配信の果て

ほわとじゅら

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不穏なスタート

勿体ないこと

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「あー、やさいのときか。でも顔出しの許可までは出していませんよ?」

 与田勝彦は首を真横にブンブンと振った。

「いえいえ。掲載されています。バス会社からの転身で独立してゲーム開発で大ヒットを起こした、という話がバスの業界向け冊子にも掲載されています。あれ、ご存じありませんでしたか?」

 俺は首を横に振った。

「そうでしたか。でも記事には宇多野さんの背後で仕事中の二川さんの横顔でしたけど、ばっちり写っていました。会社の人間が、あ、部下のことですけど、私に教えてくれたんです。知り合いがバス会社に勤務が決まったとき、そんな記事が冊子に載ってると」

 まさか、冊子に俺の姿も写っていようとは初耳だ。確かにバス業界関係の取材は数年前に一度あったが、引っ越し前の事務所内を撮影していたとは知らなかった。

「全然知りませんでした」

「なので前々からですね、お二人には凄く興味を持っているんですけれども宇多野さんには良いお返事を貰えず断られてしまいまして」

「俺に言われても彼の意思を変えるのは難しいですよ?」

「分かっています、分かっています。けれど、よくよく過去の雑誌を振り返って考えてみたのですが、もともと宇多野さんにプログラミングを教えたのは二川さんであると記事にありました。だとすれば、リリースされた大半のゲームは二川さんが大部分的に作られたものではないんですか?」

 イタイところを突かれた。確かに宇多野も最低限ゲームを作る基礎は教えたが、殆どのベースを組んで作っているのは俺だ。宇多野が、ああしたい、こうしたい、という発想を元に俺があれこれ作っては調整して繰り返しゲームを完成させていく。

「プロデュースしているのは宇多野ですよ。俺はほぼ脳を動かさないで、宇多野よりパソコンへの打ち込みが多少早いってだけの話ですから」

「ええ。二人三脚ですもんね。お二人で作られてるからこそ、あ・うんで大ヒットのゲームを生み出している」

 何を言いたいのかサッパリ分からない。俺に声を掛けてきて、ヘッドハンティングの匂わせを感じさせつつ、宇多野の話も織り交ぜている。一体どういう話に持ち込みたいのだろうか。

「私はね、凄くお二人が羨ましいと思っています。これまでリリースされたゲームはすべてヒットさせてますから。ゲーム業界でタイトル一本をヒットさせるのは難しい。リリースされたものが全部当たるというのは非常に幸運なことです」

「はぁ、ありがとうございます」

 これは褒めて称えて人の良さそうな印象を与えるだけの顔見知り程度の接触だろうか。俺が、そう判断しかけたときだった。

「でも直近でサンライブと提携されたとプレスリリースを拝見しました。私は、非常に不安を覚えます」

「不安ですか?」

「ええ。ナインズとは、ある意味サンライブは競合になります。悪く言うつもりはありませんけども、つい先日にSNS上で大炎上を起こしたばかりです。噂程度ではありますが、サンライブの代表と宇多野さんは親族関係と聞きます。良い話をしてサンライブでおきた炎上の後始末、企業のマイナス印象を払拭ふっしょくするためにあなた方を利用しているのだとすれば、本当に勿体もったいないことです」

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