【完結】転生したのは俺だけじゃないらしい。〜同時に異世界転生した全く知らない4人組でこの世界を生き抜きます(ヒキニートは俺だけ)〜

カツラノエース

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第2章1部【中央大陸編】

第32話【到着〜え?まさかそれで行くんスか?〜】

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「じゃ私はこれで帰りますので」
「本当にありがとうな、頑張ってくるぜ。」
「帰り、気をつけるのよ」
「じゃあな」「ばいばい!」

 俺たちは目的地に着き、馬車の荷台から降りると、ここまで運んでくれたアンテズ村の村人に礼を言い、見送った。

「――よし、じゃあ船に乗るか。」
「そうね」「だな」「うん」

 馬車が見えなくなると、俺は後ろに振り返り、歩き始める。
 俺たちが今いるのは綺麗な砂浜で、目の前に広がる海は綺麗なセルリアンブルー色だ。その海水が燦々と燃えるこの世界の太陽に照らされて、その光を反射している。

 あぁ!めちゃくちゃこの海に飛び込みてぇ気分だぜ!
 この世界には地球の様に四季があるのかは分からんが、最近は特に暑くてな。
 何年かぶりに海に入りたくなるぜこりゃ。

 だが、今回の目的は海で遊ぶ事では無い。
 俺は頭の中からそんな楽しい回想を吹き飛ばすと、4人で砂浜に止まっているひとつの小さな船の方へ歩いていく。

「すいませーん、確認したい事があるんですけどー」
「――ん?なんだお前ら?」

 俺は船(というより木で出来たボート)の、縁に腰を下ろして向こうを向いている黒いローブを羽織った人に声を掛ける。

 するとその人は俺の声に気づき、こっちに振り返った。
 どうやら男みたいだな。黒髪ショートで、The・男みたいな顔。
 だが、羽織っているローブも相まって、ものすごく怪しい雰囲気を漂わせていた。

「俺たち、中央大陸の帝都ティルトルってところの冒険者ギルドに招待されたので、これから中央大陸に行きたいんですけど――」

 まさかその船で中央大陸まで乗せてくれるんですか?とは流石に聞けなかった。
 正直なところ、「いや俺は全然そんなのじゃない」と言って欲しい。

 だってこいつが乗ってるボートじゃ悪いがとても俺たち4人を乗せて計5人じゃ中央大陸までは行けそうに無いんだもん!
 だって本当に木のボートのみで、漕ぐオールすらもないんだぜ?

 しかし、残念ながら――というのはものすごく失礼かもしれないが、目の前にいる男は俺たちが探していた人物だった。

「あぁ、って事はお前らが狂乱の戦士バーサーカーに招待されたラペルのパーティーか?」
「まぁ、そうなんだが――」
「よし、じゃあ4人とも乗ってくれ」
「は、はぁ……」

 いや、念を押すようにもう一度言うが絶対無理だぜこれ?
 まぁでも、「いや、沈みそうなのでやめときます」なんてあまりにも失礼過ぎて言えねぇからな、仕方ない

 どうやらそんなことを俺以外の3人も考えていたらしく、4人で顔を見合わせながらも、渋々ボートに乗り込む。

 すると、そのボートの大きさ的にも5人は限界な数だったらしく、身動きが取れないくらいにはぎゅうぎゅうになった。
 もう降りていいスか……?

「なぁ、これ本当にいけるのか?正直沈む気しかしないんだが……」
「ん?あぁ、全然問題ない。」

 俺は不安な気持ちでいっぱいになり、遂にそんな事を聞いてしまったが、男はまるで小さな虫を払うかの様に返事を返すと、お構い無しにボートから足を出し、砂浜を蹴った。

「お、おぉ……!」

 海に出て完全に水に浮いたボート。
 しかし今にも沈みそうで、波にもされるがままゆらゆらと揺れている。
 
 これマジでヤバいんじゃ……?てかまずオールも、無しでどうやって進むんだよ!?

 するとそこで、男がボートの中心に手をかざすと、何やら呪文の様な物を唱え始めた。

「フローティング、ホール、フロウ――」

 その途端――

「って、なんだこれ!?」
「ちょっと、どういうことよ!?」

 ボート全体を紫色のオーラが覆い始めたのだ。
 するとそこで、先程まで今にも沈みそうなくらい揺れていたボートはピタリと止まり、瞬く間に安定する。
 そして――

「じゃあ、進むぞ。」

 男がそう言うと、まるでボートがその言葉を理解したかのように、海の向こう側にうっすら見える大陸に向かって進み始めた。
 ――って!?どういうことだ!?ま、まさか今のでボートに魔法でもかけたって言うのかよ!?

「おい、一体何が起こったんだ……?」
「ん?何ってなんだ?」
「だから、なんでこうやってボートが勝手に進んでるんだよ……?」
「はぁ?何言ってんだお前?そういう魔法を掛けたんだから動くに決まってるだろ。」
「そ、そうか……」

 そ、そういえばそうだったな……
 この世界の魔法は地球で言う化学の様な物だ。
 だから今のは「なんで船がエンジンで動いてるんだよ!?」と、地球で言うのと同じ感じ。
 そりゃ、はぁ?ってなっても不思議じゃ無いわな。

「――それにしても凄いわよね、魔法さえ使えればこうやって簡単に操れちゃうんだから。」
「だよな」
「まぁ、私は使えないけどな……」
「大丈夫だちなつ。俺も使えん」
「――え、えぇ?なんで私がとうまとちなつに睨まれてるのかな!?」

 こうして俺たちは、ボートで中央大陸へと向かう。
 この瞬間、初めてファスティ大陸から離れた。

 ---

 それから約1時間。
 遂に俺たちは中央大陸に到着した。
 いや、魔法の力で随分と早く進んでるなとは思っていたが、まさかこんなに早く着くとは思って無かったぜ。
 まぁでも一旦その事は良いとして――

「なんか、思ったよりも普通の島だな」
「そうね」「だよな」「うん、そうだね」

 俺たちはボートから降りると各自そう発言する。
 パッと見景色はファスティ大陸の砂浜と変わらず、どっちが中央大陸かと聞かれても的確に答えられそうには無かった。

「あそこに止まってる馬車が見えるか?あれが今回お前らが乗る馬車だ。」
「分かった、ありがとうな」
「おう」

 だが、何度も言うが今回俺たちは招待された身だ。
 とりあえず黙って先に進むとしよう。
 俺たちはここまで驚きの魔法(この世界では当たり前)でここまで運んでくれた男に礼を言うと、言われた通り少し向こうに止まっている馬車の方へと歩いて行った。

 ---

「中央大陸に招待された者だ。」
「皆さん、お待ちしておりました。荷台にお乗り下さい」
「あぁ」

 馬車の止まっているところまで着くと、俺は馬の手網を握る御者ぎょしゃと軽くコンタクトを取り、指示通りに荷台へ乗り込む。

 やっぱり馬車の荷台も違うのは布の屋根、壁が代わりに木って事くらいで、ファスティ大陸のそれと変わらないし、実はそこまで違わないんじゃないか?

 
 しかし、そこから馬車が動き始めて1時間、俺たちは言葉を失うのだった――――
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