神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

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親友同士

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「お、うまそう!」

「キュ、キュウ~!」

 弁当を開けるとチビ助もニーナから離れて近づいて来る
 チキンソテーに魚のフライに野菜のコンソメ煮、キノコとセロリのマリネに……お、体力回復効果のある薬草が風味づけに使われてる!
 うまそうな特製弁当だ。

「キュッキュキュウ~?」

 どれから食べようかな~?と首をかしげるチビ助に、係員が器を差し出す。

「こちらが聖獣のエサになります」

 器には乾パンのような乾燥したエサがひと山。
 一般的に聖獣のエサとして売られているドライフードだ。マズくはないが、それほど美味くもないらしい。
 チビ助が露骨に嫌な顔をする。昨日、聖獣舎で出されたエサもこれだったそうだ。

「好き嫌い言わず、チビ助も食っとけ。ライゼルと一緒に戦うんだろ?」

「キュッ!」

 先輩に背中を叩かれて前のめりになりながら、チビ助は器に手を伸ばす。

「いいモンがあるぞ、チビ助。ほら、トッピングだ」

 俺は胸ポケットからサイコロ状に角切りしたニンジンを取り出し、ドライフードに散りばめる。

「……キュ? キュッ!!」

「そう。俺の畑のニンジン。昨日、食いたいって言ってたろ? 少ししか持ってこれなかったけど」

 はむはむはむ……
 大喜びで人の話も聞かずに食べ始める。
 角切りニンジン口に放り込み、両手でほっぺを押さえるチビ助。

「キュウウゥ~」

 幸せそうにモグモグしてるチビ助を見ながら、俺も弁当を詰め込む。
 うん、美味い。
 少し濃いめのコクのあるソースがチキンによく合ってる。
 添えてある焼き立てパンをひとくち。もっかい肉。
 マリネに入っている薬草の香味は口の中をサッパリとさせ、体力を……

「貴様ッ! 何故ココに!?」

 振り向くと、トラを連れた男子学生が人のことを指差してワナワナ震えている。
 第三チェックポイントへ向かう峠道は傾斜がキツいためにZ型に折り返している。さらに道なりに行くとやや遠回りになるため、ガケを降りてチェックポイントに直行した俺の方が早かった。
 人を突き飛ばしておいてその態度はないだろうと思ったが、ジークと違ってガケ下に突き落とされたのではないのでちょっと許せる。
 麻痺してんな俺。
 ふと見るとジークはゴールドドラゴンを連れて姿を消していた。

「一体どうやって…ぶはぁ!!」

 大声で叫んでいた男子学生が後ろから来た聖獣にはね飛ばされる。
 聖獣はペタペタと地面をはいながら、キバだらけの大きな口を開けて挨拶する。

「グガァ!」

「おう、プルア! という事は…」

 巨大なクロコダイルの後ろに視線を移すと、濡れた制服を絞っているカチュアがいる。

「大変だったんだから! あの後、湖から滝へ出て! 落ちるわ、流されるわ、川から飛び出してダッシュするわ。もー、はしゃぎ過ぎ!」

 カチュアも過酷な道中だったらしい。

「カチュア!」

 濡れるのも構わずニーナが飛びつく。

「間に合った?」

「ギリギリ。32位!」

「一緒に第三試験エクセレント・ステージに進めるね」

「そう。負けないからね!」

 お互いの手を取り指を組んで合わせ、ぴょんぴょんと跳ねている。
 そんな2人の動きが急に止まる。

「……あれ?」

「あれは……」

 何? どうした?

「ライゼル! 早く来て! 見て、アレ…」

 急いで休憩スペースを飛び出し、カチュアが指差す方を見る。
 ゴールゲートの向こう、最後の直線走路を土煙を上げて疾走して来る聖獣がいる。
 見たことがない聖獣だ。
 学生全員が契約した聖獣を覚えてるわけじゃないが、あんな形状の聖獣は今まで見たことがない。
 巨大な体にはいくつもの突起物。外皮が硬質化して、パーツが重なりあった鎧のようになっている。パーツは鋭角な角を持ち上げて風の抵抗を減らす形でなだらかに全身を覆っている。
 全身に青く輝く鎧をまとった王宮騎士のようだ。
 先行する聖獣達を次々と抜き去り、青い閃光はゴールゲートに走り込む。
 数十mかけて減速し、鎧の聖獣はようやく止まった。

「すげー!」
「こんなのいた!?」
「何の聖獣?」
「まさか伝説種レジェンド!?」

 異変に気づいた学生や係員が何人も様子を見に出てくる。
 カチュアとニーナ、そしてもちろんライゼルも近寄って聖獣を見上げる。
 デカい。象くらいある。
 振り向いた顔の中央には目立つ一本の角。

「あー、やっぱりもうゴールしてたか」

 頭上から聞き慣れた声が降ってくる。

「追い抜かしてやろうと全速力で走って来たけど、途中で見かけなかったからさァ」

 そう言って聖獣の背中から顔を見せたのはダァンだ。背中に伏せるようにして騎乗していたらしい。
 聖獣が呼吸するたびに鎧のような外皮はゆっくりと元の皮膚に戻っていく。【装甲化アーマード】。戦闘向けスキルの一種だ。
 ダァンは聖獣から飛び降りるとライゼルに近づき、目を見てはっきりと告げる。

「受け止める準備ができた、お前の話。後でもう一度、最初から聞かせてくれ。…すぐに信じられなくて悪かった」

「ありがとう。自分でも信じられなくて、お前に八つ当たりしたのかも。ごめんな」

 ニヤリと笑って握り拳を突き合わせるライゼルとダァン。
 ケンカは終わった。
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