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季節の番外編
まったり日和
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こちらは社会人になってからのお話です
˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚
舜平はうとうとしながら、レジャーシートに寝そべって読書をしている珠生の姿を眺めた。
共に暮らし始めて一ヶ月。
今日は、うららかな日差しが気持ちのいい日だ。たまには外でのんびりしようということになり、昼食を軽く済ませた後、二人で水辺までやってきた。
鴨川といえば、等間隔に並ぶカップルたちの姿が有名だ。だがそれは、繁華街のある三条、四条あたりの風景である。
鴨川を北上してゆくと、今出川を過ぎたあたりで、流れは大きく枝分かれをする。北西へ伸びるのが賀茂川、そして北東へ伸びるのが高瀬川というように、名称が変わるのである。
今、舜平と珠生がいるのは、北山エリアの賀茂川のほとりだ。このあたりは河川敷も広く、悠々と枝葉を伸ばした木々の木陰が心地良い場所である。にぎやかな学生たちや、家族連れやカップルなどが、のんびりとした時間を過ごしている。
この川沿いの桜の樹の下で、珠生と舜平は運命的な再会をした。
仲間たちとバーベキューをした思い出の場所でもあり、ひどい喧嘩をした後に仲直りをした場所でもあり、何気ない日常の中、とりとめのない会話をしつつ散歩をした場所でもある。
そんな場所で、のんびり昼下がりの時間を過ごす。傍目に見れば、ごくごく普通の休日の過ごし方に見えるだろう。
だがこの時が、掛け替えのない大切な時間であることを、舜平はしみじみ感じていた。
報われなかった前世の自分に、こんなにも穏やかで幸せな時間が五百年後に待っているということを、すぐにでも伝えてやりたいと心底思う。
「あれ、起きてたんだ」
「……んー。まぁな」
うつ伏せになって文庫本をめくっていた珠生が、ふと気づくとこちらを見ている。高校生の頃は、あどけなさを残す愛らしい美少年だったが、二十二歳になった今の珠生には大人の落ち着きが身につき始め、千珠を彷彿とさせる妖艶さが備わり始めているように見える。
昼下がりの心地よい風が、木漏れ日にきらめく珠生の髪を揺らしている。陽の色を溶かし込んだかのような瞳の色で、ちょっとばかり眠たげにこちらを見ている珠生の眼差しに、舜平はふわりと笑顔を返した。
桜の盛りは過ぎているが、名残惜しげに木々を飾っていた薄桃色の花弁が、時折風に吹かれて雪のように舞っている。そのひとひらが、珠生の髪にくっついた。舜平は手を伸ばして、そっと花びらを指でつまむ。
「桜、ついてんで」
「ああ……ほんとだ」
ちょっと髪に触れるだけで、くすぐったそうな顔をする珠生が愛おしい。思わず抱きしめたくなる衝動をぐっとこらえて、舜平は桜の花弁を指先で撫でてみた。まだ水気を含み、しっとりとした肌触りである。
その感触に、なんとなく珠生の肌の質感を思い出してしまい、舜平は密かにどきりとした。
そばにいるとついつい触れたくなってしまう珠生の美肌だ。こんなにも清々しく晴れ渡った空の下でさえ、やましいことを考えてしまう己の煩悩を振り払うように、舜平はふっと桜の花びらに息を吹きかけ、自然に返す。
舜平の助平心になど気づく様子もなく、珠生はごろんとレジャーシートの上に仰向けになると、黒いブックカバーのかかった文庫本を頭上に持ち上げ、再び読書に熱中し始めた。
珠生は読書家だが、舜平は学術書以外あまり読んだことがない。学生時代は、必要に迫られて読み漁っていた論文や専門書の類に触れることもなくなり、随分活字から離れてしまったものである。
