24 / 88
第1章3部【中央大陸招待編〜アンテズ村を救え〜】
第23話【到着〜初めての馬車〜】
しおりを挟むウェーナの家を出発してからしばらく歩くと、俺たちは迎えの馬車との待ち合わせ場所となるラペルもうひとつの出入り口へと到着した。
今までずっと依頼を受けた時などはいつもの出入り口を使ってたからここに来るのは初めてなんだが、方向的には初めて受けた依頼の目的地、メディー牧場と一緒だ。
だから来た方向から見て、左側には山が見え、出入り口から続く砂利道は山沿いに続いていた。
「まだ馬車は来ていないみたいね。」
「そうだな、とりあえずあのベンチで座って待っとくか。」
「だな」「うん」
俺たちはまだ馬車の姿がない事を確認すると、出入り口からすぐ近くに設置されていたベンチに腰を下ろした。
ふぅーッ!やっぱりこれくらいの距離を歩けば体力関係なく疲れるもんだな。
俺はベンチに座るとすぐに、手足を伸ばして息を吐く。
すると、そこでちなつが今更な事を言い出した。
「今思ったけどよ――私らはまだ下級上位なのに、どうやってこの依頼で中級上位まで上げるんだろうな?」
「確かにな――まぁ依頼してきたのは中央大陸のギルドなんだし、その権利で何とかすんじゃねぇの?」
一応説明しておくと、中央大陸という強者が集まる大陸に入るには「等級中級上位以上」が条件なのだ。
なのに、まだ下級上位な俺たちを招待してきやがった。
しまいには等級を上げるために村を救えと――一体中央大陸の冒険者ギルドは何故にそこまでして俺たちを招き入れたいんだよ。
「ま、どの道この依頼で中級上位まで上がれるんなら良いじゃない。」
「私もそう思うよ!」
たく……お気楽な奴らだぜ。
するとそこで、出入り口から続く砂利道の向こうから、馬の足音と車輪が回る音が聞こえてきた。
「お、来たんじゃねぇのか。」
するとその音はどんどん大きくなっていき――
「お待たせ致しました。遅れてすいません、ラペルに来るのは初めてなもので。」
馬2頭が引っ張る、布の屋根が付いた馬車が出入り口に到着した。
「いや、全然待ってないから大丈夫だぜ。」
馬車を引っ張っている馬のすぐ後ろで2頭の手網を持っている村人にそう返す。――って、そんな事はどうでも良いんだが――
俺は目の前に現れた馬車に釘付けだった。
だってよ!あまりにもその見た目がファンタジーすぎるんだって!
なんかこれぞファンタジーって感じ!
そんな馬車に他の3人も、
「これは凄いわね……!」
「初めて見たぜ」
「わぁ!お馬さんだ!ギャンブルしたくなってきたぁ!」
なんかくるみだけ違う捉え方をしているような気がするんだが……
やっぱりいつもこんなロリな見た目を見てたら時々こいつが職業ギャンブラーなんて自分で言ってしまう程のギャンブル中毒って事を忘れちまうな。
「皆さん?乗らないんですか?」
「あ、あぁ!乗るぜ!」
この世界では当たり前なのであろう馬車を前にして興奮する28歳男性。
こりゃ恥ずかしいところを見せちまったな。
俺たちはすぐに馬車の後ろ側に回ると、中に入り、壁にもたれ掛かる形で腰を下ろした。
「それじゃあ出発しますね。」
「頼む」「了解よ」「あぁ」「しゅっぱーつ!」
こうして俺たちは、ラペルから今回の依頼の舞台、「アンテズ村」へ出発した。
---
馬車が動き初めてから数十分、俺たちは目的地に着いた――なんて言えれば良かったのだが――
なんと今はあれから数時間後で、村に着いた頃にはもう夕方になっていた。――って!いくらなんでも掛かりすぎじゃねぇのか!?
「やっと着いたぜ……」
「長かったわね……」
「全くだ。」
「き、気持ち悪いよぉ……うっぷ……」
俺たちはヘロヘロになりながら数時間ぶりの地面を踏む。
なぜこんなことになったのかと言うと――途中までは順調に進めていたのだが、何しろ通っていたのは山に隣接した道だったために、土砂崩れが起きたらしく、遠回りを余儀なくされたんだよ。
いや、そのくらい少し横を通れば済むだろと言ったんだがな?馬車を動かしていた村人いわく、「草むらを馬車で進むと、車輪が草に巻き込まれて上手く進めない」のだそうだ。
だからって流石にここまで時間が掛かるとしんどくなっちまうぜ。
だが、やはりそんな俺たちに対して馬車を動かしていた村人も申し訳なさそうだった。
まぁ当然だよな、だって村を助けに来てくれた人達を速攻気持ち悪くさせてるんだもん。
「本当にすいませんでした。」
「いやいや、仕方ない事なんだから謝らなくていいって。」
「そうよそうよ」
まぁだが、今回のはこの人のせいじゃない。
だから俺たちは、謝ってくる村人にそう言った。
「ありがとうございます……では、早速村長の元へお連れしますので。」
「あぁ、頼む。」
こうしてアンテズ村に着き、速攻で疲れた俺たちは、村長の元へと歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~
ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」
魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。
本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。
ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。
スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる