転生生活をまったり過ごしたいのに、自作キャラたちが私に世界征服を進めてくる件について

ihana

文字の大きさ
13 / 48

13話 祝賀会

しおりを挟む
 壁に耳あり障子にメアリーの残っていたすべてのPMCたちに私の帰還が知らされ、一日が過ぎた。
 今日は私の帰還を祝福する件と犬人を迎え入れる件でメアリー地下十階にて祝賀会が開かれることとなっている。

 ちなみに地下十階は主に私の居住空間や財宝部屋、拠点コアなどがある階で、神殿風にかなり力を入れて作った場所だ。
 その一部である大広間にて会が執り行われていた。
 残り資源も少ないであろうに、豪勢な食事が並べられていく。

「わぁぁ、すごーい!」
「となりの豚トロ様のために料理長の『コックどぅるどぅー』が腕によりをかけて料理を用意しておるのじゃ」
「鶏ちゃんか! たしかに料理系のスキルを積んだ覚えがあるなぁ」
「自身の身体を斬り裂いて唐揚げなどをつくっておったの。となりの豚トロ様のお役に立てると笑顔で料理をしておったぞえ」
「え゛!? 急に食べ辛くなったんだけど!」

 たしかに私が創ったPMCたちはかなり強めのが多いので、多少体を斬り刻んだくらいならば回復魔法で治せるが、それを食べるというのはあまりに猟奇的だ。

「何を言うておる。コックどぅるどぅーは鶏神種。味はもちろんのこと、食べるだけで長時間のバフ効果を受けることができのじゃ!」
「いや、そういう問題じゃないだろ……」

 ハムちゃんが台座の上に立ち、皆が静まり返る。

「聞けぇ!! 皆も知っての通り、我らが主、となりの豚トロ様が昨日ご帰還された! 我らはこれより主人のために忠義を尽くす!」
「「「うおおおおおおおお!!!!」」」
「差し当たっての課題は三つだ! 一つ目に壁に耳あり障子にメアリーの拠点強化を実施していく! 現状では消費財の需要と供給が釣り合ってなく、アイテムは減る一方だ! 周辺地理を探索して、拠点の本格稼働を目指すぞ!」
「「「うおおおおお!!」」」

 なんかノリが体育会系だな……。
 ハムちゃんって喋らせるとあんな感じなんだ。

「二つ目! この地はちょうど人族と魔族と亜人族の国境が交わる位置に存在している! 各勢力の情報収集と諜報活動を進めてく! 歯向かう奴は徹底的に叩いて血祭りにしてとなりの豚トロ様に捧げるのだぁ!!」
「「「うおおおおお!!」」」
「いやいやいや、血祭とかいいからっ! そういうのいらないからっ!」
「あっ、そ、そうですか……」

 なんだかハムちゃんが盛り下がってしまったが、本当にされたら困るので一応そのままにしておく。

「ん゛ん゛! それで最後に! 壁に耳あり障子にメアリーを出ていくという愚行を侵した馬鹿どもを探す必要がある! これに関しちゃあ――」
「あ、それあたしがやるー」
「……え?」

 一瞬で空気が凍ってしまう。
 が、これは私のやりたいことなので気にしない。

「私さ、元々世界を旅してまわる予定だったんだぁ。だからそのついでに探しとくよ。みんながどんな感じにしてるかも見てみたいし」
「ちょ、ちょっとお待ちくだせぇ、となりの豚トロ様。あなた様、恩自らがお探しに行かれるのですか?」
「うん。だってここにいたって暇じゃん」
「で、ですが、外にはどのような脅威があるとも限りませんですぜぃ?!」
「いやいや。私PVPもPVEも種族戦も全部トップランカーだよ。不意打ちくらっても負けることなんてないよ」
「む、むろんとなりの豚トロ様が比類なき強さをお持ちであることは存じております。ですが、万が一がないとも限りませんっ!」
「えー、外は行きたいよぉ。そんなに不安なら誰か一人ついてきてよ」

 と述べた瞬間、周囲の空気が変わった。
 それまで和気あいあいとしていたPMCたちが隠れた殺気のようなものを放ち始める。
 まるで、自分こそがその一人に選ばれてみせると言わんばかりだ。

「うーん、まあでも現状だとベリアルが一番有力かなぁ。ハムちゃんと大福ちゃんにはここを守っててほしいし、他の子たちじゃレベルに不安があるなぁ。その点、ベリアルはそもそも部外者だし、ハムちゃんや大福ちゃんともいい勝負してたからいいんじゃない?」
「反対じゃ! そのような得体の知れん輩に豚トロ様を任せるなぞ! 先ほどやった蜘蛛占いにも、お供にはもっちもちの大福を連れていくべきと出ておった!」
「そうだぜ! そいつは顔の形から目つきに至るまで、とてもじゃねぇが信用できねーぜ! 先ほどやった竜占いにも、お供にはハムスターのような竜王を連れていくべきだと出ていましたぜぃ!」

 どんな占いだ。
 ってかそんなのやってなかっただろ!

「私としては、別にどなたでも構いませんよ?」

 とベリアルがニヒルに笑いながら余裕綽々の態度を示す。
 すると、大福ちゃんとハムちゃんは更なる猛抗議をしてくるのだった。
 まったく何を張り合っているのか。

「うーん、めんどくさい。もうベリアルに決めた! 異論があるなら私と勝負して! 勝ったら聞いてあげる!」

 その後、PMCたちからたくさんの不満を聞くこととなったが、さすがに私に戦いを挑む者はいないようだ。
 そんなこんなで、私の旅のお供はベリアルに決まったのだった。
 つーか犬人たちの歓迎祝賀会はどうしたんだよ。
 誰もそれについて触れてないし……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

処理中です...