【完結】転生したのは俺だけじゃないらしい。〜同時に異世界転生した全く知らない4人組でこの世界を生き抜きます(ヒキニートは俺だけ)〜

カツラノエース

文字の大きさ
23 / 88
第1章3部【中央大陸招待編〜アンテズ村を救え〜】

第22話【The・冒険者〜俺たち、村救うってよ〜】

しおりを挟む

「い、今なんて言った……?」

 俺はあまりに予想外過ぎたお姉さんのセリフにそう問い返す。今のが本当なんだとしたら――

「中央大陸が皆様に出した依頼は、ひとつの村を救うことです。」

 再びお姉さんはそう静かに告げる。
 やはり俺の耳は間違っていなかったみたいだった。
 いや、正直なところ間違っていて欲しかったが。

「む、村を救うですって!?なによそのThe・冒険者みたいな依頼!!」
「すごく面白そうじゃねぇか!!」
「うんうん!私その依頼したい!!」

 ほらな……このバカ女3人組がそんなまるで英雄がするような依頼をチラつかせて、食いつかない訳がねぇんだ。
 はぁ……俺はこの世界で平々凡々暮らしたいんだけどな……

「み、皆様……?」
「お姉さん、こうなった以上もうこいつらの気持ちは変わらんよ。」

 俺は受け付けカウンターに肘を置いてもたれ掛かると、虚ろな目をして完全に村救うムードになっている3人を見る。
 はぁ、こりゃ確定だな。

「と、とりあえず話を聞いてくださいッ!!」
「――え?あぁ!ごめんごめん!」
「つい盛り上がっちまったぜ。」
「うんうん」

 ほらみたか。普段から滅多に大声を上げないお姉さんが叫んだじゃねぇか。
 こいつらは楽しいかもしれんが、村を救うって本当に簡単な事じゃねぇんだぞ?(ゲームでも村を救い終わるまではなかなかに長いしな!)

「――皆様はテンションが上がっているかも知れませんが……私は実は反対なんですよ?中央大陸のギルドから来たこの依頼を受けるのは。」
「え?なんでなんで?」
「なんでってそりゃ、危険が伴うからに決まってるだろ。」

 こいつらには危険とか怖いとか、そういうのを感じる機能が備わってないのか?
 はぁ……でもまぁ、今そう言った俺が言う事じゃ無いかもしれんが――

「でもよ、お姉さんの心配する気持ちは分かるが、俺たちはその依頼を受けるぜ。」

 視線をしっかりと合わせてそう言う。

「――えっ?とうま様はあまり乗り気じゃ無かった様な気がするのですが。」
「ま、もちろん乗り気じゃねぇわな。正直なところめちゃくちゃ怖いし。」

 もっと言ったらなんでラペルの冒険者である俺がよその村を救わなきゃならんのだ。って思ってる。
 
 今のを聞いて、こんな考えを持ってるやつが冒険者なんてすんじゃねぇ!!って思ったやつもいるかもしれんが。
 この際にはっきり言っておく。俺は度を超えたお人好しでも無ければ聖人君子でも無い。

 ただの元ヒキニートだ。
 だからハイリスクノーリターンの事を優しさだけでしたりはしない。(それが身内や大切な人なら変わるかもしれないが)

「でもよ――」
 それを言っておいた上で、
「俺の大切な仲間がこうやって言ってる以上、リーダーであるこの俺がそれを止める事なんて出来ねぇからな。」

 超ナイスな顔をキラキラ光らせてこの場にいる全員に聞こえるように言ってやったよ。
 どうだ?こりゃ全員惚れたな。

 しかし、それの直後に、

「え?リーダーは私じゃないの?」
「何言ってんだよ?リーダーは私だろ?」
「いや、この私がリーダーだよ!!」
「「それは無い!!」」

 3人は俺の事なんてフル無視で、誰がリーダーかを争い始めやがった。
 はぁ……こいつらなぁ。話題がコロコロ変わりやがる。

「こいつらは全く……」
「ふふっ」
「ん?」

 俺が振り向くと、さっきまで真剣な表情をしていたお姉さんが今のやり取りを見てか、笑っていた。

「すいません、私、間違ってたみたいですね。」
「何がだ?」

 首を傾げながらそう聞く。

「今の皆様ならきっと大丈夫ですよね。」
「あぁ、そういう事か。あったりめぇよ!」

 俺は調子に乗って胸を叩く。

「では、皆様に救って貰う「アンテズ村」の方に、明日馬車で向かいに来てもらうように連絡をしておきますので、今日はもうお休みになって下さい。」

 こうして俺たちは、中央大陸から来た依頼を引き受ける事となった。

 ---

「ん~ふぅ!気持ちの良い朝だぜ!」
「今日は朝から機嫌が良いじゃない」
「あったりまえだ!何しろ今日は朝の地獄トレーニング無しなんだからな!」
「ならしますか?」
「いやいやいやいや!!絶対無理!!」

 ウェーナの家の中庭で、俺たちはそんな会話を交わす。

 今は村を救う依頼を受けた次の日の朝だ。
 あの後、お姉さんの言う通りに家に帰った俺たちは、なんとそれならとまたトレーニングさせられたんだぜ?どう思うよ?

 まぁそのおかげもあって、今日の朝はトレーニング無しになったのだが。

 だがまぁとりあえずそれはどうでも良いッ!!
 今日は村から俺たちを迎えに馬車が来るのだ。早めに準備をしておかないとな。

「なぁ、昨日お姉さんは馬車が来るのは朝だって言ってたよな?」
「うん、そうね。」
「よし、じゃあ早めに朝ごはん食べて、準備しますかね。」

 ---

 そうしている内に時間は過ぎ――

「よし、準備オッケー!」
「私もだ!」「私もー!」
「よし、じゃあ待ち合わせ場所まで行くとしますかね。」

 今は、武器等を持ち終わり、ウェーナの家を出たところだ。
 なんかこの感じ、すごく遠足前って感じがするぜ。
 内容は全然違うのだが。

「では、皆さん気をつけて頑張って来て下さい。」
「おう!」「あぁ!」「うん!」
「じゃ、言って来るわね。」

 こうして俺たち4人は、ウェーナの家を出発した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...