そういえば、珠生の選ぶ本の好みなど、実はあまりよく知らない。舜平は肘枕をして珠生の方へ身体を向けると、邪魔を承知で声をかけた。
「珠生、何読んでんの?」
「んー……? 刑事もの」
「へぇ、そうなんや。好きなん?」
「そうでもなかったんだけど……捜査協力とかも増えたしさ、なんとなく」
「熱心やなあお前」
「そうでもないよ」
集中力が切れてしまったのか、珠生は本を畳んで胸の上に置き、うーーんと思い切り伸びをした。自然の中にいるのが心地よいのだろう、珠生の表情はいつになく穏やかで、幸せそうだった。
「今年はまともに花見できひんかったなぁ」
「そうだね。……そういえば、あっち側でバーベキューしたことあったよね」
「ああ、最初の年やんな。お前が高一んとき」
「そうそう。懐かしいなぁ」
珠生は対岸の河川敷を指差して、感慨深そうに笑っている。
再会してすぐの頃、親しい仲間たちとバーベキューをしたことがあった。舜平もまだ大学生で、珠生の父・健介は、ただの指導教官だった。同じゼミの八代拓や、湊、彰、そして珠生の双子の妹である千秋らとともに、賑やかに過ごした日もあった。
あの頃は、珠生も舜平も過去の記憶は曖昧だった。
だが、珠生を愛おしく大切に想う気持ちだけは、当時から感じていたものである。その感情の意味を理解することもできず、戸惑いつつも珠生に惹かれていたあの頃を思うと、二人の関係も随分落ち着いたものになったなと感じる。
「またみんなでやろか、花見とか、バーベキューとか」
「いいね、来年かな。……けど、年度始めって色々忙しいからなあ」
「ほな、夏やな。一日くらい、休み合うやろ」
「うん、そうだね」
珠生はにっこり笑うと、ふと気づいたように空を見上げた。
真っ青に澄み渡る春空に、一筋の飛行機雲がくっきりと浮かんでいる。そして、仲間と戯れるように空を飛び交う燕たちの歌声が、耳に心地よく聞こえてきた。
「ああ……気持ちいい。ずっとここでこうしてたい」
「せやな。気持ちええけど、ここじゃお前に触れへんのがストレスや」
「触れへんって……何言ってんだよ。帰ったらいくらでも触れるじゃん」
ちょっと頬を赤らめつつ、怒ったような顔で舜平を見上げる珠生が可愛い。舜平はははっと笑って、珠生の耳にかかる髪の毛をそっとよけた。
「へぇ、いくらでも触っていいんや」
「そりゃ……いいよ」
「ふーん。そうなんや」
「なんだよ。いやらしい顔しやがって」
ぶい、と珠生がそっぽを向いてしまう。すると二人のすぐそばを、きゃははっと幼い笑い声が駆け抜けていった。ちょっと珠生にいたずらでもしてやろうかと思っていた舜平はハッとして、起き上がってあぐらをかいた。
「はぁ~~……あかんなぁ俺」
「何が?」
「お前と一緒に住み始めてから、なんやもうずっとムラムラしてもうてるわ」
「うん、そうだね」
「……そこは否定してくれよ」
果てしなくあっさりした返事が返ってきて、舜平は若干へこんだ。
ひょっとしたら、毎晩のように(というか昼夜問わず)珠生を求めてしまう自分のしつこさ加減に、珠生は辟易しているのかもしれない。舜平が迫れば応じてくれる珠生だが、実は無理をさせていた? 早々に愛想をつかされてしまうのではないだろうかという危機感に青くなっていると、珠生はぷっと噴き出して、「あはははっ、何その顔」と舜平をからかった。
「……昔からお前にはしつこいしつこいて怒られまくってたしな……。イヤやった?」
「ははっ、冗談だよ。イヤなわけないじゃん」
「ほんまか? 実は無理してるとか……」
「してないよ。……ムラムラしちゃうっていうのは、俺も分かるし」
「え」
そう言って、困ったような微笑みを浮かべる珠生の表情に、どきどきと胸が高鳴った。そんな可愛い顔を見せられて、自分が平気でいられるとでも思っているのだろうか。今すぐここで押し倒し、思いっきりキスがしたいと、全細胞が大騒ぎだ。
