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1章 稀代の商人
五十五、それぞれの想い(2)
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「…アメリア」
「男は皆、誰かに弱みを見せるのが苦手ですから。
子は親に似るとはいいますが、まさかこんな所まで似てしまうとは思いませんでしたけどね」
「うっ…」
「…ガラハド、あなた…自分の2つ名忘れたのかしら?」
「2つ、名?…そんなものあったか?」
「…あら、私達が冒険者をしていた時期に付けられていたじゃない。
魔物は全て薙ぎ倒し、懐いた者には優しい反面、そうでない者に対しては常に威圧をしていた姿から付いた2つ名…
まさに、"狂犬"」
「なっ…」
「あの時の私達に着いてきてくれたガラハドが恋しいわ。
あの時はまだ頼りだったのに…いつの間にこんな何も出来ないおじさんになってしまったのかしら」
「お、れは…」
「あら、それともなにかしら。
自分はもうこれでいいんだ~って諦めるのかしら?
あらあら、騎士ともあろうものがその程度の忠誠心で働いてるなんて…そこら辺の一般騎士と同じねぇ?
近衛騎士の称号もなくしちゃいそうね?」
「俺は…そんな不甲斐ない男じゃねぇ!
聞いてれば散々言いやがって…良いぜ、今すぐユーグを捕まえてきてやるよ!」
そういってガラハドは城の外へと、大広間から飛び出した。
「…あなた、昔から説得下手ね。
言葉は良いのだけれど、使い方が悪いわ」
「…そういうお前はあいつの扱いが上手いな。
流石、狂犬を飼い慣らす"女王"と呼ばれたまで──バシッ」
「失敬な」
「…すまん」
箱庭が発動していても、ガラハドは主の気配を辿って走っていった。
通常、箱庭が発動していると国王達が出来なかったように、気配はまるで感じられない。
しかし、それが出来るのはガラハドだからだった。
聖杯の"主選定"は、聖杯が選ぶのではなく、ガラハド自身がその者を主と認めて仕えることでリスクなしに力を発動できるから。
そして、その主と認めた相手との相性次第で力の解放率が変わるという代物であった。
ならば何故、防衛戦の時に代償を受けたのか…
それは、ガラハドの意識の問題だったからだ。
いつも力を使う際は仮契約状態で少し力が封じられているとは言え、
として、
"主としてユーグを護りたい"
という意思の下力を発揮していた。
しかし、防衛戦の時は、
"神の代理人であるユーグを護衛する"
という、主としての意識がない状態で力を発揮したからこそ、代償が現れたのだった。
「はぁ…はぁ…」
『その名を叫べ、英雄として、その相棒としてのあいつの真名を』
不思議と、頭の中にその声が聞こえた。
だが、その声と共に、俺は自然と口が開いた。
「──朝陽ィィィッ!」
「!?
なっ…何故、その名を…」
「朝陽、俺を護衛から外すってなら、
俺は相棒としてお前の横を常に歩くことにする!
こっからは俺の意思で行動すんだから、主としてのお前の命令は必要ねぇ!」
「なっ…分かっているのか!そんなことをすればお前は死ぬんだぞ!」
「関係ねぇ!俺の意思で俺の人生を歩む!
それこそが俺の意思であり、幸せだ!」
「…バカ野郎…お前…」
「ああ、大バカだ!だが、俺は大真面目だ!
朝陽、もうお前は離さねぇぞ!」
「…今度は執着かよ」
「執着でも、執念でも、俺は相棒としてこの命が尽きるまでお前のとなりで隣で同じ景色を見続ける!」
「…死ぬなよ、ガラハド。
死人を傍に置くことは出来ねぇ」
「もちろんだ!」
『よくぞ言った!それでこそ、英雄と言うものだ!
己の仲間は己が決める。
勇者は世界を、
英雄は誰かを護るために力を振るう!
英雄よ、聖杯は神の力を宿し、誰かを対象に力を発揮する!
それが主でも、相棒でも、恋人でも構わぬのだ!
ガハハハ!』
「「この声…まさか」」
『…あー、その…ごめん。実はその聖杯って、僕が武神に頼まれて作ったものだったんだけど…忘れちゃってて!』
「ゆ、ユグドラシル!それに、武神まで…」
「むっ…主神ユグドラシル!丁度いい機会だ!
