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1吸血 天使か悪魔かバンパイア

5 天使か悪魔かバンパイア

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「ラルム……」



 ラルムはフランス語で、意味は涙。



「あなたのお名前も教えていただけますか」 

「私は逢坂あいさか ゆい



 バンパイアとの生活はまだ始まったばかりだが、こうして改めてバンパイアのことを知ると、人とバンパイアとの違いは、羽があるか血を吸うのかという2つのみのようだ。

 人と同じ食事もバンパイアはとるものの、何日かに一度は血を欲する吸血衝動に駆られる。



「なるほど。貴女にピッタリな素敵なお名前ですね」



 名前を褒められるなんて今まで生きてきて初めてで、何だか嬉しいような気持ちを感じていると、突然ラルムは私の手首を掴みベッドへと押し倒した。

 私の瞳にラルムの姿が映り、怪しげに瞳の奥が光っているように見える。

 その瞳を見ればすぐにわかる。
 私が首を傾げて首筋を晒すと、それを合図にライムは遠慮なく噛みつく。
 一緒に暮らし始めてから2回目の吸血なのに、やはりこの痛みには慣れない。

 だが、次第に気持ちいいと感じてしまうこの感覚は癖になりそうで怖くもある。



「御馳走様」



 口端から垂れる血を、ペロリと舌で舐めとるラルムはどこか妖艶で私の鼓動を高鳴らせる。



「勿体無い。まだ首筋から血が垂れていますね」



 再びラルムが首筋へと顔を近付けると、今度は噛みつくのではなく、牙の跡から流れ出る血をぺろりと舐めとると吸う。

 ちゅっと聞こえる音に肩が跳ね上がり、甘い痺れを感じながら漏れそうになる声を耐える。



「クククッ、可愛らしいですね」

「っ、舐められるなんて思ってなかったからで……。いいから兎に角寝るわよ」



 恥ずかしさを誤魔化すように電気を消すと、布団を被りラルムに背を向ける。
 そんな私の姿に、ラルムはやれやれといった様子で棺の中へと入り蓋をした。

 静寂に包まれる部屋の中で、私の鼓動は大きく聞こえ眠れない。
 首筋に舌が這う感覚が今も鮮明に思い出され、私の頬は熱を持つ。

 相手はバンパイアであり、ただ私の血を欲しがっているだけの相手だというのに、見た目は人と変わらず、カッコイイ男の人だから意識してしまう。


 それから時間は過ぎ、いつの間にか眠ってしまっていた私は日の光で目を覚まし、壁側に置かれた棺へと視線を向ける。
 どうやらまだラルムは眠っているらしく、棺の蓋が閉じている。

 その間に着替えと朝食を済ませると、最後の登校へと向かう。
 最後というのは、なんといっても明日からは待ちに待った夏休みだからだ。
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