——ああ~……今すぐ帰って珠生のことめっちゃ抱きたい。ここでもいいかな。ちょっとくらい抱きしめたって、誰も見てへんやんな……。
と思って、ちらと周りを見てみると……視線を感じる。今まであまり気にしてはいなかったが、すぐそばでおしゃべりをしていた女子大生風の女性たちも、ジョギングウェアに身を包んだ中年男も、子どもを遊ばせつつスマートフォンをいじっているかに見えた若い母親も、その旦那も……ことごとく珠生を見ているではないか。
のんびりと寛いだ笑みを浮かべている珠生の愛らしさについては、舜平は誰よりもよく理解している。珠生の容姿の麗しさが周りにどういう影響を及ぼすかということも、よくよく分かっていることである。
「……なるほど。帰ろか」
「え? もう?」
「明日も早いし。買いもんして帰らなな」
「ああ……そうだね」
珠生はまたうーーんと伸びをした。その拍子に、珠生の長袖Tシャツの裾が持ち上がり、引き締まった白い腹がちらりと見えてしまったではないか。当の本人はまるで頓着する様子もないのだが、周囲の人々が一斉に「フワァ~」と色めき立つのを、舜平はしっかりと見てしまった。
舜平は素早く、サッと珠生のシャツを引っ張った。
「あほ、腹冷えんで」
「そう? あったかいじゃん」
「あかんあかん。なんや急に風が冷たいわ~。帰んで、珠生」
「そうかなぁ。まったく、忙しないなぁ……」
ブツブツ文句を言いながらも、珠生は身支度を整え始めた。珠生は裸足になっていたため、ジーパンの裾からは細い足首がのぞいているし、白いうなじさえ無防備に見えてしまう。舜平はため息をついた。
——……俺が過保護すぎんのかな……。いや、でも用心するに越したことはない……うん。
なんとなく、珠生の私物である黒いキャップを深々とかぶせると、「ちょ、前見えない!!」と怒られた。
うららかな春の陽のもと、のどかな一日が過ぎてゆく。
『まったり日和』 おしまい♡
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舜平はうとうとしながら、レジャーシートに寝そべって読書をしている珠生の姿を眺めた。
共に暮らし始めて一ヶ月。
今日は、うららかな日差しが気持ちのいい日だ。たまには外でのんびりしようということになり、昼食を軽く済ませた後、二人で水辺までやってきた。
鴨川といえば、等間隔に並ぶカップルたちの姿が有名だ。だがそれは、繁華街のある三条、四条あたりの風景である。
鴨川を北上してゆくと、今出川を過ぎたあたりで、流れは大きく枝分かれをする。北西へ伸びるのが賀茂川、そして北東へ伸びるのが高瀬川というように、名称が変わるのである。
今、舜平と珠生がいるのは、北山エリアの賀茂川のほとりだ。このあたりは河川敷も広く、悠々と枝葉を伸ばした木々の木陰が心地良い場所である。にぎやかな学生たちや、家族連れやカップルなどが、のんびりとした時間を過ごしている。
この川沿いの桜の樹の下で、珠生と舜平は運命的な再会をした。
仲間たちとバーベキューをした思い出の場所でもあり、ひどい喧嘩をした後に仲直りをした場所でもあり、何気ない日常の中、とりとめのない会話をしつつ散歩をした場所でもある。
そんな場所で、のんびり昼下がりの時間を過ごす。傍目に見れば、ごくごく普通の休日の過ごし方に見えるだろう。
だがこの時が、掛け替えのない大切な時間であることを、舜平はしみじみ感じていた。
報われなかった前世の自分に、こんなにも穏やかで幸せな時間が五百年後に待っているということを、すぐにでも伝えてやりたいと心底思う。
「あれ、起きてたんだ」
「……んー。まぁな」
