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第1章3部【中央大陸招待編〜アンテズ村を救え〜】
第22話【The・冒険者〜俺たち、村救うってよ〜】
しおりを挟む「い、今なんて言った……?」
俺はあまりに予想外過ぎたお姉さんのセリフにそう問い返す。今のが本当なんだとしたら――
「中央大陸が皆様に出した依頼は、ひとつの村を救うことです。」
再びお姉さんはそう静かに告げる。
やはり俺の耳は間違っていなかったみたいだった。
いや、正直なところ間違っていて欲しかったが。
「む、村を救うですって!?なによそのThe・冒険者みたいな依頼!!」
「すごく面白そうじゃねぇか!!」
「うんうん!私その依頼したい!!」
ほらな……このバカ女3人組がそんなまるで英雄がするような依頼をチラつかせて、食いつかない訳がねぇんだ。
はぁ……俺はこの世界で平々凡々暮らしたいんだけどな……
「み、皆様……?」
「お姉さん、こうなった以上もうこいつらの気持ちは変わらんよ。」
俺は受け付けカウンターに肘を置いてもたれ掛かると、虚ろな目をして完全に村救うムードになっている3人を見る。
はぁ、こりゃ確定だな。
「と、とりあえず話を聞いてくださいッ!!」
「――え?あぁ!ごめんごめん!」
「つい盛り上がっちまったぜ。」
「うんうん」
ほらみたか。普段から滅多に大声を上げないお姉さんが叫んだじゃねぇか。
こいつらは楽しいかもしれんが、村を救うって本当に簡単な事じゃねぇんだぞ?(ゲームでも村を救い終わるまではなかなかに長いしな!)
「――皆様はテンションが上がっているかも知れませんが……私は実は反対なんですよ?中央大陸のギルドから来たこの依頼を受けるのは。」
「え?なんでなんで?」
「なんでってそりゃ、危険が伴うからに決まってるだろ。」
こいつらには危険とか怖いとか、そういうのを感じる機能が備わってないのか?
はぁ……でもまぁ、今そう言った俺が言う事じゃ無いかもしれんが――
「でもよ、お姉さんの心配する気持ちは分かるが、俺たちはその依頼を受けるぜ。」
視線をしっかりと合わせてそう言う。
「――えっ?とうま様はあまり乗り気じゃ無かった様な気がするのですが。」
「ま、もちろん乗り気じゃねぇわな。正直なところめちゃくちゃ怖いし。」
もっと言ったらなんでラペルの冒険者である俺がよその村を救わなきゃならんのだ。って思ってる。
今のを聞いて、こんな考えを持ってるやつが冒険者なんてすんじゃねぇ!!って思ったやつもいるかもしれんが。
この際にはっきり言っておく。俺は度を超えたお人好しでも無ければ聖人君子でも無い。
ただの元ヒキニートだ。
だからハイリスクノーリターンの事を優しさだけでしたりはしない。(それが身内や大切な人なら変わるかもしれないが)
「でもよ――」
それを言っておいた上で、
「俺の大切な仲間がこうやって言ってる以上、リーダーであるこの俺がそれを止める事なんて出来ねぇからな。」
超ナイスな顔をキラキラ光らせてこの場にいる全員に聞こえるように言ってやったよ。
どうだ?こりゃ全員惚れたな。
しかし、それの直後に、
「え?リーダーは私じゃないの?」
「何言ってんだよ?リーダーは私だろ?」
「いや、この私がリーダーだよ!!」
「「それは無い!!」」
3人は俺の事なんてフル無視で、誰がリーダーかを争い始めやがった。
はぁ……こいつらなぁ。話題がコロコロ変わりやがる。
「こいつらは全く……」
「ふふっ」
「ん?」
俺が振り向くと、さっきまで真剣な表情をしていたお姉さんが今のやり取りを見てか、笑っていた。
「すいません、私、間違ってたみたいですね。」
「何がだ?」
首を傾げながらそう聞く。
「今の皆様ならきっと大丈夫ですよね。」
「あぁ、そういう事か。あったりめぇよ!」
俺は調子に乗って胸を叩く。
「では、皆様に救って貰う「アンテズ村」の方に、明日馬車で向かいに来てもらうように連絡をしておきますので、今日はもうお休みになって下さい。」
こうして俺たちは、中央大陸から来た依頼を引き受ける事となった。
---
「ん~ふぅ!気持ちの良い朝だぜ!」
「今日は朝から機嫌が良いじゃない」
「あったりまえだ!何しろ今日は朝の地獄トレーニング無しなんだからな!」
「ならしますか?」
「いやいやいやいや!!絶対無理!!」
ウェーナの家の中庭で、俺たちはそんな会話を交わす。
今は村を救う依頼を受けた次の日の朝だ。
あの後、お姉さんの言う通りに家に帰った俺たちは、なんとそれならとまたトレーニングさせられたんだぜ?どう思うよ?
まぁそのおかげもあって、今日の朝はトレーニング無しになったのだが。
だがまぁとりあえずそれはどうでも良いッ!!
今日は村から俺たちを迎えに馬車が来るのだ。早めに準備をしておかないとな。
「なぁ、昨日お姉さんは馬車が来るのは朝だって言ってたよな?」
「うん、そうね。」
「よし、じゃあ早めに朝ごはん食べて、準備しますかね。」
---
そうしている内に時間は過ぎ――
「よし、準備オッケー!」
「私もだ!」「私もー!」
「よし、じゃあ待ち合わせ場所まで行くとしますかね。」
今は、武器等を持ち終わり、ウェーナの家を出たところだ。
なんかこの感じ、すごく遠足前って感じがするぜ。
内容は全然違うのだが。
「では、皆さん気をつけて頑張って来て下さい。」
「おう!」「あぁ!」「うん!」
「じゃ、言って来るわね。」
こうして俺たち4人は、ウェーナの家を出発した。
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