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流れる涙は貴方の気持ち◆R18
1 流れる涙は貴方の気持ち
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新しい物、珍しい物が好きな武将、織田 信長、そんな信長が今一番欲しいモノは、城下にいる女だった。
だが、人の心が簡単に手に入るはずもなく、信長は毎日女に贈り物をしていた。
「迷惑です」
今日も届けられた贈り物、それも毎日ご丁寧に信長本人が綾如の元まで持ってくるのだ。
勿論、数人の家臣も引き連れてはいるが、一国の主君がこのようなただの町娘に毎日贈り物をしていれば、城下町でも直ぐに噂となっていた。
「今日はお前に似合いそうな着物を持ってきてやったぞ!」
「もう一度言います。迷惑です。それに、頼んでもいませんから」
綾如はハッキリと断っているのだが、照れずともよいと言い、信長は綾如の言葉を照れ隠しだと思っている。
そして今日も、無理矢理着物を押し付けると、信長は城へと戻っていく。
「はぁ……」
「すみません、綾如様」
ため息をつく綾如に声をかけたのは、信長の家臣であり右腕とも呼ばれている森 蘭丸だった。
「蘭丸様が謝る必要などございません」
「ですが、信長様の行動を止められぬ我々にも責任はありますので」
信長と違い蘭丸は、いつも綾如を心配し声をかけてくれていた。
欲しいモノはどんな手を使ってでも手に入れる信長は、なんとしてでも綾如を自分のモノにしたいようだが、この事に関しては信長の家臣達も頭を悩ませている。
そんなある日届けられたのは、贈り物ではなく一枚の文だ。
蘭丸から受け取った文を読んでみると、そこには、城へ来いとだけ書かれている。
「これは……」
「信長様は綾如様を城へ招き、宴を開こうとしておられます」
そんな誘いを引き受けるはずもなく、綾如は蘭丸に、行きませんと信長に伝えてもらうように言う。
だが、信長に伝えたところで綾如を無理矢理に連れ去ってでも城へ連れていくだろうと蘭丸に言われ、綾如は渋々了承するしかなかった。
「綾如様申し訳ありません。信長様の突然の思い付きで……」
「いえ、蘭丸様は気になされないでくださいませ」
ニコリと笑みを浮かべる綾如に、蘭丸はありがとうございますと頭を下げると、夕時頃お迎えに参りますと言い残し城へと戻っていく。
だが綾如は、この時あることを考えていた。
この宴の席で信長に、しっかり自分の気持ちを伝えようと。
このままでは信長に振り回されてばかりの人生になってしまうと思った綾如は決心をし、日が暮れるのを待つ。
それから時間は過ぎ、馬の鳴き声が家の外で聞こえ出てみると、蘭丸の姿がある。
迎えに来た蘭丸に連れられ、綾如は信長の待つ城へと向かう。
城へとつき、蘭丸に案内された大広間には沢山の武将の姿があり、どうやら綾如
のことは信長から聞いているらしく、綾如が来たとたんに皆が騒ぎ始める。
「お前が信長様に気に入られたって女か」
「流石信長様だ、見る目がある!」
そこにいたのは、知らない者はいないだろうという有名な武将ばかりだ。
そして、広間の一番奥に座るのが、ここにいる全員を家臣、同盟とする信長だ。
「綾如、こっちへ来い」
信長に言われるまま、綾如は信長の座る場所へと歩みを進める。
直ぐ側までいくと、隣に座るように言われたため綾如は腰を下ろす。
「お前のために開いた宴だ、存分に楽しむがよい」
綾如は武将達と並べられた御馳走やお酒を飲むが、言いたいことがあったはずなのに口からでない。
改めて凄い人なのだと実感すると、断ることが怖くなったのだ。
信長について噂されているのは、珍しいもの好きと言うだけでなく、逆らう者には容赦がないと言われている。
そんな人の言葉を断れば、自分の命が危ないかもしれないと思うと、綾如は結局何も話せなかった。
「今日は何も話さぬのだな」
「え?」
「何時もなら、煩いくらいに吠えるであろう」
「っ……そ、それは」
信長様が勝手なことばかり言うからだと言おうとした綾如だったが、綾如の言葉を蘭丸が遮る。
「綾如様はかなり酔われているご様子です。私が部屋までお連れ致しますので休ませてはいかがでしょうか?」
「ああ、そうだな。蘭丸、お前の提案した宴、なかなかによかったぞ」
「え……?」
蘭丸は、信長の思い付きだと言っていたはずだが、その信長は蘭丸の提案だと言っていることを綾如は不思議に感じた。
「では綾如様、こちらへ」
「あ、はい……」
蘭丸に連れられ入った部屋は、窓から月明かりだけだ入り部屋だった。
広間からは離れているため静かで、宴での騒がしさが嘘のように感じる。
「蘭丸様、ありがとうござ、っ!?」
蘭丸に振り返りお礼を伝えようとすると、突然綾如の体は布団へと押し倒されてしまった。
布団へと倒れた衝撃で、背中が少し痛むのを感じながら瞑ってしまった瞼を上げると目の前には、不敵な笑みを浮かべる蘭丸の姿があった。
体の上に乗られているため、身動きがとれず身動ぐ綾如だがビクともしない。
「蘭丸さん、退いてください!」
