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16.専属護衛騎士
「一先ず訓練場へ案内してくれ。どの程度やれるのか見なくては。ユーリもそれでいいか?」
「もちろん構いません。クルト様がお選びくださった方が安心ですし」
「では此方へ」
先導され階下へ降りると、先程は見かけなかった騎士様達が何人も訓練場へ向かうのが見えた。
訓練場の扉の前に着くと、中から剣戟の音やザワザワとした話し声が聞こえてくる。ここに来て漸くワクワクし始める僕。
誰でもいいとか思ってたけど、あれじゃん。今更だけどここに居る騎士様って、聖騎士ってやつじゃないの? なにそれめっちゃファンタジー。ゲームっぽい! 聖魔法とか使うんですか? 気になる。
ギッ、と重そうな音を立てて騎士団長が扉を開くと、いきなり全ての音が止んだ。シーンとして、そこへ団長の足音が響く。クルト様に促され、はっとして僕も後に続いた。
し、視線が痛い。思わずクルト様の影に隠れ、彼の腕に載せていた手でクルト様の腕をギュッと掴んでしまった。手を撫でられクルト様を見上げると微笑んでいて、それを見ると自然と力が抜けた。クルト様がいるのになんかある訳ないのにビビり過ぎたかも。
そろ、と横に戻るも視線は変わらず。ここに来てから見られる事には慣れたと思っていたけれど、そんな事はなかったね。
「選抜された者のうち、ユーリ様の護衛騎士へ希望する者は前に出て名を名乗れ」
騎士団長がそう宣言すると10名程がさっと目の前に整列した。
騎士様達が次々名乗ってくださるけれど、全然覚えられません。辛うじて最初の五人まではファーストネームだけは覚えたけど。寝たら忘れる。
しかもその内の最初の三人はクルト様の騎士としてよく見てるし。なんで? どう言う事?
クルト様を見上げると、頷いて答えてくれた。
「大丈夫。彼等は私が推薦したんだ」
「そうなのですか? でもそうしたらクルト様の騎士が少なくなるのでは」
「元々私はそれ程必要としていないからな。新しく追加すればいいだけだ」
「ですが、真面目に勤めて来たのにクルト様から外れて僕の騎士になるなど・・・・・・。降格みたいな事ですよね?」
「何を言う。この様な場所でこれほど可憐な姫君を守る事が出来るなど、とんでもない幸運に決まっている」
「なっ、おやめくださいっ。贔屓目が過ぎますっ。もう。クルト様は」
こんな所で身内贔屓な発言はおやめになって! 本当の身内じゃないのに全く、困った人。あー恥ずかしい。
「分かった分かった。すまない。それで? 本当に私が決めていいのか?」
「・・・・・・はい。その方が安心ですし」
「話してみたりしなくていいのか?」
「どうしてです? 性格の相性という事でしたら問題ないと思いますけれど。だって、今少し話しただけでは分かりませんし、クルト様が大丈夫と思われた方なら仲良く出来ると思いますよ」
目を見開いたかと思えば目頭を押さえたりして、お疲れですか? 無理して今日来なくてもよかったのでは。思わず背中を摩ってしまう。
「大丈夫ですか? 体調が優れないなら戻りますか? 騎士様方には申し訳ないですけれど、僕は急ぎませんし」
「いや、問題は無い。では順番に私と軽く打ち合って貰おう」
「えっ、クルト様!?」
僕が動揺してる間に、クルト様はさっさと訓練場の真ん中に騎士の一人と移動していく。体調悪そうにしてたのに大丈夫なのかな? それに打ち合うって剣も持たずに。
位置に着いたのか、相手が構えをとる。するとクルト様は左の手のひらから剣を引き出していた。
わーーー! うっそ何それ何それ何それ! あれじゃん、思春期に煩う病に罹った人が大好きなやつじゃん!!! 僕も大好き!
そして僕が一人大興奮してる間に打ち合いが始まっていて。どの相手にも数度打ち合えば実力が分かるのか、次々と騎士が交代していった。よく分かってないけども僕の気の所為? なんか、騎士様達の方が余裕がない感じ。
・・・・・・ええ? これ、何となくだけど、クルト様ってもしかしてめちゃくちゃ強かったりする?
丁度二周したところで終わり、此方へ戻ってきた。嘘でしょ。あれだけ動いて汗一つかかないんですか? 服もヨレることも無く?
「お疲れ様でした」
「ありがとう」
「もしかして、クルト様ってすっごくお強かったりします?」
「どうだろう。普通じゃないか?」
「俺より強いくせにお前が普通なわけあるかっ。気軽に騎士達の心を折っていくな」
「うわぁ」
うわぁ。だよ。そりゃ団長の口調も崩れますよね。
この人どうなってんの? なんで宰相やってるの? 隠し要素が多すぎませんかね。これで魔法も最強とか言わないよね。まさか。
最初に言ってた、普段は爺様達の雑用係をやってるとか言ってたのは何だったの? まぁあれは、僕の為の時間をとっておかしくない為の言い訳だったのかも知れないけど。
蓋を開けてみれば宰相ポジだし、騎士団長より強くて? チート野郎過ぎない?
もしかして僕、凄い人に庇護されてたりするの?
「どの方になさるかお決めになりました?」
「そうだな。やはりハインリヒとギルベルト、それとクリストフは入れておくべきだな」
「クルト様の騎士様ですね」
「ああ、これからはユーリの騎士だ」
「はい」
「それから、リヒャルトとセドリック、あとマティアス。交代要員も含め一先ずこの六名でいいだろう。ただ、これからの動向によっては増やす事になるだろうから、他の四名もそのつもりでいてくれ」
騎士様達の返事が揃って大きな声になり、またしてもビクリと体を跳ねさせてしまった。あのタイミングでは、話していたクルト様を皆見ていたはずだから大丈夫。うん。・・・・・・誰も見てませんように。
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