1話完結のSS集

月夜

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失敗作のアンドロイド/テーマ:父と娘

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 私は初の心を持ったアンドロイド。
 そして目の前にいるのが私を作ったお父さん。

 お父さんは人に近いアンドロイドを作るために年月をかけて私を完成させた。
 でも、一つ欠点があった。
 それは、感情を持っていてもロボットの肉体ではそれを表情に出すことができないこと。



「一号、笑うんだ」



 頑張って笑おうとしても私の表情はピクリとも動かず、お父さんは日に日に私を叱るようになった。



「笑うんだ。何故できない」

「ごめんなさい」



 謝るときですら感情が顔に出ず、悲しくても泣くことさえできない。
 いくら人に近く作られようとも、私はアンドロイドなんだ。

 鏡を見つめて自分の頬を上に引っ張り笑顔を作るけど、手を離すと戻ってしまう。
 お父さんの気持ちに応えたいのに、それが出来ない私は失敗作なんだろうか。

 私が完成して目を覚ましたとき、お父さんはとても喜んでいた。
 その笑顔をまた向けてほしくて、私は鏡の前で何度も笑顔を作ろうと頑張る。
 毎日お父さんに叱られながら、私は笑顔を作る練習を続けた。


 それから時は流れ、頬を引っ張らなくても笑顔を作れるようになった。
 ここ数ヶ月お父さんが私を呼んでくれることはなかったから、もしかしたらもう私なんていらなくなったのかもしれない。

 でも、ぎこちなくも笑えるようになった私を見たらお父さんは喜んでくれるに違いない。
 そしてまたあの時のように笑ってくれるかもしれない。

 私は部屋から出ると研究室へ向かう。
 開いた扉の向こうには、床に倒れているお父さんの姿。

 内蔵されたプログラムで状況を解析すると、私は練習した笑顔を浮かべ「出来たよ」とお父さんに言う。


 アンドロイドは、食事もお風呂もする必要がなく、お父さんに呼ばれることがない限り部屋から出ることはない。

 お父さんが呼びに来なくなった数ヶ月、それは、お父さんが亡くなっていたからだった。

 私を作るまでにかかった年月は人には長すぎた。
 こんな時ですら涙が流せない私は、やっぱり失敗作だ。


《完》
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