【悲報】魔王の我、日本に転移し数日目、一目惚れの女に『我の女になれ命令』するもあっさり振られる。ここから始まった生まれて初めての恋愛奮闘記。

カツラノエース

文字の大きさ
19 / 29

第19話だぞ【メッセージ】

しおりを挟む

 色々あった春丘テーマパークデートの翌日、仕事が終わった我は今日もいつも通り借りている部屋の真ん中に敷いた薄く硬い敷き布団の上で寝転がっていた。

 (はぁ……今日の作業は昨日帰りが歩きだったせいで疲れが残っていたのか、中々きつかったぞ)

 まぁ、昼休みの間に悠介さんとは連絡先?を交換しておいたからもうこんな事は無いだろうが。――って、そういえば昨日、えなと連絡先交換しそびれていたぞ……
 でも昨日はずっと緊張していたし、仕方ないか。

「……ッ」

 ――それに、昨日帰り際にされたえなからのキス……!!あの時はいきなり過ぎて混乱していたが、今改めて考えるとやばいぞ……!!
 まさか、えなも我の事を……ッッッ!?

 ま、まぁ……?わ、我は魔王!!当然と言えば当然だなッ!!ふはははッ!!(自分を棚に上げて必死に冷静になろうとする魔王の図)
 
 
 そんな事を考えていた時だ、不意に我の横に置いていたスマホが「ブッブー」と音を出した。
 この音、一昨日にゆうりからスマホの説明を受けた時に聞いた、「メッセージの届いた音」だ。

 ――今のところ、連絡先を交換しているのはゆうりと悠介さんのみ。どちらだ?

 我はすぐに右手でスマホを掴むと、顔の上に移動させ、操作をしてメッセージを開く。
 すると、相手はゆうりだった。

『今日、昨日春丘テーマパークにテロリストが現れたとかってニュースやってたけど、アンタ大丈夫だった?』

「あぁ、その事か。」

 実は、昨日我があの男たちとすこーし遊んでやった事はまだゆうりには伝えていない。だから、心配になってメッセージをくれたのだろう。

「こんな感じか?」

 だから我は、慣れない手つきでスマホ下部を叩きながら文章を作り、それをゆうりに返した。

『だいじょうぶだ、あいつらはぜんいんけいさつにまかせたから、われがたおしたヨ』

 ふっ、どうだ?我ながら良い文章じゃないか?
 ゆうりの様に漢字に変える方法はいまいち分からんが――まぁ伝われば良いだろう。(我は魔王だ。大体漢字の意味は分かるが書けたりはしない。)

「おっ、返ってきたぞ」

『ちょ笑アンタ文字だけ見たら子どもね笑』

 なんだ……よく分からんが凄くバカにされてる気がするぞ……それに子どもだと?舐めるなよ人間……!我は何百年も生きている魔族の長だぞ……ッ!!

『ようけんはそれだけか?』
『いや、実はもうひとつ伝える事があるわ』
『なンダ?』
『なによそのカタカナ笑 とりあえず、明日何時もの喫茶店に来なさい。18時くらいで良いわ』

 はぁ?明日は我仕事だぞ。
 それに、今担当している場所が結構な作業量でとてもその時間までに終わるとは思えないのだが。

『あした、われしごとおそくまでつづくからきついぞ』
『あぁ、その事なら心配いらないわ。兄貴に明日は魔王には早く帰らせる様に言ってるから』

 なるほど、いつもの様に妹権限でなんとかしたという訳だな。それにしてもつくづくゆうりの事が好きな兄だな悠介さんは。

『なるほど、それならだいじょーぶだ』
『オッケー!じゃ!あたしはもう寝るから!おやすみ!』

 こうしてゆうりとのやり取りは終わった。
 スマホを手から離すと「ふぅ」我はそう小さく息を吐き、天井を見つめる。

 次は何が始まるんだという気持ちの高揚感と共に我は眠りに付いた。

 ♦♦♦♦♦

 そして翌日、予定通り今日は中々にハードで忙しい作業だったのだが、昨日ゆうりが言っていた様に夕方になる頃、悠介さんに「今日はもう終わって良いぞ」そう言われ、更に約束の喫茶店まで車で送ってもらう事になった。

「――おい、本当に大丈夫なのか……?」

 車で喫茶店へ移動中に我は悠介さんにそう尋ねる。

「ん?なんだ?まさか仕事の事を気にしているのか?はっ、お前も一丁前な事を考える様になったな。」
「いや、普通考えるだろう!我だって長いとは言えないが、もう働き出してしばらく経っているのだぞ?」

 最初こそは自らでお金を稼ぎ、えなに振り向いてもらうというのが理由だったが、今では「仕事場の人間たちと共にひとつの物を作り上げる」事にやり甲斐を持ち始めていた。
 だから、中々に心配なのだ。

 すると、我の顔色から悠介さんはその様な事を汲み取ったのか、涼しい顔で笑うと、

「――まぁ、大丈夫だ。心配するな。それに、お前ひとりが欠けたところで作業の進行度にはそこまで影響は出ん。」
「あーそうかそうか。それなら良いが――って、なんだ!?その言い方は!?」

 それだけ聴くとまるで我が必要無い者の様に思えるではないか!?
 しかし、そう怒る我に悠介さんは相変わらず涼しい顔で「冗談だ、俺はそんな事思っていない。」なんて言って来る。

 はぁ……この人間には本当に振り回されてばかりだ……いつか、魔王としての威厳を見せつけなければな。

 そんな事を考えていた時だ。悠介さんは「着いたぞ」そう言うと車を道路脇に停車させる。
 お、着いたか。

 ――でも、この様になんだかんだ優しいから、我は悠介さんが嫌いでは無い――むしろ好きなのだ。

「いつもありがとうな。」
「ふっ、勘違いするな。これは妹の頼みだからだ。」

 ふはは、照れ隠しをしている事、バレバレだぞ?――と言えば帰りは歩いて帰る羽目になるからやめておこう。

 そのまま我はドアを開けると車を降り、悠介さんが去って行く姿を見送った。

 ――と、では行くとするか。
 今日は何が待っているのだろう。昨日の夜から心の中にあるこの気持ちが高鳴って来るのが分かる。
 そして我は喫茶店の方を向いた。

 するとそこには――

「お!よう魔王!」
「魔王さん!お仕事お疲れ様ですっ!」

 仕事終わりであろう姿のゆうりとえなが立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...