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第1章 初めての旅
私はミリアナ
しおりを挟む「資格…ですか?」
「そう。思いもよらないことだろうけど、……そうだ、ミリアナ。君は魔法に興味があるかい?」
う~ん、何が言いたいのか分からない。
もっと要点をかいつまんで、分かりやすく話してほしい。
だけど、この質問なら返事は楽だ。
「はい、あります。将来は夜学に行って魔法を学び、それこそ何か資格を取りたいんです」
「夜学? どうして」
それを聞くか? 嫌な人。
「お金がないので。昼間働きながら夜間の簡易講座を取るしかないんです。どこかに住み込みの仕事を探して、働きながら魔法を学ぼうと思います」
あと3年して15歳になったら孤児院を出なければならない。
手に職をつければ孤児院育ちでも食うには困らないだろう。世の中には、趣味の教養や遊び目的で魔法を習う人もいるそうだが、私にそんな余裕はない。生活のためだ。
私は思わず男をにらんでしまったらしい。男は一瞬、たじろいだが、すぐに笑顔になって言った。
「それなら丁度いい。私達は住み込みで働いてくれる人を探しているんだ。ただし少しばかり素質に条件があってね。熟練の魔術師でなくとも構わない。潜在能力の方向性が合えば…。でも、君の若さではまだ働く気にならないのでは?と心配したんだ」
「お仕事…ですか? どのようなお仕事でしょう? 私、子供の世話や家事ならできますけど。あ、文字も読めます。子供達に本を読んでやるので。それから…」
「世話といえば世話かもしれない。ねぇ、ミリアナ。木や花は好き?」
またか!
ううう、もういいや。この人は、こういう話し方をする人なんだ、きっと。
話があちらこちら、突拍子もない方向へと跳ね回る。最初はバカにしてるのかと思ったけど、説明するのが下手なだけのようだ。大人なのに。
「はい。木も花も大好きです」
「この子は植物の世話がとても上手いですよ。綺麗な花を育てたり見事な野菜を育てるのが得意なんです」
院長先生も口添えをしてくれた。
私達が暮らしているのは「緑の羊園」と名付けられた孤児院。
豊穣と慈愛の地母神・ファーティエンが連れていたとされる緑色の羊にあやかった名前だ。
孤児院では、両親が死んでしまった子供や事情があって育てる人がいない子供を預かり、大人になるまで世話をする。
ただ寝る場所と食料を与えるだけではない。ある程度のしつけと教育を施し、大人になったら自分の力で生きていけるようにするのだ。
それは国内の治安向上にも役に立つということで、国からわずかばかりの支援金も出ている。
中には、幸運なことに、大人になる前に養子縁組が決まって孤児院から卒業していく子もいる。
でもそういうのは大抵、新しい家族に馴染みやすい幼い子供か赤ん坊。さもなければ、力仕事ですぐに親の手伝いができる男の子と決まっていた。
私のように育ちすぎた女の子を新しい家族にと望んでくれる人はとても少ないのだ。
そうして大人になって孤児院を卒業した女の子達の中には、悪い人に騙されて悪い仕事をするようになってしまった人もいて、先生方はいつも心を痛めていた。
それで、先生方は女の子がまともな仕事を見つけられるように、教育にとても熱心だった。読み書きと計算と家事。それらができれば仕事が見つかることが多かったし、少なくとも自分の身の回りの世話ができれば、他の仕事を覚えて自立するのも楽だった。
住み込みで働く人を探しているというのが本当なら、少し早いが良い話だと院長先生は考えたに違いない。
「それはいい。それでは、仕事の面接を受けてみないかね?」
男はホッとしたように明るい声で言った。
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