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3吸血 バンパイアと一緒の夏休み~2日目と最終日~

3 バンパイアと一緒の夏休み~2日目と最終日~

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「何だか不思議な感覚です。こんな風に心配されるのは」



 幸せそうに柔らかな笑みを浮かべるラルム。
 初めてみる表情に、何だか自分まで嬉しくなり口が緩む。



「はい、お仕舞い。これからはちゃんと自分で拭くのよ」

「いえ、これからは結さんが拭いてください」

「何でそうなるのよ!」



 ダメですかと眉を寄せ言う表情は悲しげで、そんな風に言われては断れるはずもなく、たまにならいいわよ、と渋々了承する。

 本当はこんな風に少しでも頼ってもらえるのは嬉しいが、それは心の中にしまっておく。



「で、プリンセスは見つかったの?」

「いえ、見つかりませんでした」



 プリンセスというのは、バンパイアの女ということらしい。

 現代ではバンパイアは減ってきており、今地球上にラルム以外のバンパイアが存在するかも怪しい。

 他にバンパイアなんて本当にいるのかラルムに尋ねると、一応一人心当たりがあるようだ。



「え、そうなの? どんな人、じゃなくて、どんなバンパイアなの?」



 ラルム以外のバンパイアの存在を知り、一体どんなバンパイアなのだろうかと興味津々。



「そうですね、あの方は一言で現すなら、粗暴、というのでしょうか」

「粗暴……。ラルムとは真逆って感じだね」



 やっぱりバンパイアにもいろんな性格がいるんだなと思いながらベッドに座り、折角だからもう少しバンパイアやラルムについて話を聞いてみようと口を開く。


 しばらく二人で会話をしていると、何時の間にか部屋の中が暗くなり、日が沈み始めていた。

 その時、扉をノックする音が部屋に響き、私は慌ててラルムに棺の中で隠れるように伝え、部屋の中を見られないように扉を少し開く。

 扉の前には陽と夏蓮の姿があり、私は部屋から出るとどうしたのか二人に尋ねる。

 どうやらこの近くに森があるらしく、3人で肝試しをしないかという誘いだった。

 取り敢えず今はこの場から二人を遠ざけたい。
 ラルムには隠れてもらったものの、部屋に棺があるなんて見られるわけには行かず、二人と一緒に肝試しへ行くことにした。

 向かった先は、別荘についたときから見えていた森。
 陽はこういうことが大好きで、夏蓮は臆病そうに見えるが、こういうことは全然平気。



「なんで折角海まで来て肝試しなのよ……」

「相変わらず結ってこういうのダメだよな。あっさりOKしたから克服したのかと思ったぜ」



 そう言いながら笑う陽にムッとしながらも、ここまで来てしまった以上は一人で帰るのも怖く覚悟を決めるしかない。

 不安な中始まった肝試し。
 何故か一人ずつ森に入っていくということになり、最初は陽、その後に私、夏蓮と続くことになった。

 陽が森へと入っていきつぎは私の番。
 脅かし役はいないから、3人で入ってもつまらないだろうって陽が言い出して一人ずつなんかになったけど、絶対に私が怖がるのを楽しんでるに違いない。

 目の前に見える森の入り口は暗く先が見えない。
 こんな中進むのかと思うと怖いが、陽にからかわれるのが嫌で、ゆっくりと森の中へと足を進める。
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