うつ伏せになって文庫本をめくっていた珠生が、ふと気づくとこちらを見ている。高校生の頃は、あどけなさを残す愛らしい美少年だったが、二十二歳になった今の珠生には大人の落ち着きが身につき始め、千珠を彷彿とさせる妖艶さが備わり始めているように見える。
昼下がりの心地よい風が、木漏れ日にきらめく珠生の髪を揺らしている。陽の色を溶かし込んだかのような瞳の色で、ちょっとばかり眠たげにこちらを見ている珠生の眼差しに、舜平はふわりと笑顔を返した。
桜の盛りは過ぎているが、名残惜しげに木々を飾っていた薄桃色の花弁が、時折風に吹かれて雪のように舞っている。そのひとひらが、珠生の髪にくっついた。舜平は手を伸ばして、そっと花びらを指でつまむ。
「桜、ついてんで」
「ああ……ほんとだ」
ちょっと髪に触れるだけで、くすぐったそうな顔をする珠生が愛おしい。思わず抱きしめたくなる衝動をぐっとこらえて、舜平は桜の花弁を指先で撫でてみた。まだ水気を含み、しっとりとした肌触りである。
その感触に、なんとなく珠生の肌の質感を思い出してしまい、舜平は密かにどきりとした。
そばにいるとついつい触れたくなってしまう珠生の美肌だ。こんなにも清々しく晴れ渡った空の下でさえ、やましいことを考えてしまう己の煩悩を振り払うように、舜平はふっと桜の花びらに息を吹きかけ、自然に返す。
舜平の助平心になど気づく様子もなく、珠生はごろんとレジャーシートの上に仰向けになると、黒いブックカバーのかかった文庫本を頭上に持ち上げ、再び読書に熱中し始めた。
珠生は読書家だが、舜平は学術書以外あまり読んだことがない。学生時代は、必要に迫られて読み漁っていた論文や専門書の類に触れることもなくなり、随分活字から離れてしまったものである。
そういえば、珠生の選ぶ本の好みなど、実はあまりよく知らない。舜平は肘枕をして珠生の方へ身体を向けると、邪魔を承知で声をかけた。
「珠生、何読んでんの?」
「んー……? 刑事もの」
「へぇ、そうなんや。好きなん?」
「そうでもなかったんだけど……捜査協力とかも増えたしさ、なんとなく」
「熱心やなあお前」
「そうでもないよ」
集中力が切れてしまったのか、珠生は本を畳んで胸の上に置き、うーーんと思い切り伸びをした。自然の中にいるのが心地よいのだろう、珠生の表情はいつになく穏やかで、幸せそうだった。
「今年はまともに花見できひんかったなぁ」
「そうだね。……そういえば、あっち側でバーベキューしたことあったよね」
「ああ、最初の年やんな。お前が高一んとき」
「そうそう。懐かしいなぁ」
珠生は対岸の河川敷を指差して、感慨深そうに笑っている。
再会してすぐの頃、親しい仲間たちとバーベキューをしたことがあった。舜平もまだ大学生で、珠生の父・健介は、ただの指導教官だった。同じゼミの八代拓や、湊、彰、そして珠生の双子の妹である千秋らとともに、賑やかに過ごした日もあった。
あの頃は、珠生も舜平も過去の記憶は曖昧だった。
だが、珠生を愛おしく大切に想う気持ちだけは、当時から感じていたものである。その感情の意味を理解することもできず、戸惑いつつも珠生に惹かれていたあの頃を思うと、二人の関係も随分落ち着いたものになったなと感じる。
「またみんなでやろか、花見とか、バーベキューとか」
「いいね、来年かな。……けど、年度始めって色々忙しいからなあ」
「ほな、夏やな。一日くらい、休み合うやろ」
「うん、そうだね」
珠生はにっこり笑うと、ふと気づいたように空を見上げた。
真っ青に澄み渡る春空に、一筋の飛行機雲がくっきりと浮かんでいる。そして、仲間と戯れるように空を飛び交う燕たちの歌声が、耳に心地よく聞こえてきた。
「ああ……気持ちいい。ずっとここでこうしてたい」
「せやな。気持ちええけど、ここじゃお前に触れへんのがストレスや」
「触れへんって……何言ってんだよ。帰ったらいくらでも触れるじゃん」