こいつを転生させてくれたのは礼を言う!
だが、お前にこいつは渡さんぞ!」
そういってガラハドは俺を守るように後ろから抱き締めた。
『あはは、さすがにその仲を破るのは神としても難しいから、大丈夫だよ。
それに、女神が復活した今、1箇所以外の魔力溜まりがほぼ弱体化されたからね』
「1箇所?」
「朝陽、多分魔王城だ。魔王は常に魔素を生み出しているからな。
だが、今世の魔王は生み出した魔素を取り込んで不老不死となって、魔王城付近だけで魔素を押し込めてるから、被害はないんだ」
「へぇ…って、知り合い?」
「ん?ああ。そりゃあ…冒険者時代に少しな。
俺と国王陛下、あと王妃と魔王の4人でパーティを組んでいたんだ。
まぁ、あと2人程居たが…今はどこに居るか知らない」
『ああ、それなら2人とも魔王城に住んでるよ。
さて…とりあえず、聖杯のお詫びとして力を強化しておいたよ。
それと…ユーグ君…いや、朝陽君。
過去を嘆くのは君の良いところでもあり、悪いところだ。
それがこの先どのような運命を辿るかは知らないけど…
幸せに生きてね?
僕達を楽しませるために』
「…楽しませるかは知らないが、幸せなら…こいつとなら孤独は感じないだろうな」
『稀代の英雄よ。その力は、そやつと共に歩むために使え。
それとな…
これはお前にしか聞こえぬが、聖杯はあらゆるものを吸収して作られた。
それが、闇としても光としてもな…
暗殺の力もあるから、相棒を護るために使うのも良しだ』
『なに暗殺を薦めてるんだ、武神。
はぁ…まぁ、そういうことだから。何かと色んな力を吸収してるから、やりたいことを見つけたら試しに聖杯を起動させてみて。
それと…聖杯は、形と大きさを自由に変えてノーリスクで顕現させられるから、それも有効活用してみてね』
「…あ、ああ」
「男は皆、誰かに弱みを見せるのが苦手ですから。
子は親に似るとはいいますが、まさかこんな所まで似てしまうとは思いませんでしたけどね」
「うっ…」
「…ガラハド、あなた…自分の2つ名忘れたのかしら?」
「2つ、名?…そんなものあったか?」
「…あら、私達が冒険者をしていた時期に付けられていたじゃない。
魔物は全て薙ぎ倒し、懐いた者には優しい反面、そうでない者に対しては常に威圧をしていた姿から付いた2つ名…
まさに、"狂犬"」
「なっ…」
「あの時の私達に着いてきてくれたガラハドが恋しいわ。
あの時はまだ頼りだったのに…いつの間にこんな何も出来ないおじさんになってしまったのかしら」
「お、れは…」
「あら、それともなにかしら。
自分はもうこれでいいんだ~って諦めるのかしら?
あらあら、騎士ともあろうものがその程度の忠誠心で働いてるなんて…そこら辺の一般騎士と同じねぇ?
近衛騎士の称号もなくしちゃいそうね?」
「俺は…そんな不甲斐ない男じゃねぇ!
聞いてれば散々言いやがって…良いぜ、今すぐユーグを捕まえてきてやるよ!」
そういってガラハドは城の外へと、大広間から飛び出した。
「…あなた、昔から説得下手ね。
言葉は良いのだけれど、使い方が悪いわ」
「…そういうお前はあいつの扱いが上手いな。
流石、狂犬を飼い慣らす"女王"と呼ばれたまで──バシッ」
「失敬な」
「…すまん」
箱庭が発動していても、ガラハドは主の気配を辿って走っていった。
通常、箱庭が発動していると国王達が出来なかったように、気配はまるで感じられない。
しかし、それが出来るのはガラハドだからだった。
聖杯の"主選定"は、聖杯が選ぶのではなく、ガラハド自身がその者を主と認めて仕えることでリスクなしに力を発動できるから。
そして、その主と認めた相手との相性次第で力の解放率が変わるという代物であった。
ならば何故、防衛戦の時に代償を受けたのか…
それは、ガラハドの意識の問題だったからだ。
いつも力を使う際は仮契約状態で少し力が封じられているとは言え、
として、
"主としてユーグを護りたい"
という意思の下力を発揮していた。
しかし、防衛戦の時は、
"神の代理人であるユーグを護衛する"
という、主としての意識がない状態で力を発揮したからこそ、代償が現れたのだった。
「はぁ…はぁ…」
『その名を叫べ、英雄として、その相棒としてのあいつの真名を』
不思議と、頭の中にその声が聞こえた。
だが、その声と共に、俺は自然と口が開いた。
「──朝陽ィィィッ!」
「!?
なっ…何故、その名を…」
「朝陽、俺を護衛から外すってなら、
俺は相棒としてお前の横を常に歩くことにする!
こっからは俺の意思で行動すんだから、主としてのお前の命令は必要ねぇ!」
「なっ…分かっているのか!そんなことをすればお前は死ぬんだぞ!」
「関係ねぇ!俺の意思で俺の人生を歩む!
それこそが俺の意思であり、幸せだ!」
「…バカ野郎…お前…」
「ああ、大バカだ!だが、俺は大真面目だ!
朝陽、もうお前は離さねぇぞ!」
「…今度は執着かよ」
「執着でも、執念でも、俺は相棒としてこの命が尽きるまでお前のとなりで隣で同じ景色を見続ける!」
「…死ぬなよ、ガラハド。
死人を傍に置くことは出来ねぇ」
「もちろんだ!」
『よくぞ言った!それでこそ、英雄と言うものだ!
己の仲間は己が決める。
勇者は世界を、
英雄は誰かを護るために力を振るう!
英雄よ、聖杯は神の力を宿し、誰かを対象に力を発揮する!
それが主でも、相棒でも、恋人でも構わぬのだ!
ガハハハ!』
「「この声…まさか」」
『…あー、その…ごめん。実はその聖杯って、僕が武神に頼まれて作ったものだったんだけど…忘れちゃってて!』
「ゆ、ユグドラシル!それに、武神まで…」
「むっ…主神ユグドラシル!丁度いい機会だ!
こいつを転生させてくれたのは礼を言う!
だが、お前にこいつは渡さんぞ!」
そういってガラハドは俺を守るように後ろから抱き締めた。
『あはは、さすがにその仲を破るのは神としても難しいから、大丈夫だよ。
それに、女神が復活した今、1箇所以外の魔力溜まりがほぼ弱体化されたからね』
「1箇所?」
「朝陽、多分魔王城だ。魔王は常に魔素を生み出しているからな。
だが、今世の魔王は生み出した魔素を取り込んで不老不死となって、魔王城付近だけで魔素を押し込めてるから、被害はないんだ」
「へぇ…って、知り合い?」
「ん?ああ。そりゃあ…冒険者時代に少しな。
俺と国王陛下、あと王妃と魔王の4人でパーティを組んでいたんだ。
まぁ、あと2人程居たが…今はどこに居るか知らない」
『ああ、それなら2人とも魔王城に住んでるよ。
さて…とりあえず、聖杯のお詫びとして力を強化しておいたよ。
それと…ユーグ君…いや、朝陽君。
過去を嘆くのは君の良いところでもあり、悪いところだ。
それがこの先どのような運命を辿るかは知らないけど…
幸せに生きてね?
僕達を楽しませるために』
「…楽しませるかは知らないが、幸せなら…こいつとなら孤独は感じないだろうな」
『稀代の英雄よ。その力は、そやつと共に歩むために使え。
それとな…
これはお前にしか聞こえぬが、聖杯はあらゆるものを吸収して作られた。
それが、闇としても光としてもな…
暗殺の力もあるから、相棒を護るために使うのも良しだ』
『なに暗殺を薦めてるんだ、武神。
はぁ…まぁ、そういうことだから。何かと色んな力を吸収してるから、やりたいことを見つけたら試しに聖杯を起動させてみて。
それと…聖杯は、形と大きさを自由に変えてノーリスクで顕現させられるから、それも有効活用してみてね』
「…あ、ああ」
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