18 / 21
友情?
12 美玲の本性
しおりを挟む
「ちょっと明美!? いつまであたしのことブロックするつもり!? ひといじゃない!」
バイト先に、突然美玲がやってきた。
華やかな美玲は、ファーストフードのハンバーガーショップにいるとちょっと浮く。
長い栗色の髪は綺麗に巻かれ、ツイードの可愛らしいセットアップでバッチリ決めて、さりげなさそうに肩から下げた高級バッグ。お昼時の混雑した時間帯に、行列を無視して明美のいるカウンターまで突撃してきた美玲を、制服姿の女子高生が不愉快そうに睨んでいる。
ちょっぴり怯んだものの、明美は一旦小さく深呼吸をして——しっかり美玲を見据えてこう言った。
「他のお客様のご迷惑になりますので、後ろにお並びください」
「はぁ!? あんたがライン返さないから、わざわざこんなとこまで来てあげたんだよ!?」
普段は、明美のイラスト欲しさに猫撫で声で甘えたように機嫌を取ってくる美玲だが、今日は本性を曝け出してしまっている。
それもそのはずだ。
明美は、これまでに美玲から受け取ったお金を全額返したあと、『今までありがとう』というメッセージを最後に、美玲のSNSの類はすべてブロックした。
ブロックしてみて初めて気づいた。
この数年、美玲とのつながりはほぼLINEのみだったということに。
年上の金持ち彼氏とのデートやクラブ遊びで忙しい美玲とは、大学も違えば生活圏もまるで違う。絵が欲しいときだけ機嫌を取ってくる美玲のことを、どうして友達だと思えていたのか不思議だった。
どうして、明美を利用するだけの相手との関係性に縋っていたのだろう……と、首を傾げたくなるほどに。
明美は美玲を無視して、今まさにオーダーをしようとしていた女子高生に笑顔を向けた。
「大変申し訳ありませんでした。ご注文をどうぞ」
「ちょっと明美!! 無視してんじゃねーよ!!」
美玲のキンキン声を聞きつけたらしい店長が、バックヤードから出てきてレジカウンターのそばにやってくる。明美は冷静な声で「すみません、こちらのお客様のご案内をお願いします」と店長に美玲を任せることにした。
店長は大柄な中年男性だ。
野太い声で「お客様、お並びのお客様のご迷惑となりますので、こちらにお並びください」と静かに注意され、美玲は綺麗な顔を醜く歪めて店長を睨みあげた。
「は? 別に客じゃないんだけど」
「当店でお食事をされないのであれば、お帰りください。他のお客様やスタッフの迷惑になりますので」
「……うっさいな、だからあたしは」
「これ以上騒がれるのでしたら、警察に相談いたしますが」
警察、という言葉に怯んだのか、美玲は派手に舌打ちをしてギロリと明美を睨みつけてきた。
「……あーもういい。もーどうでもいい。これまで散々付き合ってやったのにあたしを裏切るなんて信じらんない。もうあんたなんかどうでもいいわ」
美玲はそう吐き捨てて、不機嫌も露わな荒々しい歩調で、ファーストフード店から出て行った。
騒動を見守っていた一階フロアの客やレジに並んでいた客が気遣わしげに明美を見ていたが、店長の「大変お騒がせいたしました~!」という間延びした声で緊張感が消え、いつも通りの空気が戻ってくる。
「さっきはありがとうございました!」
そしてバイトが終わり、明美は店長にがばりと頭を下げる。
バックヤードでパソコンと格闘していた店長はへらっと笑い、軽く手を振る。
バイト先に、突然美玲がやってきた。
華やかな美玲は、ファーストフードのハンバーガーショップにいるとちょっと浮く。
長い栗色の髪は綺麗に巻かれ、ツイードの可愛らしいセットアップでバッチリ決めて、さりげなさそうに肩から下げた高級バッグ。お昼時の混雑した時間帯に、行列を無視して明美のいるカウンターまで突撃してきた美玲を、制服姿の女子高生が不愉快そうに睨んでいる。
ちょっぴり怯んだものの、明美は一旦小さく深呼吸をして——しっかり美玲を見据えてこう言った。
「他のお客様のご迷惑になりますので、後ろにお並びください」
「はぁ!? あんたがライン返さないから、わざわざこんなとこまで来てあげたんだよ!?」
普段は、明美のイラスト欲しさに猫撫で声で甘えたように機嫌を取ってくる美玲だが、今日は本性を曝け出してしまっている。
