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第2章1部【中央大陸編】
第33話【衝撃の街並み〜早速やらかしました〜】
しおりを挟む「皆さん、そろそろ帝都ティルトルが見えてきますよ」
「お、もうそんなに近づいたのか」
馬車が動き始めて約1時間、最初の方はこれから行く帝都の事についての雑談で盛り上がっていたが、30分位を過ぎてから話すことが無くなって、すごく暇だったから丁度いい。
俺は壁にもたれかかっていた身体を起こすと、後ろを向いて荷台の壁に付いている窓を開け、進んでいる道の向こうの方へ視線を向ける。
するとその瞬間、俺はあまりの衝撃に言葉が出なかった。
ってかあれ…………正直舐めてたぜ。
「ん?とうま、どうしたの?」
「どうしたんだ?」
「いや……お前らも見てみろって」
「「?」」
俺にそう言われた3人は、首を傾げながらも俺が覗いた窓の反対側に付いている窓から同じように覗く。
すると、おそらく先程の俺と同じものを見たであろう3人は、やはり似たようなリアクションをした。
「――な!?」
「あれは……!」
「めちゃくちゃすごいじゃん!」
「だろ?」
よし、じゃあもうもったいぶっていても仕方ないからどのような景色だったのか説明すると――なんと目の前には帝都ティルトルであろう、まさに中世ヨーロッパの城下町の様な街並みが目の前に広がっていた。
いや、これがマジでヤバイんだよ。
中世ヨーロッパの街並みはラペルで飽きるくらいに見ていたんだが……まず、建物の大きさが桁違い。
まだ間近で見た訳じゃないから絶対とは言えないが、一階建ての比較的小さな建物が多いラペルに比べて、帝都ティルトルの建物はほとんどが2階以上はありそうな大きさだ。
そして、そんな建物がまるで東京のオフィス街の様な密度で並んでいるんだから凄い。
な?こんな景色を目の前で見たんだから言葉を失うのも無理無いだろ?
正直そこまで楽しみにしてはいなかったのだが――こりゃ楽しみになって来たぜ。
---
「皆さん、到着致しました。」
「おぉ!来たか!」
「ちょっと!私が先に行くから!」
「いや、私だ!」「わたしわたしー!」
予想を遥かに超えて来た中央大陸の国、帝都ティルトルを見てから約5分後。
馬車は目的地に到着した。
とりあえず!今すぐにでも間近であの街並みをみたい!
実はあれから、あえて窓から景色を見ていないのだ。
お楽しみは残しておく派な俺である。
俺はすぐに馬車から飛ぶ様に降り、すぐに正面側に回る――すると、そこには先程よりも数倍迫力のある、中世ヨーロッパの城下町の様な(あまりにも似ているもんだから、改めてこの表現を使った)街並みが目の前に広がっていた。
「す、すげぇ……」
「これはヤバイわね……」
「だな……」「まるでおとぎ話の世界だよ!」
いや、これは本当に凄い。
異世界に来てから初めて、こんなに建物で興奮したぜ。
「どうしました皆さん?そこまで珍しい光景では無いと思いますが」
「いや、少なくとも俺たちの住んでたラペルはこんな街並みじゃなかったぜ」
「そうですか、そっちの大陸には行った事が無いのでよく分かりませんが、」
なんだコイツ!?
確かにファーストコンタクトを取った時から服装もラペルの住人に比べて豪華だし、髪もサラサラロングの金髪美顔イケメンだと思ってたが――この都会っ子が。
「ちなみに、服装とか、他のやつに比べて豪華だが、お前って上級国民なのか?」
「いえいえ、普段から冒険者様を馬車で運んだりする仕事をしていますので、服装などは気を使っているだけです。」
「あぁそういうこと――ん?ちなみになんで俺たちが来るって分かってたんだ?」
いや、今改めて思ったが、ボートを運転してた人も、まるで俺たちが来る時間を分かっているかのように居たよな。
すると、俺の問に対して金髪ロングイケメンは、「はぁ」と苦笑いをしながらため息を吐くと、驚きのセリフを口にした。
「いや、実は昨日のお昼に狂乱の戦士さんから、中央大陸に呼んだ冒険者が来るかもしれないからと言われて、ずっと待ってたんですよ」
「「は?」」
俺たち4人の声が綺麗に被った。
い、いや、今なんつった……?
「えと……昨日の昼からずっとあの砂浜で待ってたって事か……?」
「はい、そうです。」
「何も食べずにか……?」
「はい、そうです。」
「って事はファスティ大陸側の砂浜で待ってたあの黒いローブを羽織ってたあいつも……?」
「はい、そうです。」
いや、狂乱の戦士やべぇやつじゃねぇか!?
そいつはまさか「俺たちを待たせるのは申し訳ないから来るまでずっとそこに居ろ」みたいな事を簡単に言っちゃう脳筋バカ野郎なのかよ!?
「腹減ってんじゃないのか?」
「めちゃくちゃペコペコですよ」
「もう俺たちは良いから食べてこいよ」
「え?でもまだ――」
「いやいや!良いから!」
金髪ロングイケメンは俺たちに何かを言いかけたが――俺がそれを止めた。
こいつはきっと優しいやつなんだ。少なくとも丸々1日俺たちを砂浜で待っちまう様な。(だからきっとあの黒いローブを羽織ったやつも優しいはず)
だから俺たちに構わず、ゆっくり休んで欲しい。
「本当に大丈夫ですか……?」
「あぁ、ありがとな」
「はい、じゃあ、頑張って下さい」
「おうよ!」
俺たちは金髪ロングイケメンが馬車に乗ってどこかへ(おそらく自分の家)に向かっている後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
「よし、じゃあ俺たちは冒険者ギルドを目指すとしますか――――って、」
「「あ」」
そこで気づいた。俺、あいつに冒険者ギルドの場所をまだ教えてもらって無い。
しかも、帝都ティルトルはラペルと違って建物の数は桁違いだし、面積も何倍にもなるくらい広いだろう――
や……や……や……!?
「やらかしたぁぁぁぁ!?!?」
金髪ロングイケメンくん!今すぐ戻って来てくれぇぇ!?
俺は帝都ティルトルに着いて早々に叫ぶのだった。
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