世界樹の管理人

浅間遊歩

文字の大きさ
2 / 77
第1章 初めての旅

私はミリアナ

しおりを挟む

「資格…ですか?」
「そう。思いもよらないことだろうけど、……そうだ、ミリアナ。君は魔法に興味があるかい?」

 う~ん、何が言いたいのか分からない。
 もっと要点をかいつまんで、分かりやすく話してほしい。
 だけど、この質問なら返事は楽だ。

「はい、あります。将来は夜学に行って魔法を学び、それこそ何か資格を取りたいんです」
「夜学? どうして」

 それを聞くか? 嫌な人。

「お金がないので。昼間働きながら夜間の簡易講座を取るしかないんです。どこかに住み込みの仕事を探して、働きながら魔法を学ぼうと思います」

 あと3年して15歳になったら孤児院を出なければならない。
 手に職をつければ孤児院育ちでも食うには困らないだろう。世の中には、趣味の教養や遊び目的で魔法を習う人もいるそうだが、私にそんな余裕はない。生活のためだ。

 私は思わず男をにらんでしまったらしい。男は一瞬、たじろいだが、すぐに笑顔になって言った。

「それなら丁度いい。私達は住み込みで働いてくれる人を探しているんだ。ただし少しばかり素質に条件があってね。熟練の魔術師でなくとも構わない。潜在能力の方向性が合えば…。でも、君の若さではまだ働く気にならないのでは?と心配したんだ」
「お仕事…ですか? どのようなお仕事でしょう? 私、子供の世話や家事ならできますけど。あ、文字も読めます。子供達に本を読んでやるので。それから…」
「世話といえば世話かもしれない。ねぇ、ミリアナ。木や花は好き?」

 またか!
 ううう、もういいや。この人は、こういう話し方をする人なんだ、きっと。
 話があちらこちら、突拍子もない方向へと跳ね回る。最初はバカにしてるのかと思ったけど、説明するのが下手なだけのようだ。大人なのに。

「はい。木も花も大好きです」
「この子は植物の世話がとても上手いですよ。綺麗な花を育てたり見事な野菜を育てるのが得意なんです」

 院長先生も口添えをしてくれた。

 私達が暮らしているのは「緑の羊園」と名付けられた孤児院。
 豊穣と慈愛の地母神・ファーティエンが連れていたとされる緑色の羊にあやかった名前だ。

 孤児院では、両親が死んでしまった子供や事情があって育てる人がいない子供を預かり、大人になるまで世話をする。
 ただ寝る場所と食料を与えるだけではない。ある程度のしつけと教育を施し、大人になったら自分の力で生きていけるようにするのだ。
 それは国内の治安向上にも役に立つということで、国からわずかばかりの支援金も出ている。

 中には、幸運なことに、大人になる前に養子縁組が決まって孤児院から卒業していく子もいる。
 でもそういうのは大抵、新しい家族に馴染みやすい幼い子供か赤ん坊。さもなければ、力仕事ですぐに親の手伝いができる男の子と決まっていた。
 私のように育ちすぎた女の子を新しい家族にと望んでくれる人はとても少ないのだ。

 そうして大人になって孤児院を卒業した女の子達の中には、悪い人に騙されて悪い仕事をするようになってしまった人もいて、先生方はいつも心を痛めていた。
 それで、先生方は女の子がまともな仕事を見つけられるように、教育にとても熱心だった。読み書きと計算と家事。それらができれば仕事が見つかることが多かったし、少なくとも自分の身の回りの世話ができれば、他の仕事を覚えて自立するのも楽だった。

 住み込みで働く人を探しているというのが本当なら、少し早いが良い話だと院長先生は考えたに違いない。

「それはいい。それでは、仕事の面接を受けてみないかね?」

 男はホッとしたように明るい声で言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

処理中です...