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第2話 ぐるぐる★前奏曲(プレリュード)
どうしてもぐるぐるが欲しいの
しおりを挟む「僕ひとりでは、その場所まで行くのはちょっと…敵が…」
「あン? 採取の護衛なら俺達が受けるぜ。割安でも、ぐるぐるの現物支給込みでもどっちでもいい」
「ええと……その……」
なおのこと言いにくそうに、イェロンはモジモジと身をよじる。
「お。学者センセー、こんな所に」
いかにもガラの悪そうな男がイェロンに近づき、馴れ馴れしく肩を抱いて揺する。
「部屋にいないからさぁ、逃げたかと思って心配しちゃったよぉ」
「食事ですよ。脳にエネルギーを補給しないと考えもまとまりません」
「考えるのもいいけど、ちゃんと稼いでよぉ? ん? こちら、オトモダチ? 金、借りられそう?」
「悪いが、仕事の交渉中でね。外してくれないか?」
言葉は丁寧だが有無を言わさぬラヴィの迫力に、男はたじろぎ、後ずさる。
「仕事?、仕事ね。金、入るのね? じゃ、しっかり稼いで。今月の分、あと3日だからね!」
大袈裟に手を振って消える男。
「……はあ。すいません。お恥ずかしい所を」
イェロンは片手を顔に当て、ため息をつく。
「“毒蛇”ガースン。あんなのに金借りてるの? 悪いウワサしか聞かないわよ」
今の騒ぎで気づいたらしいステラが戻って来た。
「どうしても必要になって……バカでした。お金を借りるということ、ちゃんと考えたことがなかったから適当に、おためごかしの親切に騙されて契約書を交わしてしまったんです。でも、これでお分かりでしょう? 僕には今、護衛を雇う余裕はないんです」
「確かに、ぐるぐるの採取だけじゃ元が取れねーな」
「他に何か売れそうな物の採取場所を知ってるなら、付き合うわよ?」
「僕の研究はダンジョン内の植物を対象としていて、学術的に意義のある発見はありましたが、売って大金になるほどの効能を持つ薬草はまだ……集めてもせいぜい、地下一階でゴブリンを相手にしてるのと変わらない稼ぎです」
「う~む」
「じゃ、あちこち鑑定しまくって、新しいものを探すとかは?」
「「 え? 」」
何気なく言った俺の言葉に、イェロンだけでなくラヴィも驚いた顔をしている。
「さっき、鑑定してから採取するって言ってたじゃん。ダンジョンには、まだ知られてないだけで価値のある物が他にもあるかも」
「なるほど。研究対象以外を鑑定した事はありませんが、それもアリですね」
考えたこともなかった…と、つぶやくイェロン。
「ちょっと待て。お前、『鑑定』が使えるのか?」
「使えますよ? 鉱物でもモンスターでもアイテムでも、理論上は、できるハズです」
「ならいくらでも稼げるだろうが」
ラヴィの言葉に、キョトン、と首をかしげるイェロン。
「よし、分かった。明日、ぐるぐる探しを手伝ってくれたら稼ぎ方を教えてやる。借金なんざ、すぐに返せるぞ」
「あなたの販売ルートを奪おうってんじゃないの。全ては山盛りのぐるぐるのため!ね!」
お願ぁい❤︎と、優しくほほをなでるステラ。イェロンは顔を赤くして硬直している。
どうやら、明日はダンジョン初挑戦になりそうだ。
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