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第一章
佐藤医師の危険な博打
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「…そうか。
ところで天童、君の美学は……甘い。
実にもったいない」
佐藤は唇を吊り上げ、歪んだ笑みを浮かべて台座へ近づいた。
これは、賭けだ。
天童が佐藤の話に食いつくか、どうかの。
天童が訝しげに眉を寄せる。
「甘いだと? 私の最高傑作に対して随分な口を利くじゃないか、佐藤先生」
「ああ、甘い。君のしていることは、ただの皮膚の装飾だ。
……私なら、彼の神経そのものと銀を対話させ、より深い、本質的な悦びを抽出できる」
佐藤は迷うことなく、四つん這いで震える黒崎の背後に膝をついた。
そして血と脂に濡れた八つのリングが密集する最奥に、手袋越しではない素手を伸ばした。
「失礼、少しだけ『調整』させてもらうよ」
佐藤は囁くと、密集するリングの一つを、あえて肉の奥深くへと強引に押し込み、抉るように捻り上げた。
「あ、が……っ、あああああああああああああああああああッ!!!」
部屋の空気を切り裂くような、黒崎の凄絶な叫び。
これまでの天童の蹂躙とは違う、急所の神経を的確に突き刺す「医師」ならではの無慈悲な一撃。
黒崎の身体は極限まで弓なりに反り返り、鎖骨の鎖がガシャンと激しい音を立てた。
白目を剥き、よだれを垂らしながら、彼はあまりの痛みに意識を飛ばしかける。
「……ほう」
天童の瞳に、好奇の光が宿った。
佐藤は構わず、今度は別のリングを押し込み、黒崎の尊厳を土足で踏み荒らすような手つきでその肢体を弄んで見せた。
「聞こえるか、天童。
この悲鳴の混じり方……これこそが、銀が肉と完全に融和しようとしている音だ。
君の生ぬるい管理では、この領域には辿り着けない」
佐藤は黒崎の髪を乱暴に掴み上げ、涙と鼻水に塗れたその顔を観客に晒した。
「これを見ろ。……この絶望。
これこそが、君が求めていた『完成』ではないのか?」
会場の富豪たちは佐藤の豹変した姿に戦慄し、同時にその鮮やかな加虐に陶酔していた。
天童は自分以外の人間が黒崎からこれほどまでの反応を引き出したことに、激しい嫉妬と、それ以上の興奮を覚えた。
「……面白い。佐藤先生、君がこれほどまでに『こちら側』の人間だったとは。
君の手でこの最高傑作がどう化けるか……確かに興味がある」
佐藤は冷徹な視線を天童に向け、トドメの一言を放った。
「だからこそ、私に譲れと言っているんだ。この素材をこれ以上腐らせたくない。
……さあ、言い値を言え。
私は、彼という究極の検体を手に入れるためなら、全財産を投げ打っても構わない」
天童はゆっくりと鎖を離した。
チャリ、と音を立てて鎖が床に落ちる。
「いいだろう。そこまで言うのなら、譲ってあげようじゃないか。
……ただし、次に会う時、彼がさらに美しくなっていなければ承知しないよ?」
「……約束しよう」
佐藤は震える手で、気絶しかけている黒崎の身体を抱き寄せた。
心の中では、黒崎の身体から立ち上る血の匂いと自分が今加えた痛みの感触に、嘔吐しそうなほどの自責の念が渦巻いていた。
しかし佐藤の腕の中で力なく垂れる黒崎を、彼は誰にも見えないように、強く、強く抱きしめた。
ところで天童、君の美学は……甘い。
実にもったいない」
佐藤は唇を吊り上げ、歪んだ笑みを浮かべて台座へ近づいた。
これは、賭けだ。
天童が佐藤の話に食いつくか、どうかの。
天童が訝しげに眉を寄せる。
「甘いだと? 私の最高傑作に対して随分な口を利くじゃないか、佐藤先生」
「ああ、甘い。君のしていることは、ただの皮膚の装飾だ。
……私なら、彼の神経そのものと銀を対話させ、より深い、本質的な悦びを抽出できる」
佐藤は迷うことなく、四つん這いで震える黒崎の背後に膝をついた。
そして血と脂に濡れた八つのリングが密集する最奥に、手袋越しではない素手を伸ばした。
「失礼、少しだけ『調整』させてもらうよ」
佐藤は囁くと、密集するリングの一つを、あえて肉の奥深くへと強引に押し込み、抉るように捻り上げた。
「あ、が……っ、あああああああああああああああああああッ!!!」
部屋の空気を切り裂くような、黒崎の凄絶な叫び。
これまでの天童の蹂躙とは違う、急所の神経を的確に突き刺す「医師」ならではの無慈悲な一撃。
黒崎の身体は極限まで弓なりに反り返り、鎖骨の鎖がガシャンと激しい音を立てた。
白目を剥き、よだれを垂らしながら、彼はあまりの痛みに意識を飛ばしかける。
「……ほう」
天童の瞳に、好奇の光が宿った。
佐藤は構わず、今度は別のリングを押し込み、黒崎の尊厳を土足で踏み荒らすような手つきでその肢体を弄んで見せた。
「聞こえるか、天童。
この悲鳴の混じり方……これこそが、銀が肉と完全に融和しようとしている音だ。
君の生ぬるい管理では、この領域には辿り着けない」
佐藤は黒崎の髪を乱暴に掴み上げ、涙と鼻水に塗れたその顔を観客に晒した。
「これを見ろ。……この絶望。
これこそが、君が求めていた『完成』ではないのか?」
会場の富豪たちは佐藤の豹変した姿に戦慄し、同時にその鮮やかな加虐に陶酔していた。
天童は自分以外の人間が黒崎からこれほどまでの反応を引き出したことに、激しい嫉妬と、それ以上の興奮を覚えた。
「……面白い。佐藤先生、君がこれほどまでに『こちら側』の人間だったとは。
君の手でこの最高傑作がどう化けるか……確かに興味がある」
佐藤は冷徹な視線を天童に向け、トドメの一言を放った。
「だからこそ、私に譲れと言っているんだ。この素材をこれ以上腐らせたくない。
……さあ、言い値を言え。
私は、彼という究極の検体を手に入れるためなら、全財産を投げ打っても構わない」
天童はゆっくりと鎖を離した。
チャリ、と音を立てて鎖が床に落ちる。
「いいだろう。そこまで言うのなら、譲ってあげようじゃないか。
……ただし、次に会う時、彼がさらに美しくなっていなければ承知しないよ?」
「……約束しよう」
佐藤は震える手で、気絶しかけている黒崎の身体を抱き寄せた。
心の中では、黒崎の身体から立ち上る血の匂いと自分が今加えた痛みの感触に、嘔吐しそうなほどの自責の念が渦巻いていた。
しかし佐藤の腕の中で力なく垂れる黒崎を、彼は誰にも見えないように、強く、強く抱きしめた。
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