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25話 メアリーに戻って来て
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転移陣でメアリーの入り口近くに移動すると、ちょうど少し向こうでハムちゃんがなにやら狼系の中レベルPMCたちと話していた。
「だ・か・ら! 俺様のことをハムスター亜種って呼ぶんじゃねぇよ!! 俺はそんなちっぽけな生き物じゃねぇ!! 偉大なる龍帝様に向かってハムスターとはなんだゴラァ!」
「で、ですが、となりの豚トロ様が名付けられた名前ですし、それを勝手に変えられるのは不敬に当たりませんでしょうか?」
「むろん俺だって主のことは超尊敬してるし、超服従してるが、それでも我慢ならねぇ部分だってあんだ!」
「し、しかし……あっ――」
「あぁ!? なんだ? この俺様がハムスターって名前をとことん嫌ってるってわかったか?」
「い、いや、う、うしろに……」
「うしろ――?」
ハムちゃんがこちらへ振り返ってくる。
「……そうだったの?」
私が背後から悲哀の瞳とともにゆっくりと歩み寄ると、ハムちゃんがビックリ飛びあがった。
「あぇあ!? ととと、となりの豚トロ様!?!? い、いつお戻りに?!」
「今だけど……。名前……やっぱりやだったんだ……」
「あっ、いっ、こ、これはっ、いやっ、そのっ……」
「ごめんね。私、ずっと考えてたんだ。この前ハムちゃんが言ってたことってやっぱ本当だったんじゃないかなって……。無理して私に合わせてたんじゃないかなぁって……。やっぱりそうだったんだね……」
「ち、違います! これは……そう! ちょ、ちょうど今、私たちはお芝居の練習をしていたところなのですっ!!!」
「え? お芝居?」
「はいっ! 今度龍族の里で祭りがあるんですが、その出し物としてお芝居をやることとなっておりやした! だよなっ!!!」
ハムちゃんが狼系のPMCをすごい目力で睨みつけると、そのPMCも首をブンブン縦に振っていた。
「そ、そうなの? でも、今みたいなシーンをお芝居でやるのって変じゃない?」
「い、以前もお話しましたが、現在龍族の間では自分の名前を嫌っているフリをするのが大変流行っておりやす! ですので、劇中にもそう言ったシーンを織り交ぜることで、簡易に観客の共感を得ることができるというわけですぁ!!」
「そっか、そうなんだ。よかったぁ」
どうやら勘違いだったようで、安堵の息をつく。
それにしても、龍族の文化的価値観は勉強の余地があるかもしれない。
「はぁ……。俺もよかったですぁ」
「ねーねー、ってことは今度ハムちゃんが劇をやるってことでしょ?! それ私も見たいんだけど! すっごく気になる!」
「え゛? あ、いや、その劇はえっと、その……」
「ダメなの……?」
「も、もちろんとなりの豚トロ様がご希望であれば、俺がそれを拒否する理由なんてありやせん! た、ただ、えーっと……ひ、日取りはまだ決まっておりませんでして、だいぶ先なんじゃねぇかと思われます!」
「そっか。別にいいよー。決まったら教えてね。ハムちゃんの劇とか超見てみたいしっ!」
「そ、そうですか……。わかりました。またご連絡いたしやす」
「うん、よろしくねー」
そのまま連絡魔法で大福ちゃんを呼ぶ。
すると大福ちゃんはすぐさまメアリーの入り口から顔を出した。
「大福ちゃーん。ただいま~」
「となりの豚トロ様!!!!」
私の姿を見るや、大福ちゃんが100メートルくらいあった距離を1秒もかからず駆け抜けてくる。
そのせいで地面が抉れていた。
「無事かの? 身体に異常はあらんか? やはりもう出掛けるのはやめた方がいいぞえ。わらわと一緒に大福でも食べながらメアリーで過ごしておればよかろうて」
「いやいや、またすぐ出かけるから」
「そんなっ! 今帰ってきたばかりではあらんか!!」
「さ、叫ばなくても……。それよりさ、ちょっとメアリーに有用そうな物資がたくさんあったから運ぼうかと思ってさ。人手を集めてもらえる? ハムちゃんも手伝って~」
「わ、わかったのじゃ!!!」「わかりやした!」
大福ちゃんは仕事ができるタイプで、メアリーにいたPMCたちを集めてテキパキと指示を与えていく。
対して、ハムちゃんはどちらかと言うと脳筋系で、大福ちゃんのような指示役がいると最高効率で動くことができるタイプだ。
「ムフフ、やっぱ大福ちゃんいいなぁ」
「と、豚トロ様にそのように見つめられるのは光栄じゃが、なんだか背中がかゆくなってしまいそうじゃの」
彼女のクモの体に抱き着き、その柔らかさを堪能してしまう。
このフワフワの毛がたまらない。
体毛は羽毛のように触り心地が良く、それでいて蜘蛛の身体は雪見大福のようにモチモチとした弾力があるのだ。
おまけに大福ちゃんはとてつもなく頭が良く、強くて、そして何より可愛い。
上半身の人間部分だけであれば多くの男が一目ぼれしてしまうレベルの色白美人なのである。
「と、豚トロ様。そそそ、そのように抱き着かれては……。む、むろんわらわは大変に嬉しいのじゃが、お、畏れ多くて身が持たん」
「えー、いいじゃんよぉー。今度大福ちゃんの上でお昼寝したーい」
「そ、そうかの。いくらでもしていいぞえ」
体長が3メートルくらいあるのに、大福ちゃんはだいぶ小さくなっちゃっている。
「いいなぁ……」
