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第2章1部【中央大陸編】
第34話【帝都のギルド〜いや、お前かいッ!〜】
しおりを挟む「いや、あの……本当にすんません……」
「いや、とうま!本当に何やってんのよ!」
「マジで頼むぜ」
「カッコつけようとしてたのかもしれないけど、その顔じゃ無理だよ!」
うん、みさととちなつの言い分は分かるんだが、くるみちゃん?ひとりだけ明らかに悪口わ吐いてた様な気がするんですけど?
「今回は本当に俺が悪いから率先して冒険者ギルドを探すからさ、許してくれねぇかな?」
「んー、みさと、くるみ、どうする?」
「まぁ、とうまは本当に反省してるみたいだし、私は許してあげても良いかな。そう言うちなつはどうなの?」
「ま、私もこんなことで怒ってても時間が無駄なだけだし、何よりとうまも良かれと思ってした事だからな――許してやっても良いと思うぜ?」
く、くるみ……!ちなつぅ!泣かせるじゃねぇかこの野郎……!
じゃ、じゃあみさとも……!
俺は今にも泣きそうな顔になりながらも、みさとの方を見る。
するとみさとも、他2人と同じ様に、優しくうっすらと笑顔になり、こう言った。
「そうね、じゃあとうま、もうこんなことはしないでよ?」
「あ、あぁ……!」
「なら許してあげるわ」
「ありがとう……!」
「――でも、」
ん?でもってなんだ?
「今回だって悪いのは悪いんだから罰は受けなさぁぁい!!」
バチーンッ!!
「痛ってぇぇぇ!?!?」
その瞬間、俺はみさとにフルスイングでビンタを食らった。
予想以上に優しかった仲間に対する感動で出るはずだった涙が、ビンタの痛みで出たじゃねぇか!くっそ痛えぇ!
――でも、きっと今のみさとの行動はこれから先気まずくならないようにと気を使ったビンタだったんだろうな。――――なんて、そう考えるなんて俺はドMなのだろうか?
---
「よし、じゃあとりあえず歩いてみるか」
「まぁ、そうね」「だな」「うん」
ビンタの痛みで出た涙を拭くと、俺は気持ちを切り替えてそう切り出す。
もうこいつらもこれ以上さっきの事を言及して来そうな雰囲気も無いし、いつも通り行かねぇとな。
「――それにしても、改めて凄いよな、この街」
「そうよね、本当にこんな場所があったなんて、信じられないわ」
俺たちは歩きながら街並みを眺める。
ラペルに比べて人の数も大違いだ。
スクランブル交差点――とまでは行かないが、それでも横に並んで歩けないくらいには人口密度が高かった。
「でもその割には、ヒルデベルトみたいな龍人や、耳の長いエルフ族はいないよな」
「確かにそうだな」
もしかしたらラペル――というかファスティ大陸は比較的人間以外の種族が多い大陸なのかもしれないな。
ラペルの近くにエルフ族が住んでたし。
「だからこそ、本当に中世ヨーロッパって感じだけどね」
「だよねー!さっきから強そうな人と何度もすれ違ってるし」
「これは特に冒険者が多いってのも納得だな」
すると、そこで前からこっちへ歩いて来ていたパッと見180センチ位のサラサラ黒髪ロングでセンター分けの冒険者であろう男が声を掛けてきた。
「お、お前ら見いひん顔やな、まさか違う街から来たんか?」
「え?俺たちか?」
「おぉ、そやで」
なんだコイツ?てか何故に関西弁?
顔立ちは整ってるし、背中にはゴツい大剣を背負っててめちゃくちゃ強そうなのになんだか残念なやつだな。
「何か用か?」
「いや、なんか周りをキョロキョロしてるから困ってるんか思てな。」
両手を腰に当て、ドヤ顔でそう言ってくる男。
――ん?ちょっと待てよ?この際コイツに冒険者ギルドの場所を聞けば良いんじゃないか?
