【完結】転生したのは俺だけじゃないらしい。〜同時に異世界転生した全く知らない4人組でこの世界を生き抜きます(ヒキニートは俺だけ)〜

カツラノエース

文字の大きさ
35 / 88
第2章1部【中央大陸編】

第33話【衝撃の街並み〜早速やらかしました〜】

しおりを挟む

「皆さん、そろそろ帝都ティルトルが見えてきますよ」
「お、もうそんなに近づいたのか」

 馬車が動き始めて約1時間、最初の方はこれから行く帝都の事についての雑談で盛り上がっていたが、30分位を過ぎてから話すことが無くなって、すごく暇だったから丁度いい。

 俺は壁にもたれかかっていた身体を起こすと、後ろを向いて荷台の壁に付いている窓を開け、進んでいる道の向こうの方へ視線を向ける。

 するとその瞬間、俺はあまりの衝撃に言葉が出なかった。
 ってかあれ…………正直舐めてたぜ。

「ん?とうま、どうしたの?」
「どうしたんだ?」
「いや……お前らも見てみろって」
「「?」」

 俺にそう言われた3人は、首を傾げながらも俺が覗いた窓の反対側に付いている窓から同じように覗く。
 
 すると、おそらく先程の俺と同じものを見たであろう3人は、やはり似たようなリアクションをした。

「――な!?」
「あれは……!」
「めちゃくちゃすごいじゃん!」
「だろ?」

 よし、じゃあもうもったいぶっていても仕方ないからどのような景色だったのか説明すると――なんと目の前には帝都ティルトルであろう、まさに中世ヨーロッパの城下町の様な街並みが目の前に広がっていた。

 いや、これがマジでヤバイんだよ。
 中世ヨーロッパの街並みはラペルで飽きるくらいに見ていたんだが……まず、建物の大きさが桁違い。

 まだ間近で見た訳じゃないから絶対とは言えないが、一階建ての比較的小さな建物が多いラペルに比べて、帝都ティルトルの建物はほとんどが2階以上はありそうな大きさだ。

 そして、そんな建物がまるで東京のオフィス街の様な密度で並んでいるんだから凄い。
 な?こんな景色を目の前で見たんだから言葉を失うのも無理無いだろ?

 正直そこまで楽しみにしてはいなかったのだが――こりゃ楽しみになって来たぜ。

 ---

「皆さん、到着致しました。」
「おぉ!来たか!」
「ちょっと!私が先に行くから!」
「いや、私だ!」「わたしわたしー!」

 予想を遥かに超えて来た中央大陸の国、帝都ティルトルを見てから約5分後。
 馬車は目的地に到着した。

 とりあえず!今すぐにでも間近であの街並みをみたい!
 実はあれから、あえて窓から景色を見ていないのだ。
 お楽しみは残しておく派な俺である。

 俺はすぐに馬車から飛ぶ様に降り、すぐに正面側に回る――すると、そこには先程よりも数倍迫力のある、中世ヨーロッパの城下町の様な(あまりにも似ているもんだから、改めてこの表現を使った)街並みが目の前に広がっていた。

「す、すげぇ……」
「これはヤバイわね……」
「だな……」「まるでおとぎ話の世界だよ!」

 いや、これは本当に凄い。
 異世界に来てから初めて、こんなに建物で興奮したぜ。

「どうしました皆さん?そこまで珍しい光景では無いと思いますが」
「いや、少なくとも俺たちの住んでたラペルはこんな街並みじゃなかったぜ」
「そうですか、そっちの大陸には行った事が無いのでよく分かりませんが、」

 なんだコイツ!?
 確かにファーストコンタクトを取った時から服装もラペルの住人に比べて豪華だし、髪もサラサラロングの金髪美顔イケメンだと思ってたが――この都会っ子が。

「ちなみに、服装とか、他のやつに比べて豪華だが、お前って上級国民なのか?」
「いえいえ、普段から冒険者様を馬車で運んだりする仕事をしていますので、服装などは気を使っているだけです。」
「あぁそういうこと――ん?ちなみになんで俺たちが来るって分かってたんだ?」

 いや、今改めて思ったが、ボートを運転してた人も、まるで俺たちが来る時間を分かっているかのように居たよな。
 
 すると、俺の問に対して金髪ロングイケメンは、「はぁ」と苦笑いをしながらため息を吐くと、驚きのセリフを口にした。

「いや、実は昨日のお昼に狂乱の戦士バーサーカーさんから、中央大陸に呼んだ冒険者が来るかもしれないからと言われて、ずっと待ってたんですよ」
「「は?」」

 俺たち4人の声が綺麗に被った。
 い、いや、今なんつった……?

「えと……昨日の昼からずっとあの砂浜で待ってたって事か……?」
「はい、そうです。」
「何も食べずにか……?」
「はい、そうです。」
「って事はファスティ大陸側の砂浜で待ってたあの黒いローブを羽織ってたあいつも……?」
「はい、そうです。」

 いや、狂乱の戦士バーサーカーやべぇやつじゃねぇか!?
 
 そいつはまさか「俺たちを待たせるのは申し訳ないから来るまでずっとそこに居ろ」みたいな事を簡単に言っちゃう脳筋バカ野郎なのかよ!?

「腹減ってんじゃないのか?」
「めちゃくちゃペコペコですよ」
「もう俺たちは良いから食べてこいよ」
「え?でもまだ――」
「いやいや!良いから!」

 金髪ロングイケメンは俺たちに何かを言いかけたが――俺がそれを止めた。
 
 こいつはきっと優しいやつなんだ。少なくとも丸々1日俺たちを砂浜で待っちまう様な。(だからきっとあの黒いローブを羽織ったやつも優しいはず)

 だから俺たちに構わず、ゆっくり休んで欲しい。
 
「本当に大丈夫ですか……?」
「あぁ、ありがとな」
「はい、じゃあ、頑張って下さい」
「おうよ!」

 俺たちは金髪ロングイケメンが馬車に乗ってどこかへ(おそらく自分の家)に向かっている後ろ姿を見えなくなるまで見送った。


「よし、じゃあ俺たちは冒険者ギルドを目指すとしますか――――って、」
「「あ」」

 そこで気づいた。俺、あいつに冒険者ギルドの場所をまだ教えてもらって無い。
 
 しかも、帝都ティルトルはラペルと違って建物の数は桁違いだし、面積も何倍にもなるくらい広いだろう――
 や……や……や……!?

「やらかしたぁぁぁぁ!?!?」

 金髪ロングイケメンくん!今すぐ戻って来てくれぇぇ!?
 俺は帝都ティルトルに着いて早々に叫ぶのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...