。
言いにくそうに視線を泳がせているが、彼の言葉を根気よく待つ。
「あ、アドバイザー、だ……」
なんとも歯切れの悪い返事が返ってきた。
「……ん?」
斜め上の返答にサリエラは困惑する。
「っ……本当だ」
はっきりと言ってはいるが、ミケルはどこかバツが悪そうな様子だ。
「なんの?」
「…………」
沈黙してしまった。
そんなにも言いにくいことのアドバイスをもらっているのだろうか。
失業している、多額の借金がある、実は隠し子が居る、など様々な憶測が脳内を飛び回る中、ミケルが気まずそうに口を開く。
「…………恋愛相談」
「…………は?」
予想外の言葉に間の抜けた声が出てしまった。
「恋愛って……誰との?」
落ち着いたまま聞き返すがサリエラ自身少なからず動揺し、今さっきお前だけだと言われた言葉を忘れてしまったかのような質問をする。
「…………お前以外いるかよ」
彼は言いにくそうに口をもごもごしながら不明瞭に呟く。
風呂で温められただけではない頬の紅潮が見えた。
「お前の態度がだんだんよそよそしくなって、かと思ったら急に距離を詰めてきたり。こういう時は浮気されてるんだって聞いたから」
「よそよそしいって、いつの話?」
サリエラにその自覚はなった。
「何か月か前、夜、終わった後つらいって言ってただろ」
全く覚えがない。
「……あ」
ひとつだけ思い至る。
「サリエラが俺に触られるのが嫌なら控えようと思った。けど、どうしてもお前に触れたくて、せめて最小限にしようと……」
だから距離を感じたのだと合点がいった。
同時に彼が大きな勘違いをしていることにも気付く。
「お前が、か、わ……可愛すぎて……抑えられないから、距離を置こうと……」
口元を手で覆いながらもごもご言うミケルの顔は真っ赤に染まっていた。
普段甘い言葉など言わない彼の言葉にサリエラまで顔が熱くなる。
嬉しさと恥ずかしさで思考が止まりそうになりながらも、早く真相を伝えて彼を安心させなければと焦る。
「ごっごめん! 違うの!」
だが、つらいと言った理由をはっきり言葉にするのはためらわれた。
言い淀む時間が長くなるごとにミケルの表情が曇っていく。
早く言わなければ。
彼を不安にさせたくない。
意を決して口を開く。
「あの……気持ち、良すぎて……」
「なに?」
声が小さすぎて彼には聞き取れなかったようだ。
顔を寄せ、サリエラの口元に自身の耳を近付ける。
「っ! 感じすぎてつらいって言ったの!」
ヤケクソで声を張り上げる。
「…………」
彼からの反応がない。
さすがに大声過ぎたか、いや、内容が伝わっていないのか。
もう一度同じことを言うのはさすがに恥ずかしすぎる。
沈黙が痛い。
照れすぎてだんだんミケルのことを直視できなくなってくる。
早くなにか言ってよ、と心の中で彼を急かす。
ちゃぷり、と湯が揺れる気配に視線を上げる。
「っお前……」
顔を逸らすミケルは耳まで真っ赤になっていた。
「なんだよ、そういう……」
ぶつぶつもごもご言っている。
「ミケル? ……っ!」
強めに抱き締められた。
響いてくる彼の鼓動が速い。
「……じゃあなに? 俺とするの嫌じゃない?」
ぶっきらぼうに問われる。
顔は見えないが、彼のなりの照れ隠しだとわかった。
「嫌なわけないでしょ」
サリエラもミケルに負けず劣らずぶっきらぼうな声になる。
「したいのに、ミケルがなんかよそよそしくて。もっと魅力的にならなきゃって色々頑張ってたの」
「浮気じゃなくて?」
「そんなわけないでしょ! もう! うるさいなあ!」
照れもあいまって口が悪くなる。
「ぅわっ」
彼の首に腕を回し、少々強引に口付ける。
「ミケル以外好きになるわけないでしょうが」
人のことを言えないぐらい、サリエラも語尾がごにょごにょと消え入る。
「………………」
「………………」
互いに照れて言葉が出ない。
沈黙がいたたまれない。
「ちょっと、なんとか言ったらどうな……っ!」
耐えかね強気に発言するが、噛みつくようなキスに遮られた。
ミケルの大きな口に吸い付かれ貪られる。
強引に押し入ってきた舌が熱い。
呼吸が苦しくなるが、後頭部と腰に彼の手がまとわり逃げ道を奪われている。
口内をくまなくねぶられ、熱っぽい吐息が洩れてしまう。
彼に答えたくてサリエラも舌を伸ばせばすぐに絡め取られた。
裏側を根本から舐め上げ、先端を吸われる。
「舌、出して」
素直に従う。
表面を合わせゆっくり擦られた。
濡れた肉の感触に背筋が甘く震える。
口端から唾液がしたたるのも構わず彼の舌を味わう。
ミケルの指先がうなじを撫でた。
背骨に添ってゆっくりなぞられていく。
腰に辿り着いた時ぐっと引き寄せられた。
お腹に彼の中心が押し付けられる。
硬く怒張し下腹を突いてくる。
「ああ……だめだ。もっとサリエラに触れたい」
余裕のない言葉は吐息にまみれ、荒ぶる劣情を隠そうともしていない。
ミケルの表情が嬉しいと同時に官能を揺さぶられた。
唇が離れたのもつかの間、少しの隙間も惜しいというように荒々しくキスをされる。
口内を蹂躙されながら肌を滑っていく彼の手に感覚が鋭くなっていく。
背中、腰、ふともも。
肩や腕、首筋に至るまでじっとりなぞられていく。
全身くまなく指が添っていくのに、敏感な核心には触れてこない。
もどかしく焦らされ、腹の奥がきゅんと切なくなる。
「サリエラ、っ……は、ぁ」
キスの合間にうわごとのように名前を呼ばれる。
熱っぽい色香に脳の芯が痺れてしまう感覚に陥った。
突然、ざばりと派手に湯を揺らして体が離される。
「出るぞ」
腕を掴まれ湯船から引っ張り出される。
そのまま足早に脱衣所へ向かい、タオルで包まれ水分を拭われる。
無言でてきぱき動く彼を見つめたまま、ぽかんとしてされるがままのサリエラ。
髪もある程度拭き終わったところで体にタオルを巻かれ抱き上げられた。
「えっちょっと待……」
「待てはなしだ」
強くて速い彼の鼓動が伝わってくる。
熱い肌にどきどきした。
「……抱かせてくれ」
まっすぐな視線に射抜かれた。
触れてほしい。
サリエラは小さく頷いた。
1
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。
※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる