追放された私はどうやら魔王だったらしいのだが、せっかくなので前々からなりたかった勇者を目指すことにしました

ihana

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【第三章】 私の王子様

成れ果ての姿

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 息を吹き返した彼女にサイオンさんは彼女の手を握りしめ涙を流す。

「まだ予断を許さない状況ですが、何とか危機を脱しました。あとは回復魔法をかけ続ければ治るはずです」
「ああっ! ありがとう。レベルカ、よかった……!」

 とりあえずの危機を脱したことから大きく息を吐き出してしまう。
 ちゃんと助けられた。
 本当に良かった。

 けど、頭の片隅ではこの後のことを考え始めてしまう。
 本件の事件の首謀者がレベルカさんなのであれば、彼女は一命を取り留めたとしても明るい未来が待っているとは限らない。
 このような破壊行為に対し、どのような罰則が彼女に待ち受けているのかと将来を案じてしまう。
 ごめんなさいで済む話ではないであろう。


 ふと、それを考えていたところですぐ隣に違和感を覚えた。
 視線をやると、先ほど提出した魔適合物と思われるものがわずかにうごめいている。

 ……なに? 動いている??

 なんて思っているのも束の間、ソレは姿を変えながらどんどんと肥大化していった。

「なに……これ……!?」
「なんだ!?」

 手のひらサイズしかなかったのに、すぐさま人間大となってさらに拡大を続けている。

「ミュリナさん、これにはなにか邪悪なものを感じる」
「彼女を連れて離れて下さい! 私が様子を見ます」
「ああ、わかった」

 周囲にはまだ、これまでレベルカさんと戦っていた多くの兵士たちが瀕死状態で取り残されている。
 逃げるわけにも行かない。

 蠢くそやつはさらに巨大化して、二階建ての建物ほどの大きさへと変化していった。
 その中心部あたりから人間の女性を思わせる上半が形づくられる。
 その瞳が開いたと思ったら、ぎょっとしてしまった。

 顔面全体に大きな瞳が一つ。
 いや、それ以外にも、全身に目やら口やらが大小さまざまな大きさで発生している。
 それがギロリと私の方を睨みつけて来て、大きな口と思われるようなものが開いた。

「邪魔者ハ……全部、殺ス。サイオン様ノ、手柄ニスル。彼ノ目指ス、理想ノ社会ノタメニ」
「なに……? 何なの?!」

 まるで彼女の残滓があるかのように片言を述べたと思ったら、途端に奴の周囲に大量の魔法陣が生成する。

 攻撃魔法!?

「【モレキュラーシールド】!」

 次の瞬間、大量の火柱が飛んできた。

「ミュリナさん!!」

 道路の表面が溶融してマグマ化する中で、私は重力魔法で浮かび上がりながら、巨大化した化け物をねめつける。

 こいつ、敵なの?
 倒していいの?

「【サンダーストライク】」

 ためしに威力控えめの十を超える雷弾を放つ。
 すると――、相手を簡単に損傷させることができてしまった。

「あえ!?」

 奴の体の一部が吹き飛んだのも束の間、破損した箇所はすぐさま再生してしまう。

「ちょっ!? 回復!? はやっ!?」
「ミュリ、ナさん、にげ、て」

 サイオンさんに抱かれたレベルカさんが意識を取り戻したのか、息も絶え絶えの状態となりながらこちらに呼びかけてくる。

「レベルカさん!」
「レベルカ! 無理をするな!」
「それ、は、わたし、から分裂した、魔適合物。魔法そのものよ。勝て、ないわ」

 これ、魔法体ってこと?
 こちらを敵と認識した奴はまたも大量の魔法陣を生成してきたため、これを空中機動で避けていく。

「ダメよ、ミュリナさん。私は、一時的に、そいつと同化していたから、わかる。あなたじゃ、そいつに、勝てないわ」
「そうだ! 戦うなら僕が盾になる! 君はレベルカと逃げろ!」
「いいから二人は下がっていてください! 【ファイヤーバレット】!」

