初恋のレシピは、きみと

餡玉(あんたま)

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第5章 

1 御子柴くんはよくしゃべる

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 そして、次の日曜日。
 今回は、澄斗の自宅で料理レッスンを受けることになった。
 週の半ばに突然体育館の施設点検が入ることになり、週末のバレー部の練習が突然休みになったためだ。
 
 せっかく一日中休みになったというのに、澄斗は「放課後だとバタバタするし、せっかくならゆっくり練習しない?」といって、日曜に料理レッスンが開催されることになったのである。
 そして御子柴くんも参加するのなら場所を変えようと提案され、澄斗の家で開催されることになったのだった。
 
「郁也くーん、こっちこっち!」
「あ……おはよう、御子柴くん」
「おはよ! てか、俺のことも名前で呼んでや」
「え、えーと……悠巳くん、だっけ」
「そ! ほないこか~!」

 御子柴くん改め、悠巳くんとは駅前で待ち合わせをして、いっしょに澄斗の家まで向かうことになったのだった。
 駅前に立って僕を待っていた御子柴くんは長い腕をブンブン振っていて、遠目にもかなり目立っていてすぐにわかった。
 
 御子柴くんは淡いグレーの襟付きシャツを、ダボッとした白いズボンにインしている。
 細身だが、御子柴くんもモデルばりのスタイルの良さだ。今日もめちゃくちゃかっこいし、きっと何を着ていてもすこぶる似合ってしまうに違いない。 
 ちょっとどきりしたのは、彼の白い耳たぶに小さなピアスが光っていること。
 僕は怖くて絶対に耳たぶに穴なんて開けられないけど、御子柴くんのピアスはずっと生まれたときからそこにあったかのように自然だった。
 
 対する僕は白いTシャツにジーパンというオシャレとは縁遠い格好をしている。
 華やかな悠巳くんの隣を歩いていると自分のみすぼらしさがより目立ってしまう気がするのだが、悠巳くんは全く気にしていないようでホッとする。

「澄斗んちな、一回だけバレー部の一年のメンツでお邪魔したことあんねん」
「へえ、そうなんだ。仲良いんだね」
「きっちり六人しかおらへんからな~。あ、俺はセッターで、澄斗はミドルブロッカーな。あ、ミドルブロッカーってわかる?」
「わ、わかんない」

 駅裏から伸びる緩やかな坂を登る悠巳くんは、初めて澄斗の家を訪れるわけではないらしい。

 歩きながら、悠巳くんの口は止まらない。喋っていないと死んでしまうと言わんばかりによく喋る。
 だけど口下手な僕にとってはありがたい。聞き役に徹しているだけでいいので気が楽だ。

「ところで、郁也くんと澄斗ってなんでそんな仲ええの?」
「えっ? えと……小学校が同じだったから、かな」
「へー、そうなんや。あ、澄斗って中学三年間、東京の名門校行っとったやん? 全寮制やったみたいやけど、その間も連絡取ったりしてたん?」
「いや、全然……」

 澄斗の通っていた中学は全寮制だったのかと、新たな情報を得た。
 そしてさらに、驚くような内容も追加で……
 
「中学生活、けっこう苦痛やったらしいで~。澄斗んち、家族仲ちょっとアレでコレやんか?」
「えっ、苦痛って? ていうか、アレとは……?」
 
 アレとかコレと言われても何のことやらさっぱりわからないが、なにやら眉を顰めているのでいい話ではなさそうだ。
 気になってさらに内容を深く聞こうとしたが、澄斗の家に到着してしまった。

「これが澄斗んち!? でっ……かい……」

 澄斗の家は、樹木の生垣に囲まれた中にあった。
 青々した芝生が敷き詰められた広い庭、その向こうに鎮座するのはモダンなデザインの家だった。
 二階建ての家の形は、簡単に表現するなら白い長方形。
 初夏の太陽を受けて鮮やかに輝く緑の中に建つ白い家はとても爽やかで、同じ町内に存在しているとは思えないほどおしゃれだ。

 悠巳くんは迷うことなくインターホンを押し、開錠音が鳴やいなやさっと鉄の門扉を押して中に入って行った。
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