VR『異世界』より

キリコ

文字の大きさ
16 / 65

16.専属護衛騎士

しおりを挟む


「一先ず訓練場へ案内してくれ。どの程度やれるのか見なくては。ユーリもそれでいいか?」
「もちろん構いません。クルト様がお選びくださった方が安心ですし」
「では此方へ」

 先導され階下へ降りると、先程は見かけなかった騎士様達が何人も訓練場へ向かうのが見えた。

 訓練場の扉の前に着くと、中から剣戟の音やザワザワとした話し声が聞こえてくる。ここに来て漸くワクワクし始める僕。

 誰でもいいとか思ってたけど、あれじゃん。今更だけどここに居る騎士様って、聖騎士ってやつじゃないの? なにそれめっちゃファンタジー。ゲームっぽい! 聖魔法とか使うんですか? 気になる。

 ギッ、と重そうな音を立てて騎士団長が扉を開くと、いきなり全ての音が止んだ。シーンとして、そこへ団長の足音が響く。クルト様に促され、はっとして僕も後に続いた。

 し、視線が痛い。思わずクルト様の影に隠れ、彼の腕に載せていた手でクルト様の腕をギュッと掴んでしまった。手を撫でられクルト様を見上げると微笑んでいて、それを見ると自然と力が抜けた。クルト様がいるのになんかある訳ないのにビビり過ぎたかも。

 そろ、と横に戻るも視線は変わらず。ここに来てから見られる事には慣れたと思っていたけれど、そんな事はなかったね。



「選抜された者のうち、ユーリ様の護衛騎士へ希望する者は前に出て名を名乗れ」

 騎士団長がそう宣言すると10名程がさっと目の前に整列した。

 騎士様達が次々名乗ってくださるけれど、全然覚えられません。辛うじて最初の五人まではファーストネームだけは覚えたけど。寝たら忘れる。

 しかもその内の最初の三人はクルト様の騎士としてよく見てるし。なんで? どう言う事? 

 クルト様を見上げると、頷いて答えてくれた。

「大丈夫。彼等は私が推薦したんだ」
「そうなのですか? でもそうしたらクルト様の騎士が少なくなるのでは」
「元々私はそれ程必要としていないからな。新しく追加すればいいだけだ」
「ですが、真面目に勤めて来たのにクルト様から外れて僕の騎士になるなど・・・・・・。降格みたいな事ですよね?」
「何を言う。この様な場所でこれほど可憐な姫君を守る事が出来るなど、とんでもない幸運に決まっている」
「なっ、おやめくださいっ。贔屓目が過ぎますっ。もう。クルト様は」

 こんな所で身内贔屓な発言はおやめになって! 本当の身内じゃないのに全く、困った人。あー恥ずかしい。

「分かった分かった。すまない。それで? 本当に私が決めていいのか?」
「・・・・・・はい。その方が安心ですし」
「話してみたりしなくていいのか?」
「どうしてです? 性格の相性という事でしたら問題ないと思いますけれど。だって、今少し話しただけでは分かりませんし、クルト様が大丈夫と思われた方なら仲良く出来ると思いますよ」

 目を見開いたかと思えば目頭を押さえたりして、お疲れですか? 無理して今日来なくてもよかったのでは。思わず背中を摩ってしまう。

「大丈夫ですか? 体調が優れないなら戻りますか? 騎士様方には申し訳ないですけれど、僕は急ぎませんし」
「いや、問題は無い。では順番に私と軽く打ち合って貰おう」
「えっ、クルト様!?」

 僕が動揺してる間に、クルト様はさっさと訓練場の真ん中に騎士の一人と移動していく。体調悪そうにしてたのに大丈夫なのかな? それに打ち合うって剣も持たずに。

 位置に着いたのか、相手が構えをとる。するとクルト様は左の手のひらから剣を引き出していた。

 わーーー! うっそ何それ何それ何それ! あれじゃん、思春期に煩う病に罹った人が大好きなやつじゃん!!! 僕も大好き!




 そして僕が一人大興奮してる間に打ち合いが始まっていて。どの相手にも数度打ち合えば実力が分かるのか、次々と騎士が交代していった。よく分かってないけども僕の気の所為? なんか、騎士様達の方が余裕がない感じ。

 ・・・・・・ええ? これ、何となくだけど、クルト様ってもしかしてめちゃくちゃ強かったりする?



 丁度二周したところで終わり、此方へ戻ってきた。嘘でしょ。あれだけ動いて汗一つかかないんですか? 服もヨレることも無く?

「お疲れ様でした」
「ありがとう」
「もしかして、クルト様ってすっごくお強かったりします?」
「どうだろう。普通じゃないか?」
「俺より強いくせにお前が普通なわけあるかっ。気軽に騎士達の心を折っていくな」
「うわぁ」

 うわぁ。だよ。そりゃ団長の口調も崩れますよね。

 この人どうなってんの? なんで宰相やってるの? 隠し要素が多すぎませんかね。これで魔法も最強とか言わないよね。まさか。
 
 最初に言ってた、普段は爺様達の雑用係をやってるとか言ってたのは何だったの? まぁあれは、僕の為の時間をとっておかしくない為の言い訳だったのかも知れないけど。

 蓋を開けてみれば宰相ポジだし、騎士団長より強くて? チート野郎過ぎない?



 もしかして僕、凄い人に庇護されてたりするの? 





「どの方になさるかお決めになりました?」
「そうだな。やはりハインリヒとギルベルト、それとクリストフは入れておくべきだな」
「クルト様の騎士様ですね」
「ああ、これからはユーリの騎士だ」
「はい」
「それから、リヒャルトとセドリック、あとマティアス。交代要員も含め一先ずこの六名でいいだろう。ただ、これからの動向によっては増やす事になるだろうから、他の四名もそのつもりでいてくれ」

 騎士様達の返事が揃って大きな声になり、またしてもビクリと体を跳ねさせてしまった。あのタイミングでは、話していたクルト様を皆見ていたはずだから大丈夫。うん。・・・・・・誰も見てませんように。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼不定期連載となりました。 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

【エルド学園】俺はこの『親友』が、ただの学生だと思っていた

西園 いつき
BL
エルド王国第一王子、レオンは、唯一の親友ノアと日々研鑽を重ねていた。 文武共に自分より優れている、対等な学生。 ノアのことをそう信じて疑わなかったレオンだが、突如学園生活は戦火に巻き込まれ、信じていたものが崩れ始める。 王国と帝国、そして王統をめぐる陰謀と二人の関係が交錯する、王子×親友のファンタジーBL。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。 男前受け

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL シリアスはほとんどないです 不定期更新

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...