「いや、実は本当に困ってるんだよこれが。」
「マジか!」
「なんで嬉しそうなんだよ……」
「いや、ワイ今暇やったからな、人助けでもしたい気分やったんや」
マジでなんなんだよ……
まぁでもコイツも冒険者だろうから、教えてくれそうだし良いか。
「で、何を教えて欲しいんや?」
「それが俺たち、さっきこの街に来たばかりで、冒険者ギルドを探しているんだがどこにあるのか分からなくてな……」
「なるほどな……って事はなんや?お前ら冒険者かなんかなんか?」
「「え?」」
「ん?えってなんや?」
いや――俺たち4人全員武器持ってるのになんで分かんねぇんだよコイツ……
「いや、俺たち武器持ってるのが分からないのか……?」
「ん~?――あぁ!ホンマやなぁ!お前ら冒険者かい!」
「――はぁ……」
こうして俺たちは、帝都ティルトルで初めて出会った謎の関西弁冒険者に、ギルドへと案内してもらう事になった。
---
それから約5分。俺たちは関西弁の冒険者について行くと、冒険者ギルドに到着した。
案外入り口から近くにあるもんなんだな。
――って言うか、この街には冒険者ギルドがいくつかあるんだから近くにあっても違和感は無いが。
「ここが冒険者ギルドか?」
「あぁ!せやで!どや?中々にデカいやろう?」
「――確かにこりゃすげぇな」
俺は目の前にある建物を見上げながらそう呟く。
赤レンガで造られたその建物は、幾つもある窓もしっかりと装飾されていて、中心にある大きな両開きの扉の上には、冒険者のシンボルマークなのだろうか、
剣と魔法の杖がクロスしているマークの垂れ幕がかかっており、「冒険者ギルド」一目見ただけでそう分かる風貌だった。
「よし、じゃあ入るとするか」
「そうね」
「私たちを呼んだやつも探さないとだしな」
そう、俺たちは冒険者ギルドに着いてゴールでは無い。
今回帝都ティルトルまで呼びやがった「狂乱の戦士」と、会わないといけないのだ。
「ん?なんや、お前ら誰かに呼ばれたんか?」
「あぁ、そうなんだよ」
「そうかぁ、お前らも大変やなぁ」
「だろ?――まぁでもとりあえずは助かったぜ、ありがとな」
「おう!全然ええで!」
「――あ、一応名前を聞いても良いか?」
おそらくもう二度とこんなへんちくりんな奴とは絡まないと思うが、それでも俺たちをここまで案内してくれた心優しい冒険者だ。
名前くらい覚えておいたほうが良いだろう。
「ワイはレザリオ。レザリオ・ベルーガや。」
「レザリオか、じゃあ俺たちは冒険者ギルドに入るとするぜ。」
「あぁ、ならワイも冒険者ギルドについでに着いてってもえぇか?」
ん?なんだコイツ、俺たちと離れたく無いのか?
まぁ良いけれども。
「まぁ良いぞ?」
「おぉ!じゃあちょいとついて行かせてもらいますで。」
「あいよ」
「ねぇとうま、さっきからコイツ一体なんなのよ」
「知るか、俺に聞くんじゃねぇよ」
レザリオには絶対に聞こえないくらいの声量で耳打ちしてきたみさとに俺はそう返す。
まぁでも、こんなに大きい街なんだからおかしな奴も1人くらい居るだろ。
「とりあえず、入るぞ」
「はぁ……まぁそうね」
こうして俺たちは冒険者ギルドの扉を開け、中へと入った。
---
「す、すげぇ……!」
「いや、これは流石としか言いようがないわね……!」
俺たちは冒険者ギルドへと入ると、すぐに口からそう言葉が漏れた。
――いや、分かってる。確かに今日は「やばい」とか「すげぇ」って言い過ぎてるよな。
でもそれを踏まえて改めて言わせてくれ――これはマジですげぇ!
まずやばいポイントその1、天井がめちゃくちゃ高くて開放感がエグい!
この冒険者ギルドは二階建てみたいなんだが、天井が吹き抜けになっているから、高さが高級ホテルのエントランスみたいな――まじでそんな感じなんだよ!(オマケにその天井には豪華なシャンデリアや、入り口の上にかかっていた物と同じ垂れ幕がかかっていて、それはもう豪華だ)
そしてやばいポイントその2、内装が広くて、酒場などもある!
まず内装を説明して行くと、入り口入ってすぐ正面に受け付けがあり、その右側の壁がクエストボードになっており、様々な依頼が貼ってある。
ここまではまぁ普通だな。
だが、凄いのはここからだ!まず、その受け付けの更に奥には酒場があって、その規模がやばい、それだけでひとつの店かよって感じ。
それで残りの空間にはとにかく椅子とテーブルが並んでおり、冒険者たちが何時でも酒を飲めるようになっていると。
(今は昼だからみんな依頼を受けているのか、人の数は思ったよりも少ないが)
まぁ、ざっくりとこんな感じだな。
「どや?中々大きいギルドやろ。実はこの街ん中でも、トップクラスにデカいんやで」
「――そうなのか。」
って、コイツやっぱり着いてくんのかよ。
まぁでも、良いって言ったのは俺だし……
「とりあえず、受け付けの人に話を聞きましょ」
「だな」
「あの、すいません」
「なんでしょうか――って、見ない顔ですね」
俺たちは受け付けカウンターの前まで行き、メガネを掛けた真面目そうな黒髪ボブのお姉さんに声を掛けた。
「あぁ、俺たちファスティ大陸から来たんだ」
「なるほど、そうでしたか。で、どんなご用件で?」
「実は俺たち、狂乱の戦士という異名を持つ冒険者に呼ばれてな――」
「あぁ、って事はあなたがエルフの方と決闘をして勝ったという?」
やっぱりそのイメージで浸透してるのか。
正直なところあの時勝てたのはみさとのユニークスキルがあったからなのだが……
「まぁそうだ」
「なるほど……?」
しかし、そこで何故かお姉さんは首を傾げた。
ん?なんか俺変なこと言ったか?
「えぇと、何か変か?」
「いや、皆さん先程狂乱の戦士という異名を持った冒険者に呼ばれたって仰りましたよね?」
「えぇ、とうまはそう言ったけど何か変かしら?」
すると、次の瞬間お姉さんは信じられない事を口にした。
「狂乱の戦士という異名を持つ冒険者ならすぐそこに居るじゃないですか。」
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