がぶちゅう★バンパイア

月夜

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3吸血 バンパイアと一緒の夏休み~2日目と最終日~

2 バンパイアと一緒の夏休み〜2日目と最終日〜

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 しばらく二人で会話をしていると、何時の間にか部屋の中が暗くなり、日が沈み始めていた。

 その時、扉をノックする音が部屋に響き、私は慌ててラルムに棺の中で隠れるように伝え、部屋の中を見られないように扉を少し開く。

 扉の前には陽と夏蓮の姿があり、私は部屋から出るとどうしたのか二人に尋ねる。

 どうやらこの近くに森があるらしく、3人で肝試しをしないかという誘いだった。

 取り敢えず今はこの場から二人を遠ざけたい。
 ラルムには隠れてもらったものの、部屋に棺があるなんて見られるわけには行かず、二人と一緒に肝試しへ行くことにした。

 向かった先は、別荘についたときから見えていた森。
 陽はこういうことが大好きで、夏蓮は臆病そうに見えるが、こういうことは全然平気。



「なんで折角海まで来て肝試しなのよ……」

「相変わらず結ってこういうのダメだよな。あっさりOKしたから克服したのかと思ったぜ」



 そう言いながら笑う陽にムッとしながらも、ここまで来てしまった以上は一人で帰るのも怖く覚悟を決めるしかない。

 不安な中始まった肝試し。
 何故か一人ずつ森に入っていくということになり、最初は陽、その後に私、夏蓮と続くことになった。

 陽が森へと入っていきつぎは私の番。
 脅かし役はいないから、3人で入ってもつまらないだろうって陽が言い出して一人ずつなんかになったけど、絶対に私が怖がるのを楽しんでるに違いない。

 目の前に見える森の入り口は暗く先が見えない。
 こんな中進むのかと思うと怖いが、陽にからかわれるのが嫌で、ゆっくりと森の中へと足を進める。



「携帯のライトだけでこの中進むなんて……。陽め、覚えてなさいよ!」



 いきなり決まった肝試し、懐中電灯など用意されているはずもなく、すっかり日も沈んでしまった森の中を、月明かりと携帯のライトだけが照らす。

 立ち止まれば進めなくなりそうで、怖がりながらも足を一歩一歩前に出して森の中を進んでいると、頭上に影が差した。

 月が雲に隠れたのだろうかと思い空を見上げようとすると、突然黒い何かが私の目の前に降ってきた。

 叫び声を上げそうになると、口を塞がれてしまう。



「しー、私ですよ」



 聞き覚えのある声に目を凝らして影をじっと見詰めるとラルムであることがわかる。



「ラルム、何でここに!?」



 驚く私にラルムは、部屋の前で話していた私達の会話が聞こえていたと話す。
 そこで私がオバケが苦手だと知り、ラルムはこっそりと後をつけてきたようだ。



「心配、してくれたんだ」

「はい、勿論です」



 ニコリと笑みを浮かべるラルムを見て、さっきまで怖くて高鳴っていた胸がキュッと締め付けられ、別の意味で鼓動が騒がしくなる。



「では、怖がりな結さんを夜の世界にお連れいたしましょう」



 そう言い、突然ラルムは私の体を姫抱きにすると羽を広げ、空へと飛び上がった。

 私は落ちないようにラルムの首に手を回すと、瞼をぎゅっと閉じる。



「結さん、もう目を開けても大丈夫ですよ」



 その言葉で閉じていた瞼をそっと上げると、目の前には大きなお月様。
 そして無数の星の輝きが瞳一杯に広がっていた。

 昨日見た夜空の何倍も綺麗に見えるのは、こんなにも空を近くに感じるからなのか、それとも、すぐそばにラルムがいるからなのか。
 そんな事を考えているとラルムは地上へと降り、私の足もようやく地面につく。

