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しおりを挟むデュクセルの誕生祭当日。
私はお父様とお母様と一緒に、モーフェット家の馬車で皇宮に向かった。
リエッタもお父様もお母様も、みんな私のチェリーレッドのドレスをよく似合っていると褒めてくれて、気分は上々だった。
「それにしても、シェリーは赤も似合うのね」
「お母様譲りの髪色と、お父様譲りの瞳の色に、赤はピッタリみたいですわ」
母は艶のある淡いピンクの髪色と、父のバイオレットの瞳を、私は綺麗に受け継いでいる。
「招待状を確認させていただきます」
皇宮の門の前で、守衛に招待状を見せようとして、守衛が先に気付く。
「……!モーフェット公爵家のみなさま、お待ちしておりました。ご案内致します」
このままきっと、一家共々陛下のもとに案内される。そしてそこにはヴァージルもいるだろう。
(……こればっかりは、仕方ないわね……)
「帝国の輝かしい太陽にご挨拶申し上げます」
皇帝、皇后、そして皇子たちがいる場所に直接案内された私たちは、頭を下げる。
「よいよい、そんなに堅苦しくするな」
皇帝の「頭を上げよ」という言葉で、私たちは全員顔をあげる。
「デュクセル殿下、お誕生日おめでとうございます」
お父様がプレゼントを渡すと、デュクセルは表情を明るくしながら、「ありがとうございます!」と礼儀正しく返事する。
「デュクセルももう13歳ですから、そろそろ……」
皇后がちらりと私を見る。
(え……?)
前回はこんなやり取りなかった。今の言い方では、まるで私をデュクセルの婚約者候補にしようとしているようではないか。
でも……ヴァージルには殺されたけど、デュクセルはそんな人じゃないかもしれない。……気は進まないけど、どうせ結婚するならヴァージルよりデュクセルのほうがマシなのかもしれないわ。
モーフェット公爵家は帝国随一の公爵家。嫁ぎ先といえば他国の大貴族か、皇室かくらいだ。であれば、私を可愛がってくれている皇后陛下の元にいるのは悪くないかも。
……ヴァージルも、きっと結婚することにさえならなければ、私を殺すことはないだろうし。
「あの、シャロン嬢、良ければジャックスの遊び相手をしてもらえませんか?」
デュクセルの突然の提案に、反射的に「え!?」と声を上げてしまう。
「陛下たちや私はずっと貴賓の対応をしないといけませんし、兄上1人では心配で……」
(わ、私とヴァージルで面倒を見ろって!?)
動揺を隠せず視線を泳がせていると、皇后が困ったように目を細める。
「デュクセル、お客様を困らせてはなりませんよ。ヴァージルだって、1人でジャックスを見ることが出来るわ」
そうだそうだ。ヴァージルより幼いデュクセルが面倒を見れるんだから、ヴァージルにだってできて当たり前よ!
皇后の言葉にうんうんと頷いていると、焦ったように声を上げた男がいた。
「いや……!」
その男こそ、ヴァージルだった。
「……人の多いところでジャックスを見るのは、1人では難しいかもしれません」
(う、嘘でしょ……!?)
私は助けを求めるように両親に視線を向ける。お母様はおろおろとしていたが、お父様は黙ってじっと私を見ている。
「私からも頼むよ、公爵。シャロン嬢を借りても構わないか?」
ダメ押しの陛下の一言で、お父様も頷かざるを得なかった。
「……シャロン、相手は皇子殿下だから、気を付けるんだぞ」
「は、はい……」
避けるどころか、一緒にいることになってしまった。言いようもない不安を抱えながら、私の手を握るジャックスに笑顔を向ける。
「シャロンねえさま!」
「殿下、私の事はシャロンとお呼びください」
「シャロン?」
「はい、殿下」
その様子をじっと見つめる視線が、居心地悪い。何故ヴァージルは、あの場で断らずに……。
「ジャックス、シャロンに美味しいものを持ってきてあげようか」
「!?」
ヴァージルのその言葉に、ジャックスがパッと手を離す。
「うん!シャロン、ここのご飯はおいしいんだ!いっぱい持ってくるから、待ってて!」
ヴァージルがジャックスの手を引いて、軽食のあるテーブルに向かって歩いていく。……1人で、面倒見れるんじゃない……。
仕方なく壁際で待っていると、従兄のアモンド=ルウェリンが近付いてくるのが見えた。こちらに向かって片手を上げている。
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