「すみませんがそれはできません。正直、綾如様、貴女が目障りなのです」
冷たい瞳に射竦められ、綾如は恐怖で動けなくなる。
その瞳は、今までの優しい蘭丸の物ではなく、嫉妬や怒り、色々な負の感情を宿していた。
だが、人の心が簡単に手に入るはずもなく、信長は毎日女に贈り物をしていた。
「迷惑です」
今日も届けられた贈り物、それも毎日ご丁寧に信長本人が綾如の元まで持ってくるのだ。
勿論、数人の家臣も引き連れてはいるが、一国の主君がこのようなただの町娘に毎日贈り物をしていれば、城下町でも直ぐに噂となっていた。
「今日はお前に似合いそうな着物を持ってきてやったぞ!」
「もう一度言います。迷惑です。それに、頼んでもいませんから」
綾如はハッキリと断っているのだが、照れずともよいと言い、信長は綾如の言葉を照れ隠しだと思っている。
そして今日も、無理矢理着物を押し付けると、信長は城へと戻っていく。
「はぁ……」
「すみません、綾如様」
ため息をつく綾如に声をかけたのは、信長の家臣であり右腕とも呼ばれている森 蘭丸だった。
「蘭丸様が謝る必要などございません」
「ですが、信長様の行動を止められぬ我々にも責任はありますので」
信長と違い蘭丸は、いつも綾如を心配し声をかけてくれていた。
欲しいモノはどんな手を使ってでも手に入れる信長は、なんとしてでも綾如を自分のモノにしたいようだが、この事に関しては信長の家臣達も頭を悩ませている。
そんなある日届けられたのは、贈り物ではなく一枚の文だ。
蘭丸から受け取った文を読んでみると、そこには、城へ来いとだけ書かれている。
「これは……」
「信長様は綾如様を城へ招き、宴を開こうとしておられます」
そんな誘いを引き受けるはずもなく、綾如は蘭丸に、行きませんと信長に伝えてもらうように言う。
だが、信長に伝えたところで綾如を無理矢理に連れ去ってでも城へ連れていくだろうと蘭丸に言われ、綾如は渋々了承するしかなかった。
「綾如様申し訳ありません。信長様の突然の思い付きで……」
「いえ、蘭丸様は気になされないでくださいませ」
ニコリと笑みを浮かべる綾如に、蘭丸はありがとうございますと頭を下げると、夕時頃お迎えに参りますと言い残し城へと戻っていく。
だが綾如は、この時あることを考えていた。
この宴の席で信長に、しっかり自分の気持ちを伝えようと。
このままでは信長に振り回されてばかりの人生になってしまうと思った綾如は決心をし、日が暮れるのを待つ。
それから時間は過ぎ、馬の鳴き声が家の外で聞こえ出てみると、蘭丸の姿がある。
迎えに来た蘭丸に連れられ、綾如は信長の待つ城へと向かう。
城へとつき、蘭丸に案内された大広間には沢山の武将の姿があり、どうやら綾如
のことは信長から聞いているらしく、綾如が来たとたんに皆が騒ぎ始める。
「お前が信長様に気に入られたって女か」
「流石信長様だ、見る目がある!」
そこにいたのは、知らない者はいないだろうという有名な武将ばかりだ。
そして、広間の一番奥に座るのが、ここにいる全員を家臣、同盟とする信長だ。
「綾如、こっちへ来い」
信長に言われるまま、綾如は信長の座る場所へと歩みを進める。
直ぐ側までいくと、隣に座るように言われたため綾如は腰を下ろす。
「お前のために開いた宴だ、存分に楽しむがよい」
綾如は武将達と並べられた御馳走やお酒を飲むが、言いたいことがあったはずなのに口からでない。
改めて凄い人なのだと実感すると、断ることが怖くなったのだ。
信長について噂されているのは、珍しいもの好きと言うだけでなく、逆らう者には容赦がないと言われている。
そんな人の言葉を断れば、自分の命が危ないかもしれないと思うと、綾如は結局何も話せなかった。
「今日は何も話さぬのだな」
「え?」
「何時もなら、煩いくらいに吠えるであろう」
「っ……そ、それは」
信長様が勝手なことばかり言うからだと言おうとした綾如だったが、綾如の言葉を蘭丸が遮る。
「綾如様はかなり酔われているご様子です。私が部屋までお連れ致しますので休ませてはいかがでしょうか?」
「ああ、そうだな。蘭丸、お前の提案した宴、なかなかによかったぞ」
「え……?」
蘭丸は、信長の思い付きだと言っていたはずだが、その信長は蘭丸の提案だと言っていることを綾如は不思議に感じた。
「では綾如様、こちらへ」
「あ、はい……」
蘭丸に連れられ入った部屋は、窓から月明かりだけだ入り部屋だった。
広間からは離れているため静かで、宴での騒がしさが嘘のように感じる。
「蘭丸様、ありがとうござ、っ!?」
蘭丸に振り返りお礼を伝えようとすると、突然綾如の体は布団へと押し倒されてしまった。
布団へと倒れた衝撃で、背中が少し痛むのを感じながら瞑ってしまった瞼を上げると目の前には、不敵な笑みを浮かべる蘭丸の姿があった。
体の上に乗られているため、身動きがとれず身動ぐ綾如だがビクともしない。
「蘭丸さん、退いてください!」
「すみませんがそれはできません。正直、綾如様、貴女が目障りなのです」
冷たい瞳に射竦められ、綾如は恐怖で動けなくなる。
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