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第1章3部【中央大陸招待編〜アンテズ村を救え〜】
第24話【村が抱える問題〜俺たちに任せろ!〜】
しおりを挟む俺たちが異世界転生してから初めて辿り着き、そして色々なことが起きた町、ラペル。
そんなラペルを山沿いに北へ進むと、海を隠すように生い茂っている森林と、長々と続く山脈に挟まれた小さな村、アンテズ村がある。
そこは人口100人弱の小さな村で、もちろん財力もある訳なく、この世界では必須の冒険者ギルドすらも無いのだ。――――という説明を今俺たちは、馬車でここまで運んでくれた村人から教えて貰っていた。
「――なるほどね。だからわざわざラペルから私たちが呼ばれたって訳かしら?」
「はい、正しくは私たちが呼んだのではなく、中央大陸のギルド様が皆さんを呼んだのですが。」
「ふ~ん。ま、そこはどうでも良いわ。」
「どうでも良い――ですか……?」
「えぇ、どの道私たちが救いに来たって事は変わらないものね!」
みさとは笑顔で拳を天に伸ばしながらそう言う。
まるで百戦錬磨のパーティーが村を救いに来たぞと言わんばかりに。
「……ん?」
だが、その時俺は先程の2人の会話の中に違和感を感じた。
私たちが呼んだのでは無く、中央大陸のギルドが呼んだってどういうことだ……?
だって、普通に考えてまず大陸も違う冒険者ギルドが、他の大陸の、もっと言えばギルドすら無い村の抱えている問題をどうやって知り、それをラペルのギルドに伝えたんだよ。
(この考えでいくと、逆にこの村から向こうに伝えることも出来ないだろうからな。)
アンテズ村からラペルに馬車で伝えに来たなら全然分かる話ではあるのだが。
「なぁ、でもよ、どうやって中央大陸の連中はこの村が抱えている問題を知って、それを俺たちに伝えたんだ?」
一度気になったらそれが仮に超ネタバレになったとしてもネットで調べてしまう俺は、前を歩く村人にそう尋ねる。
すると村人は、
「あぁ、それはですね――」
まるで先に言っていなかった自分に非があったような言い方でこう続けた。
「実は中央大陸から定期的に来る船が、この村の近くにある港に止まるんです。それで前来た時に渡した今の状況を綴った紙を見て、皆さんをここに呼んだのかと。」
「そうだったのか。」
「はい。」
「でもよ?言っちゃ悪いかもしれんがなんでこんな何も無さそうなところに中央大陸からの船が来るんだ?」
次に沸いた疑問はこれだった。
海が近いってのもあるかも知れんが――なんかこう、もっと他にありそうな気がしないか?
「詳しい事は自分も分かりませんが、どうやらあの山々には強いモンスターが居るのだとか……おそらく中央大陸の冒険者の方たちは、そのモンスターを狩るために、山に近いこの場所を選んだんじゃ無いんですかね?」
村人はラペルからこっちまでずっと続いている長い山脈を見ながらそう言う。
「え?この山ってモンスター出るのか?」
なんか見た感じごっつごつでモンスターどころか生き物が住んでいる気がしないのだが。(草木も全然生えてないしな。)
「本当に噂で聞いたくらいですので、定かかどうかは分かりませんけどね。」
「そうか。」
ま、どの道そんな危なっかしいところには意地でも行きたくないね。
もしそんなところに自分から行くなんて言った日にゃあ――それは俺のなかの何かが大きく変わった時だろうよ。
あーあ、怖い怖い。
するとそんな話をしている間に、どうやら向かっていた場所に着いたらしい。
先を歩いていた村人は、この村に来るまでの砂利道となんら変わりのない雑に作られた道を「ザザッ」という音を足で鳴らしながら止まり、俺たちの方を振り返ると、こちらから見て右側にある木と石で作られた質素な家の方に手を伸ばし、
「着きました。ここが村長の住まわれている家です。」
そう言った。
「ここか。」
「村長の家にしては質素だな。」「だね。」
「お前らな……」
おいおい、コイツら村長さんの家の前で何言ってんだよ。
よし、ここはリーダーであるこの俺が叱らないとだな。
「逆にこんなちっこい村の村長の家に何期待してんだよ!」
「とうま!それが一番酷いわッ!」
「イテッ!?」
コツン、ちなつとくるみを叱ったはずの俺が何故かみさとに頭をこつかれた。
えぇ?なんか俺今変なこと言ったか?
