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白マス王子vs黒マス王子/テーマ:負けられない戦い
2 白マス王子vs黒マス王子
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それから翌日。
とうとうあの王子二人が私と同じ部活だということを知ったファンクラブの女子達が私を呼び出した。
連れて行かれた先には、白マス王子と黒マス王子のファンクラブのトップ二人の姿。
それもトップ会員だけあって上級生だ。
一体何を言われるのかと思っていると、何やらトップ二人は王子について語り始めた。
白マス王子。
いつも白いマスクをつけ、時々スマホを見ては頬を染め、笑みを浮かべている。
そんな姿が可愛らしいと、イケメンと可愛らしさを合わせ持つ王子。
黒マス王子。
いつも黒いマスクをつけ、時々スマホを見ては、白マス王子と同じく頬を染め笑みを浮かべる姿に心を撃ち抜かれる女子が現在も進行形で急増中。
時々意味のわからないことをいうところがミステリアスで素敵と人気。
この説明で思ったのは、二人の王子はスマホ画面の好きな女性キャラを見ていたんだろうなと。
黒マス王子のミステリアスについては、ただの冒険ファンタジーにのめり込んで拗らせただけだということは直ぐに想像がついたが言うのはやめておこう。
「でも、そんな王子について深く知る者はいないの」
「そうなのよ。だから、鈴鳴さんに頼みたいの」
こうして渡されたのは、二人の王子に聞いてほしいリスト。
白マス王子ファンと黒マス王子ファンの意見を纏めた結果のリストらしいが、全く面倒なことを頼まれたものだ。
自分達で聞いたらいいのではないかと言ってみたが、王子に話し掛けるなんて恐れ多いらしい。
中身を知ったらそうは思はないだろうけど。
部室へ行くとすでに二人の姿がある。
先程のリストに書かれた質問をささっと終わらせるべく、二人に直接質問していくことにした。
先ず一つ目の質問が「好きな人はいますか」だが、私の思った通り二人はアニメキャラを答えた。
王子ファンのイメージを壊さないように、そのキャラ達の性格を書いておく。
二つ目は「何故いつもマスクをしているのか」だが、これは私も気になる。
「マスクしてると落ち着くんだよね」
「ボクは前世の名残だ。前世でのボクは口元を布で覆っていたんだが、それは自分の素性を知られないためで──」
「はーい、長くなりそうなのでそこまででいいでーす」
その後もリスト全ての質問を聞き出したが、答えは全てこんな感じ。
私なりに、この二人のファンがガッカリしない様な内容に書き換えておく。
二人の答えを言い換えただけなので嘘ではない。
本当に知れば知るほど残念なイケメンではあるが、この二人、少し似ているような気がする。
翌日、ファンクラブトップの二人にリストの答えを渡し、今日も部活へと行く。
適当に過ごす為だけにつくった部活だというのに、いつの間にかあのイケメン二人に振り回されている気がする。
部室の戸を開けると、当の本人達は変わらずスマホでアニメを観ていた。
たまには私もアニメを観ながら寛ごうと、椅子に座りイヤホンをしてスマホでアニメを観る。
私が見るアニメは学園恋愛。
特に今ハマっているのは「トライアングルな恋」というアニメ。
イケメン二人から好意を寄せられるという三角関係の恋。
ネットだけの限定アニメだが、私はハマりにハマっていた。
「うーん、何でこの男はこの子がいいんだろうか」
「そうだな。ボクならこの子の親友のがいいな。嫉妬してるところなんか、ボクの前世の頃にいたマリーネに似てる」
いつからいたのか、両側から二人がスマホを覗いていた。
私にはアニメすらゆっくり見る時間は存在しないのだろうか。
「二人とも、自分達の好きなアニメ見てたんじゃないの」
「そうなんだけど、キミはどんなアニメを見てるのかと思ってね」
「アンタ、こういう三角関係がいいのか?」
アニメを見ているときに横からごちゃごちゃ言われるのは本当に迷惑で「アンタ達に関係ないでしょ」と怒ると、私は部室を出た。
ゆっくりアニメを見るには家に帰るしかない。
その翌日の部活時間。
昨日はあんな風に怒って出ていってしまったため、部室に入りにくく扉の前で立ち止まっていた。
出来るならもう部室に来たくないが、部活は強制参加のため来ないという選択肢は最初からない。
扉の前でこんなことを考えていても尚更入りにくくなるため、思い切って扉を開ける。
「やっと来たんだね」
「アンタを待ってたんだ」
いつもはスマホでアニメを見ている二人が、今日は何故か私を待っていたと言う。
