1話完結のSS集

月夜

文字の大きさ
94 / 101

小さな泥棒/テーマ:泥棒

しおりを挟む
 最近私はある事を考えていた。
 ここ数日、何故か私の物が一つずつ無くなる。
 ブレスレットだったりお菓子だったり。
 最初は、何処かに置き忘れたり無くしたり、お菓子なら食べたのかもしれないと持っていた。

 でも、流石に昨日テーブルに置いた家の鍵が無いのは可笑しい。
 私はいつも帰宅後は無くさないようにテーブルの上に置いている。
 床にも無いしどこに消えたのか。
 独り暮らしで他に持っていく人なんていない。
 まさか、泥棒が出入りしてるんじゃないかと考えるとゾッとする。

 何にしろ、原因がわからなければこの先も物は消え続ける。
 毎日一つは無くなるから、今夜も現れるに違いない。
 私はいつも通りの一日を過ごし、電気を消したあとベッドに横になる。
 何があってもいいように、警察の番号が打ち込まれた状態のスマホを手に寝たフリをする。

 あれからどのくらい経ったのか、気づけば眠っていた私は音で目を覚ます。
 瞼を薄く開きテーブルを見ると、そこには小さな人型の生き物。
 一度手に持って落としたのか、ピアスの片方を両手で持ち歩き出す。

 泥棒はアレで間違いないだろうけど、一体アレは何なのか。
 どこに行くのか見ていると、その小さな人型はタンスの隙間へと消えてしまう。

 翌日、目を覚ました私はあの人型が消えたタンスを動かした。
 すると後ろに小さなドアがあるのを見つけ、指で摘んで開けようとするが全く開かない。
 仕方ないので今夜も待つことにする。

 夜も遅い時間、タンスの隅からまたあの人型が出てきた。
 慣れたようにテーブルの脚にしがみつき上に上がると、昨日と同じピアスのもう片方を手に持つ。
 そのまま帰ろうとしたその人型に、私は隠し持っていた瓶を上から被せて捕まえた。



「泥棒さん、アナタは一体何者なの?」



 声をかけると、人型は驚いて尻餅をつく。
 言葉が話せないのか土下座しているから、多分私が何を言っているのかはわかるんだろう。



「もう一度聞くわ。アナタは何者なの?」



 話せないからどう説明したらいいのかわからないんだろう。
 考える仕草をしたあと、今持ち出そうとしていたピアスを私に向かって差し出すポーズをしている。

 これじゃあ会話にならないと思い「もう私の物を取っちゃダメよ」と言うと、コクコク頷く。
 危険そうには見えないし、取り敢えず瓶を持ち上げ出してあげると、その人型はピアスをテーブルの上に置き私に何度も頭を下げた。

 よくわからないけど『妖精』と似たような者何だろうか。
 私は台所からお菓子の袋を一つ取り出すと人型の前にチラつかせる。
 金平糖の入った小さな袋。
 前に消えたお菓子は、沢山ある中から金平糖が選ばれていたから、もしかしたら好きなのかもしれないと思った。



「ピアスの代わりにこれをあげる。だから、もう泥棒はダメだよ」



 キラキラと瞳を輝かせた人型は大きく頷いたので、私は金平糖を渡す。
 その後、ピョンっとテーブルからおりると、金平糖を手にタンスへ向かう。
 最後に手を振ってきたので私も手を振れば、その人型はタンスの隙間へと姿を消した。


 翌日。
 目を覚ました私がタンスの後ろを見ると、あのドアは無くなっていた。
 アレは一体何だったのか。
 私が見た夢だったのかと思っていたとき、テーブルの上に置かれた物に気づく。



「ブレスレットにもう片方のピアス。それに、金平糖以外のここ最近無くなった物が全部……」



 やっぱり夢なんかじゃない。
 あの小さな泥棒は確かに居たんだ。
 でも、もう現れることはないだろう。
 少なくとも私の家には。

 もしかしたら、他の家でも無くし物があるのは、あの人型の仕業なのかもしれない。
 大人にもなってメルヘンチックな考えをする自分を嘲笑いながら、私は戻ってきたピアスを付けてスペアの鍵をしまい、戻ってきた鍵を手に取り外へと出かける。


《完》
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ウインタータイム ~恋い焦がれて、その後~

さとう涼
恋愛
カレに愛されている間だけ、 自分が特別な存在だと錯覚できる…… ◇◇◇ 『恋い焦がれて』の4年後のお話(短編)です。 主人公は大学生→社会人となりました! ※先に『恋い焦がれて』をお読みください。 ※1話目から『恋い焦がれて』のネタバレになっておりますのでご注意ください! ※女性視点・男性視点の交互に話が進みます

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...