「と、とにかくッ!!目的の場所に着いたんだから中に入るぞ!」
「はぁ……そうね。」「だな」「うんうん」
そんな俺たちの会話を、村長の家の扉を開けたまま気まずそうに聞いていた村人に気づいてしまった俺は、急いで3人を促す。
こうして俺たちは、村長の家へと足を踏み入れた。
---
「お邪魔しまーす……」
俺は控えめな声を出しながら部屋の中へ入る。
すると、やはり内装は外から見た通り大きくは無く、扉のすぐ前にテーブルと椅子が5つ。
右奥にはベッドがあって、左側には別の部屋(おそらくトイレ等)
台所は見た感じ無かった。
そして、そんなお世辞にも村の長の住まいとは思えない部屋の椅子にひとり、優しそうな老人が横に杖を立て掛けて座っていた。
「おぉ、皆様が我々の村を救いにきて下さった冒険者様ですか?」
「は、はい、一応。」
「とりあえず、座って下さい。」
俺たちは言われるがまま、椅子に座ることにした。
---
「まずは皆様、本当にこの村に来て頂きありがとうございます。」
「いえいえ」「とんでもないわ」
俺たちが各自席に着くと、村長(多分)は速攻で頭を下げて礼を言って来た。
あれ?まだ何もしてないんだが……?
「お礼は本当に大丈夫ですから、とりあえずこの村に何が起きているのかを教えて下さい。」
俺は苦笑いをしながら村長を促す。
ちなみに席の場所関係は、俺とみさと、ちなつとくるみが向かい合う形で長方形テーブルの長い辺に座っており、残りの村長が短い辺に座っているという形だ。(村長は俺の左側な。)
「あ、あぁ。そうじゃった。」
俺のセリフを聞いた村長は、それで思い出したかの様に頭を掻きながらそう言う。
そして、そこからこの村に起きている問題を話始めた。
「――ということなんじゃ……」
「なるほどな……」
話を聞き終えると、俺は真剣な声色でそう言う。
まず、この村に何が起きているのかを簡単に説明すると、
最近、どこからか現れたゴブリンが村で育てた食べ物を盗んだり、家畜を殺したり盗んだり――挙句の果てには村人に怪我をさせたりしているらしい。
そのせいで、ただでさえ食料不足なこの村は、最近本格的な食料不足に入って来ているのだそう。
更に、若者も少なく、ゴブリン対策も出来ずにいる。との事だ。(迎えに来てくれた村人も、アンテズ村の数少ない若者らしい)
「どうか救って頂けませんか……?」
村長は、腕を組んで真剣な表情をしている俺たちに、まるで神にすがっているような声でそう言ってくる。
――確かに、この依頼は受け付けのお姉さんが言っていた様に難しい依頼だな。
まず、この問題を止めるにはゴブリンの巣穴を叩き潰さないといけない。それに、なんにせよそのゴブリンの巣穴の場所が分からないという状況だ。
確実に今まで俺たちが受けてきた中の依頼よりもランクは上だった。(オーガ乱入は除く)
中級への昇級クエストって感じだぜ。
だが、俺たちはこの人たちを救いに来たんだ。
正直今も乗り気とは言えないが……ここまで来た以上出来る限りの事はするさ!
「おう!村長さん、任せといてくれ!」
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