配信の果て

ほわとじゅら

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不穏なスタート

マネージャーの印象

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 立ち話では何ですからと近くにあるカフェに俺は誘導された。よくある喫茶店だ。平日の夕暮れ時は長く滞在している者も少ないか店内はガランとしていた。

 席に着くと名刺を渡された。ナインズの企業名は分かるが与田の肩書きには統括本部長とうかつほんぶちょうとあった。

「俺の名刺ですが、今日は持っていなくてですね。今は別の会社に入ったばかりで名刺はないのですが」

「全然、いいんですよ。私が声を掛けたのですから」

「そうですか。すみません。えっと、以前ご連絡をいただいたときはメール内でパンファミのマネージャーと、お聞きしたのですが」

「はい。今も彼らの担当をしておりますが、実際には会社内のさまざまな部門を統括する部署で本部長をしております」

「本部長ですか。なかなか忙しそうなポジションですね?」

「ええ。そうなんですよ。あまりに忙しくて実は、マネージャー代理というのを付けていますから、私が忙しいときは代わりに動いてくれる人がいますので」

 へへへと与田は笑った。チラリと金歯がみえた。以前コンビニ前で見たときは、30代後半から40代くらいだと瞬間的に思えたが、実際、目にした印象だと4、50代の中高年にみえた。

「なるほど。それで俺にどういった要件でしょうか?」

 テーブル近くにコーヒーをウェイトレスが運んできた。俺は一切頼んでいない。

 店に入店した直後だ。自分のオススメだと言いながら勝手に注文されたのだ。ホットコーヒーを前に、与田は淡々と語った。

「お噂は、かねがね聞いております。要件というよりかは、一度、二川さんと直接お会いして話してみたかったのです。偶然、出会えるとは思いませんでしたが」

 一体、どこから俺のあとを付けてきたのか。偶然を装って、どこかの時点でストーキングしつつ見計らっていたとしか考えられなかった。

「噂というのは、どこからでしょうか?」

 どうせ適当な話だと思っていたが、与田はすぐ言葉を返した。

「やさいゲームや新作ゲームをリリースされるたびに取材されるでしょ?」

 オンライン上のゲーム記事より開発インタビューで見聞きしたと言いたいようだ。

「はぁ。そうなんですね。でも俺の姿とか、顔はせてないハズですけど」

「いやいや、やさいゲームが空前のブームを巻き起こした年にインタビュー記事で胸から下の手足が写る、お写真を載せていましたよね。代表の宇多野さんとご一緒に取材を受けられたときの模様が載っていました」

 与田が自身の胸あたりを左から真横に切るようなポーズをした。

 そういえば顔は写さないでくれと記者にお願いをして首から下の撮影には応じた記憶があるのを今、思い出した。

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