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第三章 コラボはムリなんですが?
#05:事実確認
しおりを挟む古めかしいメヌエットのクラシックな音楽が流れると共に、盛り上がるサビに入る手前で、メロディは途切れた。
『はい。お電話変わりました。シュクラ担当マネージャーの松田でございます』
先ほどの若い声のした窓口女性よりも、もう少し落ち着いた女性の声だった。もちろん若さもある。電話での音声だから多少の曇りはあるが、窓口の女性が推定20代なら、マネージャーは30~40代と言ったところか。
「あ、こんにちは。俺は、鉈チャンネルを運営・投稿の配信活動を行っている鉈と申します。えっと、あんま会社とかに電話することもないのですが、えっと本名を名乗っておいた方がよろしいでしょうか?」
『え。いえ。別に本名を名乗らなくても大丈夫です。お電話の代金が掛かってしまいますから、一度こちらから折り返し掛け直します。りあるからは大体のことは伺っておりますので、ひとまずは、鉈さんのお電話番号を頂戴してもよろしいでしょうか?』
マネージャーの松田は、丁寧に言葉を告げた。俺は、携帯の電話番号を告げて通話を切った。部屋の固定電話に掛けてきても、今後の外出中に代わりに出る者がいないから、大概は携帯に掛けてもらわなくてはならない。
程なくしてスマホに電話が掛かって来た。登録してない番号だが、すぐ折り返すと言っていたから間違いなく松田だろう。
「はい。鉈です」
いつもなら本名を名乗るところだが、すぐ活動名で伝えると相手は『松田です』と応えた。
「折り返しありがとうございます」
『いえ。飛んでもございません。りあるから事実確認があると伺っております。どのような確認でしょうか?』
「えっと、りあるさんから一通り窺っているかと存じますが、先に確認したいのは、まずゼノゼノンというゲーム実況の配信者からコラボを持ち掛けられて断ったことが原因で、ゼノゼノンのリスナーから〈生意気!〉とか〈格下がふざけんな!〉という誹謗中傷が来ている件です。このことは把握しておりますでしょうか?」
今回の悩みは、少しだけ異なる。誹謗中傷に悩むという悩みではない。コラボを断ったことで中傷コメントが相次いでいるが、りある本人は本当にコラボをしたくないからこそ、この先もコラボに応じるつもりはないのだ。だからといって中傷コメントをするゼノゼノン側のリスナーもどうかと思うが、りある本人としては、今後もゼノゼノンに関わりたくないと、俺とのメールのやりとりで先刻貰っているのだ。
『はい。承知しております。中傷コメントに関しては、止めていただくようシュクラ公式サイトおよびSNSに告知済みでございます』
「はい。その件、俺も確認しました。まぁ、ただ、りあるさん本人の将来を考えますと、俺のチャンネルで、りあるさんの悩みとゼノゼノンとの件を取り上げる際、できれば穏便に済ませたいと思っております」
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