ちょっと頬を赤らめつつ、怒ったような顔で舜平を見上げる珠生が可愛い。舜平はははっと笑って、珠生の耳にかかる髪の毛をそっとよけた。
「へぇ、いくらでも触っていいんや」
「そりゃ……いいよ」
「ふーん。そうなんや」
「なんだよ。いやらしい顔しやがって」
ぶい、と珠生がそっぽを向いてしまう。すると二人のすぐそばを、きゃははっと幼い笑い声が駆け抜けていった。ちょっと珠生にいたずらでもしてやろうかと思っていた舜平はハッとして、起き上がってあぐらをかいた。
「はぁ~~……あかんなぁ俺」
「何が?」
「お前と一緒に住み始めてから、なんやもうずっとムラムラしてもうてるわ」
「うん、そうだね」
「……そこは否定してくれよ」
果てしなくあっさりした返事が返ってきて、舜平は若干へこんだ。
ひょっとしたら、毎晩のように(というか昼夜問わず)珠生を求めてしまう自分のしつこさ加減に、珠生は辟易しているのかもしれない。舜平が迫れば応じてくれる珠生だが、実は無理をさせていた? 早々に愛想をつかされてしまうのではないだろうかという危機感に青くなっていると、珠生はぷっと噴き出して、「あはははっ、何その顔」と舜平をからかった。
「……昔からお前にはしつこいしつこいて怒られまくってたしな……。イヤやった?」
「ははっ、冗談だよ。イヤなわけないじゃん」
「ほんまか? 実は無理してるとか……」
「してないよ。……ムラムラしちゃうっていうのは、俺も分かるし」
「え」
そう言って、困ったような微笑みを浮かべる珠生の表情に、どきどきと胸が高鳴った。そんな可愛い顔を見せられて、自分が平気でいられるとでも思っているのだろうか。今すぐここで押し倒し、思いっきりキスがしたいと、全細胞が大騒ぎだ。
——ああ~……今すぐ帰って珠生のことめっちゃ抱きたい。ここでもいいかな。ちょっとくらい抱きしめたって、誰も見てへんやんな……。
と思って、ちらと周りを見てみると……視線を感じる。今まであまり気にしてはいなかったが、すぐそばでおしゃべりをしていた女子大生風の女性たちも、ジョギングウェアに身を包んだ中年男も、子どもを遊ばせつつスマートフォンをいじっているかに見えた若い母親も、その旦那も……ことごとく珠生を見ているではないか。
のんびりと寛いだ笑みを浮かべている珠生の愛らしさについては、舜平は誰よりもよく理解している。珠生の容姿の麗しさが周りにどういう影響を及ぼすかということも、よくよく分かっていることである。
「……なるほど。帰ろか」
「え? もう?」
「明日も早いし。買いもんして帰らなな」
「ああ……そうだね」
珠生はまたうーーんと伸びをした。その拍子に、珠生の長袖Tシャツの裾が持ち上がり、引き締まった白い腹がちらりと見えてしまったではないか。当の本人はまるで頓着する様子もないのだが、周囲の人々が一斉に「フワァ~」と色めき立つのを、舜平はしっかりと見てしまった。
舜平は素早く、サッと珠生のシャツを引っ張った。
「あほ、腹冷えんで」
「そう? あったかいじゃん」
「あかんあかん。なんや急に風が冷たいわ~。帰んで、珠生」
「そうかなぁ。まったく、忙しないなぁ……」
ブツブツ文句を言いながらも、珠生は身支度を整え始めた。珠生は裸足になっていたため、ジーパンの裾からは細い足首がのぞいているし、白いうなじさえ無防備に見えてしまう。舜平はため息をついた。
——……俺が過保護すぎんのかな……。いや、でも用心するに越したことはない……うん。
なんとなく、珠生の私物である黒いキャップを深々とかぶせると、「ちょ、前見えない!!」と怒られた。
うららかな春の陽のもと、のどかな一日が過ぎてゆく。
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