ハムちゃんが羨ましがってたが、ハムちゃんの身体は棘々の硬い鱗で覆われているため、同じことをしたら痛そうだ。
ああ、やっぱりPMCに感情があるっていいね。
「だ・か・ら! 俺様のことをハムスター亜種って呼ぶんじゃねぇよ!! 俺はそんなちっぽけな生き物じゃねぇ!! 偉大なる龍帝様に向かってハムスターとはなんだゴラァ!」
「で、ですが、となりの豚トロ様が名付けられた名前ですし、それを勝手に変えられるのは不敬に当たりませんでしょうか?」
「むろん俺だって主のことは超尊敬してるし、超服従してるが、それでも我慢ならねぇ部分だってあんだ!」
「し、しかし……あっ――」
「あぁ!? なんだ? この俺様がハムスターって名前をとことん嫌ってるってわかったか?」
「い、いや、う、うしろに……」
「うしろ――?」
ハムちゃんがこちらへ振り返ってくる。
「……そうだったの?」
私が背後から悲哀の瞳とともにゆっくりと歩み寄ると、ハムちゃんがビックリ飛びあがった。
「あぇあ!? ととと、となりの豚トロ様!?!? い、いつお戻りに?!」
「今だけど……。名前……やっぱりやだったんだ……」
「あっ、いっ、こ、これはっ、いやっ、そのっ……」
「ごめんね。私、ずっと考えてたんだ。この前ハムちゃんが言ってたことってやっぱ本当だったんじゃないかなって……。無理して私に合わせてたんじゃないかなぁって……。やっぱりそうだったんだね……」
「ち、違います! これは……そう! ちょ、ちょうど今、私たちはお芝居の練習をしていたところなのですっ!!!」
「え? お芝居?」
「はいっ! 今度龍族の里で祭りがあるんですが、その出し物としてお芝居をやることとなっておりやした! だよなっ!!!」
ハムちゃんが狼系のPMCをすごい目力で睨みつけると、そのPMCも首をブンブン縦に振っていた。
「そ、そうなの? でも、今みたいなシーンをお芝居でやるのって変じゃない?」
「い、以前もお話しましたが、現在龍族の間では自分の名前を嫌っているフリをするのが大変流行っておりやす! ですので、劇中にもそう言ったシーンを織り交ぜることで、簡易に観客の共感を得ることができるというわけですぁ!!」
「そっか、そうなんだ。よかったぁ」
どうやら勘違いだったようで、安堵の息をつく。
それにしても、龍族の文化的価値観は勉強の余地があるかもしれない。
「はぁ……。俺もよかったですぁ」
「ねーねー、ってことは今度ハムちゃんが劇をやるってことでしょ?! それ私も見たいんだけど! すっごく気になる!」
「え゛? あ、いや、その劇はえっと、その……」
「ダメなの……?」
「も、もちろんとなりの豚トロ様がご希望であれば、俺がそれを拒否する理由なんてありやせん! た、ただ、えーっと……ひ、日取りはまだ決まっておりませんでして、だいぶ先なんじゃねぇかと思われます!」
「そっか。別にいいよー。決まったら教えてね。ハムちゃんの劇とか超見てみたいしっ!」
「そ、そうですか……。わかりました。またご連絡いたしやす」
「うん、よろしくねー」
そのまま連絡魔法で大福ちゃんを呼ぶ。
すると大福ちゃんはすぐさまメアリーの入り口から顔を出した。
「大福ちゃーん。ただいま~」
「となりの豚トロ様!!!!」
私の姿を見るや、大福ちゃんが100メートルくらいあった距離を1秒もかからず駆け抜けてくる。
そのせいで地面が抉れていた。
「無事かの? 身体に異常はあらんか? やはりもう出掛けるのはやめた方がいいぞえ。わらわと一緒に大福でも食べながらメアリーで過ごしておればよかろうて」
「いやいや、またすぐ出かけるから」
「そんなっ! 今帰ってきたばかりではあらんか!!」
「さ、叫ばなくても……。それよりさ、ちょっとメアリーに有用そうな物資がたくさんあったから運ぼうかと思ってさ。人手を集めてもらえる? ハムちゃんも手伝って~」
「わ、わかったのじゃ!!!」「わかりやした!」
大福ちゃんは仕事ができるタイプで、メアリーにいたPMCたちを集めてテキパキと指示を与えていく。
対して、ハムちゃんはどちらかと言うと脳筋系で、大福ちゃんのような指示役がいると最高効率で動くことができるタイプだ。
「ムフフ、やっぱ大福ちゃんいいなぁ」
「と、豚トロ様にそのように見つめられるのは光栄じゃが、なんだか背中がかゆくなってしまいそうじゃの」
彼女のクモの体に抱き着き、その柔らかさを堪能してしまう。
このフワフワの毛がたまらない。
体毛は羽毛のように触り心地が良く、それでいて蜘蛛の身体は雪見大福のようにモチモチとした弾力があるのだ。
おまけに大福ちゃんはとてつもなく頭が良く、強くて、そして何より可愛い。
上半身の人間部分だけであれば多くの男が一目ぼれしてしまうレベルの色白美人なのである。
「と、豚トロ様。そそそ、そのように抱き着かれては……。む、むろんわらわは大変に嬉しいのじゃが、お、畏れ多くて身が持たん」
「えー、いいじゃんよぉー。今度大福ちゃんの上でお昼寝したーい」
「そ、そうかの。いくらでもしていいぞえ」
体長が3メートルくらいあるのに、大福ちゃんはだいぶ小さくなっちゃっている。
「いいなぁ……」
ハムちゃんが羨ましがってたが、ハムちゃんの身体は棘々の硬い鱗で覆われているため、同じことをしたら痛そうだ。
ああ、やっぱりPMCに感情があるっていいね。
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