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第20話だぞ【ゆうりの提案】
しおりを挟むそれからふたりに合流した我は、早速喫茶店へと入った。そして、店員に言われるがまま案内された席へと歩いて行った。
(この様な流れももう慣れたものだな)
そんな事を考えながら我は手慣れた手付きで店員を呼び、三人分のドリンクを注文する。
そして、それが運ばれて来た頃だ。ごくりとひと口喉へ水分を流し込んだゆうりが早速話を始めた。
「――よし!じゃあ早速本題に入るわよ!」
「って、ゆうり……?随分ハイテンションだな。」
「どうしたんですか……?ゆうり先輩……?」
先程までは静かだったと言うのに……切り替えの早い奴だ。
それに、今までこんなハイテンションで話し出す事なんて無かったから、一体どんな事を言い出すのだと若干不安になって来たぞ……
すると、自分の思っていたより我とえなの反応が悪かったのか、「はぁ」呆れた様にそうため息を吐くと、
「もう!分かってないわねっ!今は夏よ!?」
腰に手を当てそう言ってくるが――いや、夏とはなんだ。
「我はまずその夏が何か分からないのだが。」
「あ、そっか、アンタはそこからだったわね……」
それからゆうりにため息混じりで説明してもらう。
まぁ要するに、今は夏という暑い時期なのだな。よく分かったぞ。
「――で、その事は分かったが、なにかその夏と言えばなイベントがあったりするのか?」
「ゆうり先輩ごめんなさい、私も分からないです、」
「もう、仕方ないわね――――おほん、」
「夏と言えばッ!!海でしょう!!」
横に手をバッと伸ばし、ドヤ顔で言うゆうり。
い、いや、海は元の世界にもあったから分かるが……そうなのか?
この世界に後から来た身としては、海には大量のモンスターが居るというイメージで、人間たちはあまり好んで訪れはしないからな。(我自身も全然行かない)
だがまぁ、この世界にはモンスターは居ない。
確かにそれなら、楽しいかもしれんな。
「なるほど、海か。良いのではないか?」
「へぇ~、海ですか!良いですねっ!」
「――クックック……」
「?」
すると、そこで急にゆうりが悪そうに笑い始めた。
ん?今度はなんだと言うのだ?さっきから忙しい女だな。
「実は、今回のはただの海遊びじゃないわよ……!!」
「ど、どう言う事ですか……?」
心配そうにえなが聴く。
それに対してゆうりは「聞きたい?ねぇ聞きたいの?」存分にそう焦らしてから、
「なんと!今回は日帰りじゃなくて一泊二日よ!!」
♦♦♦♦♦
それから詳しく話を聞くと、どうやら近くの海に隣接している旅館(宿の様な物らしい)を運営しているのが親戚らしく、そこで一泊する予定らしい。
「なるほど……確かに私たち、一週間後から長期休暇入りますし、丁度良いかもしれませんね!――でも、魔王さんは大丈夫なんですか?」
「ん?我か?我は――」
「あぁ、魔王の事なら心配しなくて良いわ。コイツもあたしたちと同じで一週間後に長期休暇入るから」
「おい……」
コイツとはなんだコイツとは……!!我は魔王だぞ?
全く……でも、まぁ確かに昨日昼休みに悠介さんがそんな話をしていた気もするぞ。――あぁ、そうか、ゆうりは悠介さんの妹。だから知っているという訳だな。
ひとりで自己解決する我。
「――で、まだいまいちどの様な事をするのか理解出来ていないが、その海に行くメンバーはここにいる3人か?」
「いや、今回は兄貴にも来てもらうわ。運転手は居た方が良いしね」
「おいおい、悠介さんは運転手役で連れて行くのか……」
まぁだが、悠介さんが居るのだと言うなら心強い。
とてもこのふたりはどこか危なっかしいところがあるからな。我ひとりじゃ面倒なんて見切れん。
「4人ですか……!私、ゆうり先輩のお兄さんとはあまり会った事無いですし、楽しみです!」
「そういえば、悠介さんにはもうこの事は言ったのか?」
「いや、今日帰ったらメッセージでも送るわ」
「って、事はまだ詳しい日程とかも決まってないのか?」
「えぇ、まぁそれも決まれば話すわ」
「了解です!」「うむ」
――――って、あれ?まさかこれで終わりか?
「な、なぁ……まさかこれで話は終わり……?」
「えぇ、そうよ。今日はふたりにこの事を伝えようと思ったの。」
「……」
おいおい……まだ店に入って数分だぞ……?こんな程度で終わる話なら、メッセージでも良かったんじゃ……?
「ねぇアンタ、今「それだけならメッセージでも良かったのでは……?」って顔したわね?えな、貴女も。」
「「……ッ!!」」
その瞬間、我もえなもハッと驚く。って、やっぱりえなも思っていたのか。
「ふふ、安心しなさい。今回2人に集まってもらったのはちゃんと意味があるわ。」
「意味……?他にも何かあるのか?」
「えぇ、これから2人には――近くのショッピングモール「リオン」に行って海で着る水着を買って来てもらう!!」
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