ダンス★ダンス★パパラチア! 〜異世界で猫とダンスしたり冒険したりで毎日が忙し過ぎる!〜

浅間遊歩

文字の大きさ
17 / 48
第3話 ダンジョン★ビートが聞こえる

ダンジョンの住人

しおりを挟む

 ダンジョンの場所は案内図で知っていたが、平面の地図で見るのと実際の姿を直接見るのでは全然違った。
 入口部分は廃墟になった遺跡らしい。大昔の神殿か何かだろうか?
 「地上部は小さい」と聞いていたが、とんでもない。かなり大きい建物だ。
 冒険者達の行き来で踏み固められた道を通り、正面の階段を登って半壊した遺跡に足を踏み入れる。門扉は既にない。

 そこは広間になっていた。天井はほとんど落ちていて、差し込む陽の光が古びた石畳を照らし出す。正面には何か石像でもあったのだろうが、すっかり崩れ落ちてガレキの山と化している。
 建物の奥を目指し、回廊を進む。
 左右の小部屋の中に人影が動いた。壁が崩れていて中が丸見えの場所もあるが、こちらを気にするでもなく何かしており、ハンモックで寝ている人までいる。

「ココって……人が住んでるの?」

「ああ。時折、モンスターがあふれ出てくる危険な区域だが、遺跡部分もダンジョン扱いのため、滞在は自己責任で特別な許可は要らない。規制もない。安全が保障されない代わりに力さえあれば家賃が掛からない住居とも言える。住んでるのは余程のダンジョン好きか、自前でセキュリティを構築できる腕がある者か、本当に金がないか、だな」

「あまり人付き合いが好きじゃない奴、って場合もありやすぜ」

 物陰から細身の男がゆらりと立ち上がって道をふさぐ。

「ごきげんよう、“アノール” の旦那。お目に掛かれて光栄です」

 男はニヤニヤ笑いながら話しかけてきた。軽く腰を落として、いつでも逃げられる体勢だ。

「アノール?」

「エルフ語で太陽って意味。ラヴィの通り名よ」

「“二つ星”ステラ嬢が一緒なら戦力に不足はねえでしょうが、子供達のおりは大変でがしょ? ぜひとも手伝わせてくださいな」

「何が目的だ」

「そりゃもちろん、ですよ、旦那。あっしにも御相伴ごしょうばんにあずからせてくだせえ」

 どうやらこの男は俺たちの目的を知っているらしい。

「なあに、あっしの昨日の夕飯もぐるぐるでしてね。皆さんの計画が聞こえちまったんでさぁ。いえね、山盛りのぐるぐる、ちょいと食べてみたいと思いやして」

 なるほど。店内で普通にしゃべってたからな。他にも聞いてた客は多いだろう。

「野生のぐるぐるを見かけたこたぁありやせんが、薄切り前のあの形状フォルム、人喰いカズラやヘビ瓢箪ひょうたんの類じゃないんすか? だとしたら、崖か太い木を登って採取する手が必要でしょ? 身の軽いあっしは役に立ちますぜ? 斥候でもでも何でもござれ。どうです? ああ、あっしは……そうだな、ロック・スミスと呼んでくだせえ」

 へへへ…と笑う男。
 口数が多く愛想が良いが、一言で言うなら「うさん臭い」。

「ラヴィ、ああいう手合いとは関わり合いにならない方がいいんじゃない?」

 ステラがラヴィの背中へささやく。

「ロックスミス、『鍵屋』だなんてあからさまな偽名じゃないの」

「偽名と分かりやすく名乗った分だけ、を見せてくれてるんだろう」

 ラヴィの言葉に肩をすくめてニヤリと笑うロック。

「鑑定…しましょうか?」

「いや、オーラの色はそれほど悪くない。酒場で隣に座った酔っぱらいの財布は少々軽くなるかも知れんが……ユーキ、どうだ? 見覚えあるか?」

「うん、たぶん…いつも夜遅めに来る人だと思う。混んでてもちゃんと列に並ぶし、怒鳴ったりしないで普通に注文して食べてる」

「そうか」

 ラヴィは腰の剣に掛けていた左手を下ろし、右手を差し出す。

「よろしく頼む。ラヴィだ。今回の目的地は地下3階。先を歩いてくれ、ロック。それと“アノール“も”旦那”もナシだ」

「じゃ、ラヴィと呼んでも?」

「好きにしろ」

「へい。じゃ、お先に」

 握手を求めるラヴィの手にはに、男は先に立って石畳の回廊を進んでゆく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

処理中です...