【完結】今後の鉈枠は、

ほわとじゅら

文字の大きさ
49 / 114
第三章 コラボはムリなんですが?

#05:事実確認

しおりを挟む


 古めかしいメヌエットのクラシックな音楽が流れると共に、盛り上がるサビに入る手前で、メロディは途切れた。

『はい。お電話変わりました。シュクラ担当マネージャーの松田でございます』

 先ほどの若い声のした窓口女性よりも、もう少し落ち着いた女性の声だった。もちろん若さもある。電話での音声だから多少の曇りはあるが、窓口の女性が推定20代なら、マネージャーは30~40代と言ったところか。

「あ、こんにちは。俺は、鉈チャンネルを運営・投稿の配信活動を行っている鉈と申します。えっと、あんま会社とかに電話することもないのですが、えっと本名を名乗っておいた方がよろしいでしょうか?」

『え。いえ。別に本名を名乗らなくても大丈夫です。お電話の代金が掛かってしまいますから、一度こちらから折り返し掛け直します。りあるからは大体のことは伺っておりますので、ひとまずは、鉈さんのお電話番号を頂戴してもよろしいでしょうか?』

 マネージャーの松田は、丁寧に言葉を告げた。俺は、携帯の電話番号を告げて通話を切った。部屋の固定電話に掛けてきても、今後の外出中に代わりに出る者がいないから、大概は携帯に掛けてもらわなくてはならない。

 程なくしてスマホに電話が掛かって来た。登録してない番号だが、すぐ折り返すと言っていたから間違いなく松田だろう。

「はい。鉈です」

 いつもなら本名を名乗るところだが、すぐ活動名で伝えると相手は『松田です』と応えた。

「折り返しありがとうございます」

『いえ。飛んでもございません。りあるから事実確認があると伺っております。どのような確認でしょうか?』

「えっと、りあるさんから一通り窺っているかと存じますが、先に確認したいのは、まずゼノゼノンというゲーム実況の配信者からコラボを持ち掛けられて断ったことが原因で、ゼノゼノンのリスナーから〈生意気!〉とか〈格下がふざけんな!〉という誹謗中傷が来ている件です。このことは把握しておりますでしょうか?」

 今回の悩みは、少しだけ異なる。誹謗中傷に悩むという悩みではない。コラボを断ったことで中傷コメントが相次いでいるが、りある本人は本当にコラボをしたくないからこそ、この先もコラボに応じるつもりはないのだ。だからといって中傷コメントをするゼノゼノン側のリスナーもどうかと思うが、りある本人としては、今後もゼノゼノンに関わりたくないと、俺とのメールのやりとりで先刻貰っているのだ。

『はい。承知しております。中傷コメントに関しては、止めていただくようシュクラ公式サイトおよびSNSに告知済みでございます』

「はい。その件、俺も確認しました。まぁ、ただ、りあるさん本人の将来を考えますと、俺のチャンネルで、りあるさんの悩みとゼノゼノンとの件を取り上げる際、できれば穏便に済ませたいと思っております」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―

なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。 その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。 死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。 かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。 そして、孤独だったアシェル。 凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。 だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。 生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

猫カフェの溺愛契約〜獣人の甘い約束〜

なの
BL
人見知りの悠月――ゆづきにとって、叔父が営む保護猫カフェ「ニャンコの隠れ家」だけが心の居場所だった。 そんな悠月には昔から猫の言葉がわかる――という特殊な能力があった。 しかし経営難で閉店の危機に……
愛する猫たちとの別れが迫る中、運命を変える男が現れた。 猫のような美しい瞳を持つ謎の客・玲音――れお。 
彼が差し出したのは「店を救う代わりに、お前と契約したい」という甘い誘惑。 契約のはずが、いつしか年の差を超えた溺愛に包まれて――
甘々すぎる生活に、だんだんと心が溶けていく悠月。 だけど玲音には秘密があった。
満月の夜に現れる獣の姿。猫たちだけが知る彼の正体、そして命をかけた契約の真実 「君を守るためなら、俺は何でもする」 これは愛なのか契約だけなのか……
すべてを賭けた禁断の恋の行方は? 猫たちが見守る小さなカフェで紡がれる、奇跡のハッピーエンド。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

処理中です...