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第1章3部【中央大陸招待編〜アンテズ村を救え〜】
間話【ラペルへ帰還〜みんなただいま〜】
しおりを挟む「――はぁぁっ!やりきったわねぇ!」
「本当だよな!オーガが出てきた時はどうなるかと思ったが!」
「無事に終わって本当に良かったよ~!」
いつもの美少女3人組が、馬車の荷台に腰を下ろして今日の出来事を談笑している。
今はアンテズ村での問題を全て解決した後、ラペルに帰っているところだ。
よし!じゃあとりあえず、ゴブリンの巣穴から出たところから、話して行くとするか。
---
「――はぁはぁ……ちょっととうま!?貴方が火を撒いたせいで私たち死ぬところだったじゃない!!」
「い、いや!マジでごめんって!」
俺は炎が広がるゴブリンの巣穴から何とか脱出した後、3人にそうずっと文句をブツブツ吐かれた。
――いや、今思ってもこれ理不尽じゃね?だって俺があの時火をオーガにぶつけなかったら倒せなかったかもしれないのにさぁ!(これはタラレバだから別に良いんだが)
しかし、それでも3人は、アンテズ村に帰るまでずっとブツブツ言ってやがった。
ほんっと、参っちまうぜ。
「今帰ったぞぉ!」
「おぉ!英雄たちが帰って来たぞ!」
「「うぉぉぉ!!」」
俺は村に帰ると、拳を天高らかに突き上げる。
すると、そんな俺たちを見て勝った事を確信したのであろう村人たちは、そう歓喜の声を上げた。
「皆様!本当に……本当にこの村を襲うゴブリンの巣穴を潰して下さったのですか……!」
「あぁ、オーガも出てきて、危なかったがな。」
村長のそんなセリフに俺は苦笑いをしながらそう返す。
するとその途端、村人全員が涙を流した。
それでその後、色々ともらった俺たちは、(っつってもお金は無いからって、くれたのはこの村で作る食べ物食べ放題券みたいなやつだったけどな。また機会があったら来るとするかね)馬車に乗り、今こうやってラペルに帰ってるって訳。
これがとりあえずの、簡単な後日談だ。
ゴブリンの巣穴の中にオーガがいたり、危うく自分が撒いた炎で死にかけたりしたが、結果的には2日間で依頼を完了させる事が出来たし、良かったんじゃねぇかなと俺は思う。
すると、そんな事を考えていた内にラペルに着いたらしい。
行きの時もお世話になった馬車を動かす村人が、俺たちに大きな声でこう言う。
「みなさん、ラペルに到着致しました。」
「おぉ、もう着いたのか」
「まだ馬車が動き初めて1時間くらいじゃない?」
「着くの、すごく早いな」
「行きの時は土砂崩れで遠回りを余儀なくされましたから」
皆さんがゴブリンの巣穴を制圧している間に、我々の方で道を綺麗にしていたんですよ。
村人は軽く笑いながらそう言う。
「そうだったのか、」
「戦っていたのは私たちだけじゃなかったって事ね」
「――だな」
その後、俺たちは馬車から降りると、送り迎えをしてくれた村人に礼を言い、再びアンテズ村村まで戻る馬車が見えなくなるまで、手を振り続けたのだった。
---
「じゃあ、ギルドに戻ってまずは報告しましょうか」
「そうだな」
馬車を見送った後、俺たちは無事依頼を終えた事を報告する為、早速冒険者ギルドに行くことにした。
「終わったぞ」「今帰ったわ」「ただいま」「たっだいま!」
俺たちは冒険者ギルドに入ると、いつも通りな雰囲気のみんなに挨拶をする。
全然離れて無かったのに、なんだか懐かしい気分になるぜ。
「おぉ!皆さん!ずっとお待ちしていました!お怪我などはありませんか?」
「あ、あぁ!全然大丈夫だ」
「本当に……?」
「大丈夫だって!」
俺たちの事を見た瞬間――受け付けのお姉さんは、涙目になり、上目遣いですぐにこちらへ駆け寄ってきた。
って、いきなりそんな近づかれたら興奮するじゃねぇか!
