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11話 ハムスター亜種
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うーん、本当は宝物殿とか自室とかいろいろ確認したかったけど、まさか大福ちゃんがあそこまでしんみりしてしまうとは思っていなかった。
会話の流れであの場を去るしかなかったので、あとで確認しておくことにしよう。
ベリアルとともに隠し通路で外へと戻り、遺跡の周囲を探索する。
「豚トロ様、こちらをご覧ください。何かの足跡です」
「そうみたいね。うーん。でもハムちゃんじゃないかなぁ」
「そのハムスター亜種? というのはどういった種族の生き物なのでしょうか?」
「ん? ふふーん。それは見てのお楽しみ♪」
しばらく進むと、何やら鉱石を掘っている音が聞こえてくる。
別に隠れる意味もないが、コソコソと進んでいくと、犬人たちがなにやら露天掘りをしているところであった。
「露天掘りでしょうか」
「そうみたいね」
「ここは私が先に行って情報を集めて参ります。どうか豚トロ様はこちらでお待ちください」
「え? あ、うん」
大丈夫だろうか……。
ベリアルが姿を現わすと犬人たちは悪魔が現れたことに酷く動揺し、武器を持ち出してベリアルを威嚇していた。
「貴様何者だ! 悪魔がなんでこんなところにいる!?」
「おい犬畜生ども、ハムスター亜種とかいう奴を知っている者がいたら、喋ることを許可してやろう」
ハムちゃんの名前をベリアルが出すと、威嚇気味だった犬人たちが突然顔面蒼白となって怯えだした。
「お、お前! 龍王様の名を出すな!」
「そうだ! 厄災を買うぞ!」
「き、聞かれてないよな!? 龍王様はいらっしゃらないよなっ!?」
犬人たちが周囲を見渡し、誰もいないことを確認して安堵の息をつく。
だがそれも束の間、周囲に重低音が鳴り響いた。
グォォォォン。
次の瞬間には神速でやってきたハムちゃんがその場に空から降り立つのだった。
「貴様らぁ!!! 誰が俺の名前を言いやがった!!」
尻尾を地面に叩きつけて怒りを露わにする。
それだけで軽い地揺れが起こり、犬人たちは宙に浮いてしまっていた。
「ひぃぃぃぃ、龍王様、違います! 我々は決してその名を口にはしておりません!」
「じゃあ誰が言った!!?」
犬人たちが自然とベリアルの方へ視線を向ける。
その瞬間、ハムちゃんの雷スキルがベリアルへと落ちた。
「俺はなぁ! 最強の龍王だ。その龍の王の中の王がハムスターだぁ? 主のことは超大好きだが、この名前はそんなに気に入ってねぇんだよ! それを易々と呼ぶんじゃねぇ! 呼ぶなら『スーパードラゴンエンペラー』とかにしろや! まあ、もう死んでるだろうがな! だっはっはっはっは!」
「ほぉ、つまりあなたは『主人のつけた名』という至宝が気に入っていないと」
土煙が晴れていく中で、ベリアルが淡々と述べていく。
「なっ!? てめぇ、あれを防ぐか! はんっ! もちろん主は神にも等しい大切な御方! だがもういねぇんだ! だったら自分の名前くらい好きにしていいだろうがっ!」
言葉と共に岩をも砕く勢いの肉弾攻撃を繰り出していく。
対するベリアルはそれらを余裕で避けていた。
「ちっ! 多少はやるようだな! だったらこれで――」
ハムちゃんが業火炎ブレスを吐く一歩手前まで行ったところで、私はトボトボと前に出る。
「ハムちゃん、名前……嫌だったんだ」
「あぇっ!!?!?」
「ごめんね。その……気付かなくて……。私は良かれと思ってつけてたんだけど、前はみんな喋れなかったからさ。全然わかんなくって。私、壁に耳あり障子にメアリーの主人失格だね。PMCたちの気持ちも考えてあげられないなんて……」
