異世界に行って転生者を助ける仕事に就きました

SFにおけるなんかすごい物質

微妙な距離

「どうしよ……」
　ひとまず手首を拘束してから宿に運び込む、時間が遅いのでなるべく音を出さないようにするので時間がかかってしまう。
「おきてください」
「……え、何？」
　どうやら朝が弱いようで状況が理解できていないようだ。
「なんかこっちを見ていた人がいたので捕まえて来ました」
「は、え？」
「あ、水です」
　テーブルに置いてあったコップに水道水を入れて渡すとそのまま受け取ってゆっくりと飲みだす。
「ありがとう、っで何？」
「いや、こっちを見ている人がいたので何で見ているか聞いたら襲ってきたので、すいませんちょっとやりすぎました」
「いえ、これくらいで十分よ」
　どうやら知っている人らしく顔を見るなり冷めた表情になる。
「知り合いですか？」
「最悪なことにね、一応敵になるから始末してもいいわ」
　そんなことをすればこの世界の警察機関が動き出すだろうしよくないだろう、とりあえず気絶させて駅の近くにでも放置すればいいだろう。
　手首の拘束をキツく縛って更に足首にも縄で縛っておく、これで勘弁してやろう。

「じゃあ私は寝るからまた何かあったらよろしく」
「わかりました……」
　返事をする間もなく眠ってしまった、せめて言い終わるのを待ってほしい。
　しかしこれでこちらへの視線がなくなったので自分とサヨはグッスリと眠ることができそうだ、視線がなくなった事で実は布団がかなり柔らかくてなかなかに良い物だったことに気付いた、そりゃあこの人がよく眠れるハズだよ。

「どうして起こしてくれなかったの？」
　時刻はおおよそ昼過ぎ、起こしていいかわからず放置してサヨといちゃいちゃしていた。
「いや、起こしていい物かと思いまして……」
「……そうね、そういったことは言ってない物ね、しょうがないか、とにかくすぐにチャックアウトして目的の場所に行くわよ」
「了解です」

　荷物がほとんどないのですぐに宿を出て山道を進んでいく、自分たちは整備された道を進む程度ならなんら問題がないのだが女性は汗だくになり肩で息をしながら進んでいた。
「なんであんたたちは平気なの？」
「なんていうかその、慣れているから？」
「あんたたち何者なのよ……」
「なんでしょう？」
　言われてみればなんと答えれば良いのだろうか、とりあえず会社員とかでいいのだろうか、しかし会社員で通じるのだろうか、結局は何でもないとか一般人とかになってしまう、堂々と名乗れるように考えて方がいいのかもしれない。
　道中で自動販売機に遭遇する度に何か購入して一気飲みしていた。