腕を引かれ椅子に座らされると、二人は私の前に立ち真剣な瞳を私に向けて口を開く。
「好きです。私と付き合ってください」
「好きだ。ボクと付き合え」
何故今自分が告白されているのか。
からかわれているのだろうかと思い受け流そうとすると「真剣だ」と言われてしまい無かったことに出来そうにない。
「えっと、私は二人をそんな風には見てないというか、見れないというか……」
「わかった。なら、キミを好きにさせた方の勝ちってことだね」
「わかった。受けて立ってやるよ」
二人で話が進められ、なんだかとんでもない勝負が始まってしまった。
普通に過ごせば問題ないだろうとこの時は思っていたのに、実際はそんな甘いものではなく、翌日から二人は部活以外の時間にも私の教室にやってきてあれやこれやと私を振り向かせるアピールをしてきた。
そのアピールは二人が張り合うほど日に日に増していき、このままでは私の寛ぎライフは本当に無くなってしまう。
なんとかしなければと思っていると、部活の時間だからと二人が迎えに来た。
私は二人から逃げるため教室を飛び出す。
行く場所は決まっているため、部室に行けば嫌でも会うことになるんだが、こう毎日ずっと二人がそばにいたら拒否反応だって起きる。
慌てて階段を降りようとしたその時、階段を踏み外した私の体は前に傾く。
咄嗟にギュッと目を閉じたとき、私の体と腕に何かが当たる。
そっと瞼を開くと、私の体は前に回された腕に支えられていた。
顔を少し後ろに向ければ、そこには白マス王子の姿。
そして腕に視線を向ければ、私の腕をしっかりと掴む黒マス王子。
このとき不覚にも私は、鼓動が高鳴ってしまった。
「今回は負けたか。だが、これで勝った気になるなよ」
「うん。でも、勝つのは私だよ」
こんな時でも張り合う二人。
でも、思われるのも悪くないかもしれない。
「二人とも有難う」
ニコリと笑みを浮かべると、二人もニッと笑う。
なんだかんだで仲がいい、そんな三人の関係。
「あのアニメの真似して三角関係をやってみただけだったが」
「ちょっと、本気になりそうかな」
そんな二人の呟きなどは聞こえず、先に階段を降りて行くと私は二人を呼ぶ。
本当の勝負はまだこれから。
白マス王子と黒マス王子の遊びで始めたこの勝負。
本気になったのは、有難うの言葉に胸が高鳴ったから。
今日も開く部室の扉。
昨日のようにバラバラに見るんじゃなくて、みんなで一緒に同じアニメを見よう。
きっと部活時間も楽しいって思えるに違いない。
《完》
とうとうあの王子二人が私と同じ部活だということを知ったファンクラブの女子達が私を呼び出した。
連れて行かれた先には、白マス王子と黒マス王子のファンクラブのトップ二人の姿。
それもトップ会員だけあって上級生だ。
一体何を言われるのかと思っていると、何やらトップ二人は王子について語り始めた。
白マス王子。
いつも白いマスクをつけ、時々スマホを見ては頬を染め、笑みを浮かべている。
そんな姿が可愛らしいと、イケメンと可愛らしさを合わせ持つ王子。
黒マス王子。
いつも黒いマスクをつけ、時々スマホを見ては、白マス王子と同じく頬を染め笑みを浮かべる姿に心を撃ち抜かれる女子が現在も進行形で急増中。
時々意味のわからないことをいうところがミステリアスで素敵と人気。
この説明で思ったのは、二人の王子はスマホ画面の好きな女性キャラを見ていたんだろうなと。
黒マス王子のミステリアスについては、ただの冒険ファンタジーにのめり込んで拗らせただけだということは直ぐに想像がついたが言うのはやめておこう。
「でも、そんな王子について深く知る者はいないの」
「そうなのよ。だから、鈴鳴さんに頼みたいの」
こうして渡されたのは、二人の王子に聞いてほしいリスト。
白マス王子ファンと黒マス王子ファンの意見を纏めた結果のリストらしいが、全く面倒なことを頼まれたものだ。
自分達で聞いたらいいのではないかと言ってみたが、王子に話し掛けるなんて恐れ多いらしい。
中身を知ったらそうは思はないだろうけど。
部室へ行くとすでに二人の姿がある。
先程のリストに書かれた質問をささっと終わらせるべく、二人に直接質問していくことにした。
先ず一つ目の質問が「好きな人はいますか」だが、私の思った通り二人はアニメキャラを答えた。
王子ファンのイメージを壊さないように、そのキャラ達の性格を書いておく。
二つ目は「何故いつもマスクをしているのか」だが、これは私も気になる。
「マスクしてると落ち着くんだよね」
「ボクは前世の名残だ。前世でのボクは口元を布で覆っていたんだが、それは自分の素性を知られないためで──」
「はーい、長くなりそうなのでそこまででいいでーす」
その後もリスト全ての質問を聞き出したが、答えは全てこんな感じ。