 周りを見ると、ここは肝試しの出発地点でありゴールとなる場所だった。



「夜の世界はいかがでしたか?」

「凄く綺麗で素敵だった」

「それはよかった。こんな綺麗な月と星が出ているのですから、きっと今日はオバケや幽霊はお休みですよ」



 オバケや幽霊に、月や星が綺麗だからお休み何て考えはあるのだろうかと笑みを溢す。

 そんな私に安心したのか「人が来るといけないので」と、ラルムは空へと飛び上がり別荘へと戻ってしまう。

 少し寂しくもあるが、星空よりもラルムを見ている方が多かったことを思い出すと、頬に熱が宿る。



「何で結が俺より先に着いてんだ?」



 最初に出発した陽がやって来ると、陽は不思議そうに首を傾げる。

 その後夏蓮も無事ゴールすると、陽から話を聞いて不思議そうにしている。
 この森は一本道のため、スレ違うことなく先にゴールは出来ないということを夏蓮が話す。

 そこで苦しい言い訳ではあるが、私が先に着いたのは、恐怖のあまり道ではないところを通ってしまったら、偶然辿り着いたということで無理矢理二人を納得させた。

 結局このことで陽にからかわれることになり、勇気を出して森に入った私の勇気は無駄となる結果に終わった。

 でも実際怖かったのは事実で、ラルムが来てくれなかったら一人でゴールすら出来ずに陽にからかわれていただろうから、結局結果は変わらなかっただろう。


 その後、別荘に戻ると皆部屋へと戻り、私はベッドに倒れ込む。



「お疲れ様です」

「もう着いてきちゃダメだからね。でも、ありがとう……」



 感謝の言葉は小さな声だったが、フッと笑みを浮かべるラルムを見るところ、どうやら私の声は届いたようだ。

 そんなお泊まり最後の慌ただしい日も終え、翌日には帰るのだと思うと、何だか寂しい気持ちを感じながら眠りにつく。


 そして翌日。
 自分の家へと戻ってきた私はベッドへと倒れ込んだ。

 色々あった2泊3日のお泊まりだったが、ラルムの事は知られずにすみ、ほっと胸を撫で下ろす。



「帰ってきたって感じがしますね」



 そう言いながら窓から入ってくるラルムの腕には棺が抱えられており、その棺は元の位置へと戻された。



「もって帰ってきたんだ。捨てちゃえばよかったのに」

「それはダメです。これがないと私は眠れないんですから」

「はいはい、わかったわかった。そんなに必死にならなくても……」



 棺の中で眠るラルムの気持ちは理解できず、私は枕に顔を埋め瞼を閉じた。

 瞼の裏に広がるのは、昨夜見た月や無数の星の輝き。
 そして、ラルムの横顔。

 あんな景色をラルムは今まで見てきたのだと思うと、私も少しは同じ景色が見れた気がして嬉しくなる。


 そんな事を思い出していると、疲れも溜まっていたのかいつの間にか眠ってしまっていた。

 目を擦りながら起き上がると、外はすでに暗くなり始めていた。
 一体どのくらいの時間眠ってしまっていたのだろうか。

 ベッドから降りようとすると、部屋が暗くて気づかなかったが、私の直ぐ横で、膝を床につき、頭をベッドに乗せ眠るラルムの姿があった。

 棺じゃないと寝れないと言っていたのに、私の側で眠っているこの状況が嬉しくて、ラルムの頭をそっと撫でる。

 きっとラルムも疲れていたのだろう。
 私はラルムを起こさないようにそっとベッドから降りると、小さな声でお休みと口にする。

 気持ちよさそうに眠るラルムをもう少し寝かせてあげようと部屋から出ると、晩御飯を作りにリビングへと行く。



「何か同族の臭いがすると思ったら。へ~、おもしれーじゃん」



 部屋の窓枠からラルムを見詰め、怪しげな笑みを浮かべる黒い影の存在に、まだ私もラルムも気づいていない。



「んっ……」



 ラルムが目を覚まし顔を上げると、窓へと視線を向け首を傾げる。



「今、同族の香りがしたような。でも、この香りは……」



 ある人物がラルムの頭に浮かんだが、そんなわけはないだろうと考えを掻き消すと、甘く香る結の血の香りを辿り、ラルムはリビングへと降りていく。


 その翌日、朝からラルムはプリンセス探しへと出掛けてしまい、家には私一人となっていた。

 とくにすることもなく、ベッドで寝転がりながら夏蓮とメールをする。
 話す内容は、夏蓮の家の別荘へ行った時のことや、夏休みの宿題について。
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