「と、ととととと、となりの、豚トロ、様……!?!? なのですか!?」
「うん。久しぶり、ハムちゃん。あっ、ごめん、この名前、嫌だったよね……」
あまりのいたたまれなさに目を伏せてしまう。
「あっ、いや、ち、ちがっ! そうではなくてっ……」
痛々しい空気が流れて、私はさらに心臓を刺されたような心持ちとなってしまう。
「こ、これは、その……そう! 私は今、自分の名前が嫌いなキャラを演じることにハマっているんです! 演じているだけなので、本心ではとーっても好きなんです!!」
「え……? そうなの? でもそんなキャラを演じることなんてあるの?」
「はい! 龍族ではそれはそれは流行っております!」
「そ、そんなことってあるの?」
「はいっ! それはもうっ! おいお前ら! そうだよな!?」
ハムちゃんが犬人たちにそう問いかけると、彼らも全力で首を縦に振っていた。
初耳だが、そもそも龍族のNPCキャラというのはあまりいなかった。
もしかしたらそういう裏設定があったのかもしれない。
「じゃあ、これからもハムちゃんって呼んでいいってこと?」
「もちろんでございます! となりの豚トロ様より頂いたこの名が嫌いなど、反吐が出るような話ですよ! これほど雄々しくカッコいい名前など他にはございません!」
「か、かっこいいかな……。どっちかというと可愛いと思ってつけたんだけど……。やっぱりカッコいい名前の方がいい?」
「カ、カッコかわいいと思います!!」
「カッコかわいい?」
聞き慣れない言葉に眉を寄せてしまう。
「はいっ! カッコいいと可愛いを併せ持つ龍族での最新のニューな流行りのトレンドですねっ! 流行を先取りされているとは、まさにとなりの豚トロ様と言えましょう!」
「そうなの?」
「はい! 私としてはこのような名を頂けたことに感涙を堪えない想いです!」
「そっか……」
よかった。
とりあえず名前は気に入っていたみたいだ。
ならまあいっか。
会話の流れであの場を去るしかなかったので、あとで確認しておくことにしよう。
ベリアルとともに隠し通路で外へと戻り、遺跡の周囲を探索する。
「豚トロ様、こちらをご覧ください。何かの足跡です」
「そうみたいね。うーん。でもハムちゃんじゃないかなぁ」
「そのハムスター亜種? というのはどういった種族の生き物なのでしょうか?」
「ん? ふふーん。それは見てのお楽しみ♪」
しばらく進むと、何やら鉱石を掘っている音が聞こえてくる。
別に隠れる意味もないが、コソコソと進んでいくと、犬人たちがなにやら露天掘りをしているところであった。
「露天掘りでしょうか」
「そうみたいね」
「ここは私が先に行って情報を集めて参ります。どうか豚トロ様はこちらでお待ちください」
「え? あ、うん」
大丈夫だろうか……。
ベリアルが姿を現わすと犬人たちは悪魔が現れたことに酷く動揺し、武器を持ち出してベリアルを威嚇していた。
「貴様何者だ! 悪魔がなんでこんなところにいる!?」
「おい犬畜生ども、ハムスター亜種とかいう奴を知っている者がいたら、喋ることを許可してやろう」
ハムちゃんの名前をベリアルが出すと、威嚇気味だった犬人たちが突然顔面蒼白となって怯えだした。
「お、お前! 龍王様の名を出すな!」
「そうだ! 厄災を買うぞ!」
「き、聞かれてないよな!? 龍王様はいらっしゃらないよなっ!?」
犬人たちが周囲を見渡し、誰もいないことを確認して安堵の息をつく。
だがそれも束の間、周囲に重低音が鳴り響いた。
グォォォォン。
次の瞬間には神速でやってきたハムちゃんがその場に空から降り立つのだった。
「貴様らぁ!!! 誰が俺の名前を言いやがった!!」
