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第参武将 想いは時を越え
7 想いは時を越え
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今は文より才蔵のことが気になるというのに。
前に甲斐を訪れた際に才蔵の姿はなく、その数日後、私の城に現れた才蔵は信長についたと言い残し、理由も応えないまま私の前から姿を消した。
そんな事があったあとの武将達からの文。
私は悩んだ。
文を誰に出すかもだが、それ以上に才蔵のことが気になって仕方がない。
真田十勇士の仲間と仲がよく、幸村を慕ってた才蔵。
そんな才蔵が理由もなく皆を裏切るはずがない。
だが今は、この目の前の文をどうするか。
私は誰を選ぶなんて出来ない。
どうしたらいいのかわからず文に視線を落とすと、一通多くあることに気づく。
確かに届いたのは、信長、信玄、政宗、謙信の四通だったはず。
なのに私の前にある文は五通。
最後の一通を手に取り開くと、綴られた文字を読む。
俺にこんなこと言われても困らせることはわかってる。
それでも、俺はお前を好いていると伝えておきたかった。
アンタは笑ってろ。
俺はその未来を望んでる。
もしアンタに何かあれば、俺は時を越えてでもアンタを守る。
そう綴られた文の最後には、ハッキリと才蔵の名が書かれていた。
私の瞳からは涙が溢れ視界が歪む。
ぽたぽたと頬を伝い落ちる涙は文を濡らし文字が滲む。
「っ、才蔵……」
私は涙を拭くと筆を取り、文に文字を綴る。
決めた一人に贈る私の気持ちを込めた手紙。
筆を置き、私はその手紙を届けてもらうため女中を呼ぼうとしたとき、城内が騒がしく煙が立ち込めていることに気づく。
何事かと思い襖を開けると、すでに火の手は私の部屋にまで来ていた。
逃げるために通路を走るが、天井から崩れてきた柱の下敷きとなり身動きが取れなくなる。
あの人に伝えたかった想いを綴った手紙をぐっと握り締め、私はその人の名を口にして息絶えた。
そう、その文を送る相手は――。
「おい、どうしたんだよボケっとして。っ……!?」
突然苦無が展示されているらしい前で立ち尽くしていた私に才蔵から声をかけられる。
すると頬には涙が伝い、その姿を見て才蔵が驚いた表情を浮かべている。
でも、思い出してしまった。
あの文を送るはずだった相手も、前世での事全て。
私は静かに才蔵に尋ねる。
何故才蔵は佐助達を裏切ったのか。
前世の私は裏切ったなんて信じられなかった。
きっと何か理由があった筈だから。
「あの日私のお城に現れた才蔵は、理由を話そうとはしてくれなかった」
「アンタ、まさか思い出したのか」
才蔵は黙り込むと、私の真剣な表情を見て諦めたように話す。
才蔵が裏切った理由、それは、私だった。
あの時信長は手段を選ばず、無理矢理にでも私を自分のものにするつもりだった。
文の返事が自分ではない誰かに宛てられたら、私を殺すつもりでいた。
そんな信長から私を守るため、才蔵は信長についた。
怪しい動きがあればすぐに気づくことができるから。
でも、それは意味のないものになってしまった。
守るはずだった私の城は燃やされ、姫も亡くなってしまったから。
前に甲斐を訪れた際に才蔵の姿はなく、その数日後、私の城に現れた才蔵は信長についたと言い残し、理由も応えないまま私の前から姿を消した。
そんな事があったあとの武将達からの文。
私は悩んだ。
文を誰に出すかもだが、それ以上に才蔵のことが気になって仕方がない。
真田十勇士の仲間と仲がよく、幸村を慕ってた才蔵。
そんな才蔵が理由もなく皆を裏切るはずがない。
だが今は、この目の前の文をどうするか。
私は誰を選ぶなんて出来ない。
どうしたらいいのかわからず文に視線を落とすと、一通多くあることに気づく。
確かに届いたのは、信長、信玄、政宗、謙信の四通だったはず。
なのに私の前にある文は五通。
最後の一通を手に取り開くと、綴られた文字を読む。
俺にこんなこと言われても困らせることはわかってる。
それでも、俺はお前を好いていると伝えておきたかった。
アンタは笑ってろ。
俺はその未来を望んでる。
もしアンタに何かあれば、俺は時を越えてでもアンタを守る。
そう綴られた文の最後には、ハッキリと才蔵の名が書かれていた。
私の瞳からは涙が溢れ視界が歪む。
ぽたぽたと頬を伝い落ちる涙は文を濡らし文字が滲む。
「っ、才蔵……」
私は涙を拭くと筆を取り、文に文字を綴る。
決めた一人に贈る私の気持ちを込めた手紙。
筆を置き、私はその手紙を届けてもらうため女中を呼ぼうとしたとき、城内が騒がしく煙が立ち込めていることに気づく。
何事かと思い襖を開けると、すでに火の手は私の部屋にまで来ていた。
逃げるために通路を走るが、天井から崩れてきた柱の下敷きとなり身動きが取れなくなる。
あの人に伝えたかった想いを綴った手紙をぐっと握り締め、私はその人の名を口にして息絶えた。
そう、その文を送る相手は――。
「おい、どうしたんだよボケっとして。っ……!?」
突然苦無が展示されているらしい前で立ち尽くしていた私に才蔵から声をかけられる。
すると頬には涙が伝い、その姿を見て才蔵が驚いた表情を浮かべている。
でも、思い出してしまった。
あの文を送るはずだった相手も、前世での事全て。
私は静かに才蔵に尋ねる。
何故才蔵は佐助達を裏切ったのか。
前世の私は裏切ったなんて信じられなかった。
きっと何か理由があった筈だから。
「あの日私のお城に現れた才蔵は、理由を話そうとはしてくれなかった」
「アンタ、まさか思い出したのか」
才蔵は黙り込むと、私の真剣な表情を見て諦めたように話す。
才蔵が裏切った理由、それは、私だった。
あの時信長は手段を選ばず、無理矢理にでも私を自分のものにするつもりだった。
文の返事が自分ではない誰かに宛てられたら、私を殺すつもりでいた。
そんな信長から私を守るため、才蔵は信長についた。
怪しい動きがあればすぐに気づくことができるから。
でも、それは意味のないものになってしまった。
守るはずだった私の城は燃やされ、姫も亡くなってしまったから。
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