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43.ユグ様の印
何とかクルト様を宥め、執務室へ戻ろうと言うと問答無用で抱き上げられてしまった。いわゆるお姫様抱っこである。僕としては恥ずかしいけど、クルト様の上着を被せられたままでは危ないと言われれば仕方ない。
その顔を晒して歩き回れば神殿の風紀が乱れるだなんだのって、酷くない? いやでも、万年童顔呼ばわりの僕がそう言われるって、もしや色気が出でもしてた? それなら嬉しいんだけど。
けどまぁそんな上手い話があるわけ無いから。キスしたくらいで色気が出てれば年齢=童貞なんて切ない事にはなってないわけで。多分だけど。
逆にリベルのイメージダウン的な事にはなりそうだから大人しく上着は被っておきますかね。
それにしても、こんな事してまたどんな噂になることか・・・・・・。しかもユグ様という彼氏がいる身で、弟扱いとはいえお姫様抱っこはなぁ。
あれ、でも神様だから焼き餅とかないのか? ・・・・・いや、焼かないとしても良くない事に変わりはないよね。だって血が繋がってるわけでもないんだから、極端な話クルト様の好みを度外視すれば結婚も不可能じゃないわけで。逆に、そんな相手をユグ様がお姫様抱っこしてたりしたら僕なら絶対焼くし傷付く。
かと言ってクルト様にあんまり触らないでって言うのはなぁ。感じが悪いし自意識過剰だと思うのって僕だけ? こういうのってどうするのが正解なんだろ。
・・・・・・なるべく触れないようにして、難しそうなら感じ悪くても言うしかないか。ツラ。
一人クルト様の腕の中で考え込んでいる間に休憩室に到着したらしい。クルト様は食事やお茶をするテーブルの方じゃなく、ゆったり座れるソファの方へ僕をおろしてくれた。
「えーっと、今日のお仕事は・・・・・・」
「今日処理せねばならないものはそもそも組み込んでいない」
「あ、なら、よかった、です」
うええええ。き、きまずい。向かいのソファに陣取ったクルト様がじっと見つめてくる。
僕が言葉を返せないでいると、クルト様は徐ろに自身の膝に肘を突き、橋を渡すように指先だけ組んだ手に額を乗せると、はぁーーーと長いため息をはいた。
えーっと、なんかごめんなさい? んー、やっぱユグ様と両思いだった事は言っておいた方が良さそう。そうすればクルト様なら察してくれないかな。
それに、忘れてたけど祝福の事も言っておかないと。何か問題があっても困るしね。問題とは?って感じではあるけど、あんまり見せない方がいいのかとかはあるかも知れないから。
「えーと、聖樹様と思いを確かめ合ったので、そう言う事になったんですけど、その後に、多分任務を遂行出来たご褒美? で祝福と加護をいただきまして。騎士様のお陰だったんですけれど」
そう、祝福と加護の話でキスのことは流してしまおうという小狡い考えです。
「祝福と加護だと? どの様な効果が?」
祝福とか加護って聞いて、直ぐに効果に思い至るものなの? 僕なんて、ユグ様に何となく見守られるのかな、みたいな曖昧なイメージだったのに。ここをゲームと認識してるならともかく、普通に住人なのに。
あーでも、そっか。ここはそもそも魔法とかスキルがある世界だから、逆に魔法がない地球みたいに想像上とかの曖昧なものじゃないのか。
だって魔法や魔術だって、地球の科学のように解析や研究がされ続けてるんだろうしね。
「確か祝福は運気が上がるらしく、加護は魅了や呪いのようなデバフが全て弾かれるとの事でした」
「それは、なんと」
クルト様が絶句してる。なんで???
いや、確かに凄い効果ではあるよ? でもRPGなら終盤に入るとこういう効果の付与されたアクセサリとかよく出てくるよね? どっちかというと有りがちだと思うんだけど・・・・・・。クルト様なんて終盤に匹敵するチート級な強さな気がするし、その程度の物は持ってそうだけど。違うの?
もちろん貰えたことは嬉しいけれど、ユニーク系の物ではないって言うかさ。どっちかって言うと、キスで刻印された事の方が特別な事な気がしてる僕がいます。
「もしかして大っぴらに言わない方がいいでしょうか?」
「そこは普通なら何とも言えないところだが、ユーリなら問題ない」
「僕なら? 何故です?」
クルト様はやっと上体を起こし行儀悪く足を組むと、ローテーブルにクラウスさんが用意してくれたお茶を手に取り、口を湿らせた。
「分からないか? 高位貴族でもそうないくらい、ユーリには専属騎士がいるだろう? その状態で一体どんな危険がある? それに私がユーリを危険に晒すような間抜けだと思うか?」
ひえ。ドヤ顔かわいいですクルト様。
まぁ確かに、騎士様もだけどクルト様がいる時点で、よっぽど強い暗殺者とかでも来ない限り僕の身に危険が及ぶことはない。
「逆に、聖樹様から祝福や加護を賜ったとなれば、変なやっかみや邪な考えの者は近付いて来なくなると思うぞ」
「本当ですか!? あの気持ち悪い手紙の王族も?」
僕が思わずそう聞くとクルト様は、くは、と笑いを溢した。
「そうだな。あの程度なら余計に効力があるんじゃないか? あいつらは権威とか権力が大好きだからな」
「やはりそういった感じなのですねぇ」
まじでキモかったもんね。姫などと名乗るのであれば貢ぎ物を持って我が国に挨拶に来るのが当然、王族としての慣例も守れないとは何事だ、みたいな。見目が良ければ後宮に入れてやる事も考えないでもないぞ、って。
キッショ、としか思わなかったけど。
あーもう。あんまりこう言う事考えるとフラグになりそうでやだ!
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