尻尾を地面に叩きつけて怒りを露わにする。
それだけで軽い地揺れが起こり、犬人たちは宙に浮いてしまっていた。
「ひぃぃぃぃ、龍王様、違います! 我々は決してその名を口にはしておりません!」
「じゃあ誰が言った!!?」
犬人たちが自然とベリアルの方へ視線を向ける。
その瞬間、ハムちゃんの雷スキルがベリアルへと落ちた。
「俺はなぁ! 最強の龍王だ。その龍の王の中の王がハムスターだぁ? 主のことは超大好きだが、この名前はそんなに気に入ってねぇんだよ! それを易々と呼ぶんじゃねぇ! 呼ぶなら『スーパードラゴンエンペラー』とかにしろや! まあ、もう死んでるだろうがな! だっはっはっはっは!」
「ほぉ、つまりあなたは『主人のつけた名』という至宝が気に入っていないと」
土煙が晴れていく中で、ベリアルが淡々と述べていく。
「なっ!? てめぇ、あれを防ぐか! はんっ! もちろん主は神にも等しい大切な御方! だがもういねぇんだ! だったら自分の名前くらい好きにしていいだろうがっ!」
言葉と共に岩をも砕く勢いの肉弾攻撃を繰り出していく。
対するベリアルはそれらを余裕で避けていた。
「ちっ! 多少はやるようだな! だったらこれで――」
ハムちゃんが業火炎ブレスを吐く一歩手前まで行ったところで、私はトボトボと前に出る。
「ハムちゃん、名前……嫌だったんだ」
「あぇっ!!?!?」
「ごめんね。その……気付かなくて……。私は良かれと思ってつけてたんだけど、前はみんな喋れなかったからさ。全然わかんなくって。私、壁に耳あり障子にメアリーの主人失格だね。PMCたちの気持ちも考えてあげられないなんて……」
「と、ととととと、となりの、豚トロ、様……!?!? なのですか!?」
「うん。久しぶり、ハムちゃん。あっ、ごめん、この名前、嫌だったよね……」
あまりのいたたまれなさに目を伏せてしまう。
「あっ、いや、ち、ちがっ! そうではなくてっ……」
痛々しい空気が流れて、私はさらに心臓を刺されたような心持ちとなってしまう。
「こ、これは、その……そう! 私は今、自分の名前が嫌いなキャラを演じることにハマっているんです! 演じているだけなので、本心ではとーっても好きなんです!!」
「え……? そうなの? でもそんなキャラを演じることなんてあるの?」
「はい! 龍族ではそれはそれは流行っております!」
「そ、そんなことってあるの?」
「はいっ! それはもうっ! おいお前ら! そうだよな!?」
ハムちゃんが犬人たちにそう問いかけると、彼らも全力で首を縦に振っていた。
初耳だが、そもそも龍族のNPCキャラというのはあまりいなかった。
もしかしたらそういう裏設定があったのかもしれない。
「じゃあ、これからもハムちゃんって呼んでいいってこと?」
「もちろんでございます! となりの豚トロ様より頂いたこの名が嫌いなど、反吐が出るような話ですよ! これほど雄々しくカッコいい名前など他にはございません!」
「か、かっこいいかな……。どっちかというと可愛いと思ってつけたんだけど……。やっぱりカッコいい名前の方がいい?」
「カ、カッコかわいいと思います!!」
「カッコかわいい?」
聞き慣れない言葉に眉を寄せてしまう。
「はいっ! カッコいいと可愛いを併せ持つ龍族での最新のニューな流行りのトレンドですねっ! 流行を先取りされているとは、まさにとなりの豚トロ様と言えましょう!」
「そうなの?」
「はい! 私としてはこのような名を頂けたことに感涙を堪えない想いです!」
「そっか……」
よかった。
とりあえず名前は気に入っていたみたいだ。
ならまあいっか。
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