私なりに、この二人のファンがガッカリしない様な内容に書き換えておく。
二人の答えを言い換えただけなので嘘ではない。
本当に知れば知るほど残念なイケメンではあるが、この二人、少し似ているような気がする。
翌日、ファンクラブトップの二人にリストの答えを渡し、今日も部活へと行く。
適当に過ごす為だけにつくった部活だというのに、いつの間にかあのイケメン二人に振り回されている気がする。
部室の戸を開けると、当の本人達は変わらずスマホでアニメを観ていた。
たまには私もアニメを観ながら寛ごうと、椅子に座りイヤホンをしてスマホでアニメを観る。
私が見るアニメは学園恋愛。
特に今ハマっているのは「トライアングルな恋」というアニメ。
イケメン二人から好意を寄せられるという三角関係の恋。
ネットだけの限定アニメだが、私はハマりにハマっていた。
「うーん、何でこの男はこの子がいいんだろうか」
「そうだな。ボクならこの子の親友のがいいな。嫉妬してるところなんか、ボクの前世の頃にいたマリーネに似てる」
いつからいたのか、両側から二人がスマホを覗いていた。
私にはアニメすらゆっくり見る時間は存在しないのだろうか。
「二人とも、自分達の好きなアニメ見てたんじゃないの」
「そうなんだけど、キミはどんなアニメを見てるのかと思ってね」
「アンタ、こういう三角関係がいいのか?」
アニメを見ているときに横からごちゃごちゃ言われるのは本当に迷惑で「アンタ達に関係ないでしょ」と怒ると、私は部室を出た。
ゆっくりアニメを見るには家に帰るしかない。
その翌日の部活時間。
昨日はあんな風に怒って出ていってしまったため、部室に入りにくく扉の前で立ち止まっていた。
出来るならもう部室に来たくないが、部活は強制参加のため来ないという選択肢は最初からない。
扉の前でこんなことを考えていても尚更入りにくくなるため、思い切って扉を開ける。
「やっと来たんだね」
「アンタを待ってたんだ」
いつもはスマホでアニメを見ている二人が、今日は何故か私を待っていたと言う。
腕を引かれ椅子に座らされると、二人は私の前に立ち真剣な瞳を私に向けて口を開く。
「好きです。私と付き合ってください」
「好きだ。ボクと付き合え」
何故今自分が告白されているのか。
からかわれているのだろうかと思い受け流そうとすると「真剣だ」と言われてしまい無かったことに出来そうにない。
「えっと、私は二人をそんな風には見てないというか、見れないというか……」
「わかった。なら、キミを好きにさせた方の勝ちってことだね」
「わかった。受けて立ってやるよ」
二人で話が進められ、なんだかとんでもない勝負が始まってしまった。
普通に過ごせば問題ないだろうとこの時は思っていたのに、実際はそんな甘いものではなく、翌日から二人は部活以外の時間にも私の教室にやってきてあれやこれやと私を振り向かせるアピールをしてきた。
そのアピールは二人が張り合うほど日に日に増していき、このままでは私の寛ぎライフは本当に無くなってしまう。
なんとかしなければと思っていると、部活の時間だからと二人が迎えに来た。
私は二人から逃げるため教室を飛び出す。
行く場所は決まっているため、部室に行けば嫌でも会うことになるんだが、こう毎日ずっと二人がそばにいたら拒否反応だって起きる。
慌てて階段を降りようとしたその時、階段を踏み外した私の体は前に傾く。
咄嗟にギュッと目を閉じたとき、私の体と腕に何かが当たる。
そっと瞼を開くと、私の体は前に回された腕に支えられていた。
顔を少し後ろに向ければ、そこには白マス王子の姿。
そして腕に視線を向ければ、私の腕をしっかりと掴む黒マス王子。
このとき不覚にも私は、鼓動が高鳴ってしまった。
「今回は負けたか。だが、これで勝った気になるなよ」
「うん。でも、勝つのは私だよ」
こんな時でも張り合う二人。
でも、思われるのも悪くないかもしれない。
「二人とも有難う」
ニコリと笑みを浮かべると、二人もニッと笑う。
なんだかんだで仲がいい、そんな三人の関係。
「あのアニメの真似して三角関係をやってみただけだったが」
「ちょっと、本気になりそうかな」
そんな二人の呟きなどは聞こえず、先に階段を降りて行くと私は二人を呼ぶ。
本当の勝負はまだこれから。
白マス王子と黒マス王子の遊びで始めたこの勝負。
本気になったのは、有難うの言葉に胸が高鳴ったから。
今日も開く部室の扉。
昨日のようにバラバラに見るんじゃなくて、みんなで一緒に同じアニメを見よう。
きっと部活時間も楽しいって思えるに違いない。
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