「と、とりあえず少し離れてくれ!」
「はっ!すいません!私としたことが」
俺は自分の赤くなった顔を隠しながらお姉さんにそう言う。
全く……帰ってそうそうムラムラしてくるじゃねぇかよ。
「とりあえず、どこかに座って話しましょ」
上手い具合に話を戻すみさと。
「そうですね、アンテズ村での事、色々教えて下さい!」
「よっしゃ!じゃあ話してやるとするか」
こうして、俺たちはギルド内の椅子に座り、アンテズ村での出来事や、ゴブリンの巣穴での出来事を話すことになった。――――んだが、正直この話はあまり重要な内容では無かったから、語り部であるこの俺の独断と偏見で、割愛させてもらう。
その中で、結果的に得た情報をこれから話していこうと思う。
まず、一番重要な、「この依頼で本当に等級が中級上位まで上がるのか」だが、それは中央大陸が決める事らしく、お姉さんもなんとも言えないらしい。
だから、中央大陸に手紙を送って、それの返信によって決まると。
そのため、今回の依頼での報酬も、中央大陸から貰わなければならなく、要するにこれで中級上位に上がることが出来なければ中央大陸には行けず、報酬も貰えない。
そういう事なんだと。
たく……これを聞いた時マジでびっくりしたぜ。
だってこれで等級が上がらなかったら、俺たち無料で村を救っただけじゃんか!
改めて言わせてもらうが、俺はお人好しでも無ければ聖人君子でも無い。
だから、「報酬は貰えなかったけど、結果的に村の人達が笑顔になったから良いや」
そんな聖人主人公の思考にはならないのだ。
――と、まぁとりあえずはそんな感じ。
今ガミガミ言ったところで中央大陸の判断は変わらないし、今日はゆっくり休むとしますかね。
「ふぅ……本当に今日は疲れたな」
「ね」「本当にだ」「もう動けないよぉ……」
お姉さんとの話し合いが終わり、別れを告げてギルドから出たところで、改めて疲れが押し寄せて気やがった。
空はオレンジ色に染まり、この世界にもある太陽が西へと沈んでいく。
すぐにウェーナの家に帰ってベットへ飛び込みたい気分だ。
帰って早々「トレーニングをしましょう」なんて言われなきゃ良いが……
俺はそんな事を考えながらウェーナの家の方向へ歩こうとする。すると、そこでクエストから帰ってきたのであろう冒険者3人組の姿を見つけた。
3人の名前はエスタリ、オネメル、ヒルデベルト。
俺たちがこの世界で、唯一の戦友と言ってもいい冒険者だ。
3人の中でもリーダーであるエスタリも俺たちの姿に気が付いたらしく、
「――って!お前ら帰って来てたのか!」
スキップ混じりにこっちへ走ってくる。
「あぁ、さっき帰ってきてな。」
「なぁ!向こうでどんな奴と戦ったんだ?」
お、待ってましたその質問ッ!
俺はニヤニヤしながら「なんだと思う?」そうエスタリを焦らす。
「もー分かんねぇよ。教えてくれ。」
「しゃーないなぁ。――なんと!俺たち誰からの手も借りずオーガを討伐した!」
「おぉ!お前らやるじゃねぇか!」
両手を腰に当て、ドヤ顔でそう言った俺に対して、何故か誇らしそうな表情になったエスタリは、「師匠として誇らしいぜ」なんて意味の分からないセリフを吐いてくる。
何言ってんだよこいつ。俺たちはお前の弟子になった記憶なんて無いんだが?
俺はそうツッコもうとしたが――寸前のところでやめた。
「ごめんねみんな、エスったら朝からずっとこんな調子なのよ」
「まぁこれもまたエスタリ殿ですがな」
エスタリの後ろから、呆れた表情のオネメルと、苦笑いのヒルデベルトが歩いてくる。
「俺は何時だってこんな調子だぜ?悪いか?愛しのオネメルよ」
「バカ、何言ってんのよこの変態エス」
「今日も大変愉快ですな」
そんな3人のやり取りは、見ていてすごく幸せで、ずっとこんな生活が続くのなら最高なんだろうな、そんな気持ちになる。
俺はここで改めて気が付いた。
「――俺たち、ラペルに帰って来たんだな。」
「そうね」
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