それもそのはずだ。
明美は、これまでに美玲から受け取ったお金を全額返したあと、『今までありがとう』というメッセージを最後に、美玲のSNSの類はすべてブロックした。
ブロックしてみて初めて気づいた。
この数年、美玲とのつながりはほぼLINEのみだったということに。
年上の金持ち彼氏とのデートやクラブ遊びで忙しい美玲とは、大学も違えば生活圏もまるで違う。絵が欲しいときだけ機嫌を取ってくる美玲のことを、どうして友達だと思えていたのか不思議だった。
どうして、明美を利用するだけの相手との関係性に縋っていたのだろう……と、首を傾げたくなるほどに。
明美は美玲を無視して、今まさにオーダーをしようとしていた女子高生に笑顔を向けた。
「大変申し訳ありませんでした。ご注文をどうぞ」
「ちょっと明美!! 無視してんじゃねーよ!!」
美玲のキンキン声を聞きつけたらしい店長が、バックヤードから出てきてレジカウンターのそばにやってくる。明美は冷静な声で「すみません、こちらのお客様のご案内をお願いします」と店長に美玲を任せることにした。
店長は大柄な中年男性だ。
野太い声で「お客様、お並びのお客様のご迷惑となりますので、こちらにお並びください」と静かに注意され、美玲は綺麗な顔を醜く歪めて店長を睨みあげた。
「は? 別に客じゃないんだけど」
「当店でお食事をされないのであれば、お帰りください。他のお客様やスタッフの迷惑になりますので」
「……うっさいな、だからあたしは」
「これ以上騒がれるのでしたら、警察に相談いたしますが」
警察、という言葉に怯んだのか、美玲は派手に舌打ちをしてギロリと明美を睨みつけてきた。
「……あーもういい。もーどうでもいい。これまで散々付き合ってやったのにあたしを裏切るなんて信じらんない。もうあんたなんかどうでもいいわ」
美玲はそう吐き捨てて、不機嫌も露わな荒々しい歩調で、ファーストフード店から出て行った。
騒動を見守っていた一階フロアの客やレジに並んでいた客が気遣わしげに明美を見ていたが、店長の「大変お騒がせいたしました~!」という間延びした声で緊張感が消え、いつも通りの空気が戻ってくる。
「さっきはありがとうございました!」
そしてバイトが終わり、明美は店長にがばりと頭を下げる。
バックヤードでパソコンと格闘していた店長はへらっと笑い、軽く手を振る。
53
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜
南 鈴紀
キャラ文芸
妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。
しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。
掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。
五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。
妖×家族の心温まる和風ファンタジー。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
オヤジ栽培〜癒しのオヤジを咲かせましょう〜
草加奈呼
キャラ文芸
会社員である草木好子《くさきよしこ》は、
毎日多忙な日々を送り心身ともに疲れきっていた。
ある日、仕事帰りに着物姿の女性に出会い、花の種をもらう。
「植物にはリラックス効果があるの」そう言われて花の種を育ててみると……
生えてきたのは植物ではなく、人間!?
咲くのは、なぜか皆〝オヤジ〟ばかり。
人型植物と人間が交差する日常の中で描かれる、
家族、別れ、再生。
ほんのり不思議で、少しだけ怖く、
それでも最後には、どこかあたたかい。
人型植物《オヤジ》たちが咲かせる群像劇(オムニバス)形式の物語。
あなたは、どんな花《オヤジ》を咲かせますか?
またいいオヤジが思いついたらどんどん増やしていきます!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる