初恋のレシピは、きみと

餡玉(あんたま)

文字の大きさ
15 / 54
第4章 

3 きらめいて見える……

しおりを挟む
「えーと……僕はもう教室戻るとこなんで……」
「えー、なんで? 俺らも服乾かさなあかんし、もうちょい喋ろうやぁ」
「ひえっ」

 立ち上がりかけた僕の首に御子柴くんの腕が首に絡まり、ふたたび階段に座らせられた。すると背後から澄斗の腕が伸びてきて、その腕を外しにかかる。

「ちょっと、なにやってんだよ悠巳! 郁也にベタベタすんなって、困ってんだろ!」
「えー、なんやねんおまえ。いいやんべつに俺もクラスメイトやねんから。朝霞くんとは話したことないし、もっと色々しゃべりたいやん! なー? 朝霞くんもそーやんなぁ?」
「あ、はい……」

 御子柴くんは横から僕の顔を覗き込み、ニコニコ~ッと子犬のように笑う。
 とはいえ、御子柴くんも僕より余裕でガタイがいいので狭い。外階段の壁際に押し付けられるように座る格好になった僕は、小さくなって膝を抱えた。

「だからやめろって。ほら、郁也めちゃくちゃ嫌がってんだろーがっ!」
「嫌がってへんよなぁ? ちょーっとくっついて座ってるだけやもんなぁ?」
「いーやどこからどう見ても嫌がってる顔だ。おまえ空気読めなさすぎ」
「はぁー? おまえがゆうなや」

 狭い外階段に男子三人ってだけで相当暑苦しいし狭いのに、ふたりが言い争いをするからさらに暑い。
 さらに縮こまってせめて少しでもスペースを得ようとしていたら、真ん中に陣取っている御子柴くんがひょいと僕の顔を覗き込んできた。

「なぁ、朝霞くんはいやちゃうやんな~?」
「……いや、まあ、ちょっと狭いし、暑苦しい、かな……」

 若干不快ではあったので、全然大丈夫だよ~といえるほどの心の余裕はなく、僕は正直にそう答えた。
 すると御子柴くんは一瞬きょとんとした顔をして——……パッと僕の肩に置いていた手を離し万歳をした。

「ごめんごめん! こんな暑い中男にくっつかれてたら鬱陶しいやんな!」
「ほらみろバカ」
「うっさい澄斗。せやな、朝霞くんよう見たら小柄やから加減せなあかんかったな」
 
 御子柴くんは澄斗の長い脚によってげしげしと階段の数段下に押しやられていった。そして澄斗が僕の隣に腰を下ろし、憤然とした口調でこう言った。

「ごめんな郁也。こいつ距離感おかしいんだよ」

 澄斗は僕の隣に腰を下ろし、喉を鳴らしてスポーツドリンクを飲みはじめた。
 ふとそちらに目をやって——……僕は、ペッドボトルをあおる澄斗の姿に思わず目を奪われた。
 
 つるりとした肌に光る汗、青空をバックにぷはっと息を吐く姿はテレビCMさながらの清涼感。
 
 尖った喉仏を上下させてごくごくとスポーツドリンクを飲み干す澄斗はすこぶる爽やかだ。
 同時に、ほんのり火照って汗ばんだ肌からうっすらと漂う色っぽさのようなものに気づいてしまった僕は、またしても正体不明の胸の鼓動に襲われた。

(……な、なんか目のやり場に困る。別に脱いでるわけでもなんでもないのに……)

 さりげなく目を逸らしたら、今度は下の段にいる御子柴くんと目が合った。

 立てた膝に肘をつきこちらをじっと見つめていた御子柴くんが、またニッコリと笑う。ものすごく無邪気な笑顔で、なんだか拍子抜けしてしまう。
 陽キャ組の一員と言葉を交わすなんて不可能だ、怖いと思っていたけれど、御子柴くんは見た目よりずっと人懐っこい雰囲気だ。

 御子柴くんは汗を拭い、ぱたぱたとシャツの胸元を引っ張って風を入れはじめた。
 
「はぁ~暑っつ。ここならすぐ乾きそやな」
「だな」

 澄斗も同じように、白いシャツの下に着た淡いオレンジ色のタンクトップの胸元をつまんでため息をついた。
 
 襟ぐりが大きく開いているタンクトップだ。しなやかなか首筋、くっきり浮かんだ鎖骨のラインがくっきりと見えている。
 あと少しで、薄く盛り上がった胸元から乳首まで露わに見えてしまいそうになり——……ドキッとした僕は咄嗟に目を逸らし、大声でふたりに尋ねた。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

義兄が溺愛してきます

ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。 その翌日からだ。 義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。 翔は恋に好意を寄せているのだった。 本人はその事を知るよしもない。 その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。 成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。 翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。 すれ違う思いは交わるのか─────。

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

初恋ミントラヴァーズ

卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。 飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。 ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。 眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。 知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。 藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。 でも想いは勝手に加速して……。 彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。 果たしてふたりは、恋人になれるのか――? /金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/ じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。 集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。 ◆毎日2回更新。11時と20時◆

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

処理中です...