 飛来する魔法属性弾をこちらも魔法で迎撃していく。

「サイオン、様……私ノ、王子サマ……」

 その化け物から声が聞こえてきた。

「……ぇっ?」
「救ッテクレタ。生キル意味モ、楽シサモ、何モナイ、アノ地獄カラ」
「レベルカ、さん……」
「毎日ガ、ドレダケ惨メダッタカ」
「折角生マレテキタノニ、生キテイル事ガ辛イ」
「ナンデ人生ハ、コンナニ楽シクナイノ?」

 奴の――彼女のいくつもの声が響いてきて、私は自分がアイゼンレイク家にいた頃を思い返してしまう。

 なんで生まれて来たんだろう。

 ずっと、それを考え続けてきた。
 この世にせっかく生を受けたというのに、生きる意味を見出せない。
 彼女はだから……っ。

「救ッテクレタ」
「アノ地獄カラ」
「ダカラ想ウヨウニナッタ」

 思わず目を伏せ、彼女の気持ちに思いを馳せてしまう。

「……二人とも、離れて下さい」
「ダメだ! 僕は君に迷惑ばかりかけてきた! 最後の最後まで君に迷惑をかけるなんてできない!」
「そうよ、私の、せいだから。ミュリナさんは、関係ない」

 なおも魔法属性弾が私に襲い掛かって来てすべてを避けきることはできない。
 大量のそれが着弾して、私は煙にまみれた。

「ミュリナさんっ!」
「くそっ! あの数じゃ、防ぐのはとても……」

 しかし、煙が晴れていく中で、私は展開したシールドに守られながら、大量の魔法陣が展開されているのを目にしたのであろう。
 レベルカさんとサイオンさんはあり得ないものでも見ているかのような表情となっていた。

「なんだ……、これは!? これが……これ全部、魔法、なのか!?」
「あなた、グレドと戦ったときが全力じゃなかったの!?」

 空間魔法から私の杖を取り出して構える。

「すごく単純な話だったはずなんです。愛し合う二人がいて、お互いがお互いのことを想っていて、けど相手を想うあまりに、やることがすれ違っちゃって、気持ちまですれ違っちゃって」

「心ノ奥ニシマッタハズノ夢」
「デモ――、捨テラレナカッタ」
「ドウシテモ、捨テタクナカッタ」

「うん。わかるよ。自分の人生だもんね」

 光の礫が浮かび上がり、膨大な魔力が集まっていく。

「言エナカッタ」
「変ワッテシマウノガ、怖カッタ」

「そうだよね。でもさ。もう一回、やってみよう?」

 化け物はさらに大量の魔法を放ちながら、同時に触手のようなもので私を攻撃してくる。
 だが、展開しているシールドを貫くことはできない。
 私はその化け物へと優しい瞳を向ける。

「あなただって、こんな結末、嫌でしょう?」

「モウ方法ガナカッタ」
「アノ地獄ニハ戻リタクナイ」
「デモ、ドウシテモ、アノ人ヲ諦メラレナイ」

 化け物が声にならない叫び声をあげて、大量の魔法弾と共に私へとその巨体で体当たりを仕掛けてくる。
 なにがなんでも私は倒さなければならない相手なんだ。
 彼のために……。

「せっかく生まれて来たのよ。一回きりの人生なら、ハッピーエンドで終わりたいじゃん」

 展開魔法陣の構築が完成していく中、笑顔を向ける。

「あなたの人生だもの。自分の人生を、生きるのよ!! 
 ――元素壊滅魔法【エレメント・デストロイヤー】!」

 光が舞った。
 それらは花火のように四方八方へと散りながら、奴の身体を貫いていく。
 それだけで魔適合物の身体は元素単位にまで分解されてしまい、風となって消えてしまうのだった。
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