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第三章 コラボはムリなんですが?
#19:電話の相手
しおりを挟む上から下へ、下から上へ視線を走らせて、Vキャラのりあるを思い出す。りあるは金髪で、青い目。ピンク色のメイド服を着ており、お腹に巻いた真っ赤な布は背中側でチョウチョ結びを作り、白いタイツと赤い靴を合わせた美少女Vキャラなのだ。プロデュースしたシュクラ代表の趣味が全開に反映されている。
現実の莉愛は、Vキャラりあるとは髪が長いこと、手足が細くて華奢な点だけが同じで、それ以外はまったく似ていない。
「もしかして幻滅しちゃった?」
可愛くぶりっ子をかましながら、上目遣いで俺を見上げる瞳が瞬く。いや、よくみれば紺色のワンピースも全然可愛いが、俺のタイプではないから深くは突っ込まなかった。
「えっと、じゃあ知ってたんすか? 今日の配信で妹さんが出ることは?」
俺は真横の先輩に問いかけた。
「知ってた。宗武からコンタクトが来たって莉愛から速攻でメッセ飛んで来たから」
「言ってくれれば良かったのに!」
「伝えたら身内の出演取り止めるとかになったら莉愛に怒られるからな。黙ってた。悪い」
溜め息を吐いた先輩は頭を掻いた。
「あ、てことは、りあるさんが莉愛さんなら、身内がスイーツのショップを開いたって話は!」
先輩に視線を向けると、
「俺が製菓菓子の学校で知り合った仲間と共同で立ち上げたネット上の販売サイトのことだな」
小さく溜め息を吐いた。
「先輩、関わっていたんですね」
「俺はもう去年には離脱したけどな。フランスと日本を行き来するのも結構しんどくて。ちょいちょい新作スイーツの試食は、させてもらってるけど。ついさっき電話を貰って梱包を手伝ってくれってヘルプが飛んできた」
店が空だったことを、ふと思い出す。先輩が外で電話対応していたのはパティシエ仲間からの連絡だったのだ。
ゼノゼノンが食べたフィナンシェの店を、リスナーが注目したから店に注文が急に増えたのだろう。
「問い合わせが殺到したんですね。そうだ。確か、チャンネルページもあるって聞きましたけど」
先輩はスマホにチャンネルページを表示させた。確かにスイーツの商品が、各動画の画像に映っている。一番新しい動画の再生数が5万を超えていたが、一つ古い動画は数千回、以降は数百回という再生数だ。明日には、また再生数が爆発的に伸びるかもしれない。
「何か、すみません。先輩。もう影響が出始めてるなんて」
「何言ってるんだ。気に病むことじゃない。むしろ配信で空前の注目が入ったから、戸惑ってはいたけど、あっちのパティシエたちは喜んでたぞ?」
そう言われて、ホッとする。
宣伝効果が、俺の配信後から直ぐに現れるなんて思ってもみなかった。
「そうだ。ゼノゼノンに禊で宣伝してもらうんですけど、いつからがいいですか?」
先輩は、苦笑いを浮かべて首を振る。
「悪い。決定権は俺にはない。けど伝えておくよ。既に注文が沢山出てるから、要らないって言われるかもしれないけどな?」
「それじゃ禊にならないんで」
「お兄! それじゃ甘いわよ! 折角ゼノが、タダで協力してくれるんだから利用しなくちゃ!」
彼女は、ゼノゼノンのことを、ゼノと愛称で呼んでいるようだ。
「お前なぁ。なんてこと言うんだ。せめて菓子を定期的に贈らないとダメだろうが。タダ働きは部外者の俺でも許さないぞ!」
俺は莉愛に向き直って訊ねてみた。
「それはそうと。事務所の方は、大丈夫そう?」
「事務所?」
「謹慎の件」
「あ~! はい。大丈夫です。実は、配信のあとにゼノから連絡が来て謝罪されたんですけど、事務所にも謹慎はもう止めてくださいって言ってくれたんです!」
「そうなんだ。ゼノゼノンが、そんなこと言ったんだ!」
莉愛は頷いた。
「ゲーム実況界隈では有名な人だもん。鉈さんのお陰でゼノにも中傷コメが来たみたいです。まぁ私のリスナー達が猛抗議したんだと思いますが」
最後の猛抗議は声を落として、彼女は小さく溜め息を付いた。
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