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第1章 初めての旅
証明の証明
しおりを挟む「コータルタイの商人、マクス・ルーベンです。こちら二人は息子。こちらの子はウモグルの知人から頼まれてマホテアまで送って行きます」
ルーベンさんは、そう説明をしながら、4人分の身分証明書と通商許可証を検問の兵士に差し出した。
ルーベンさんたちの身分証明書は私のものとは違い、白っぽい木の板だった。
私のカードよりだいぶ大きく、名前や登録地が黒いインクで書かれており、朱印と焼印が押されている。
私のは一往復限りの臨時のものだから小さいのかもしれない。
兵士の一人がそれを受け取り、すぐ隣にある記録係の机の上に置く。それを見て係員が記録帳に書き写す。
数人の兵士が馬車の中や台車の下を確認し、貨物の内訳を記録していく。
事前にルーベンさんが作成した一覧表を見ながらなので、チェックはかなり早い。それでも商品を一つ一つ確認するので時間がかかった。
ようやく積み荷の確認が終わり、検問も終わるかと思われたその時、急に辺りがざわめき始めた。
遠くから血相を変えた兵士が走ってくる。
「おい、お前!」
呼び止められた。
「お前か! 身分詐称で逮捕する!」
「はあ? 何のことです?」
「とぼけるな! なんだ、これは!」
怒鳴る兵士が手に取ったのは、薄緑色の綺麗なカード。
「それは私のです!」
返してもらおうと手を伸ばすと、兵士はカードを手の届かない高さまで持ち上げた。
「お前が?」
ジロジロと遠慮のない視線で私を見る。
「ハッ! 人間の子供じゃないか。嘘つきめ! これは精霊族の通行許可証だぞ?」
「エルフ…?」
「この子が行くのはマホテアです。エルフの御用で呼ばれたなら、エルフの許可証で構わないでしょう?」
ルーベンさんは兵士の怒鳴り声にひるむことなく言い返す。
「エルフがこんなガキにどんな用事があるってんだ。いい加減にしろ!」
「その通行証にはエルフ王国の公式の印章があります。どんな用事かはエルフの王様にでも問い合わせてみればいいじゃないですか」
「フン。お前は…商人か。おおかた、いい加減な証明書を偽造して子供を連れ回してるんだろう。子供も商品か?」
「何ですって!?」
ルーベンさんの目が険しくなった。
「そこまでおっしゃるのなら、その許可証が本物かどうか既に確認してあるんでしょうね? ええ、ええ。まさか魔法認証を知らないわけではありますまい。ほら、その、カード自体に魔力で刻印が押してありますよ。さっさと判定機を持っていらっしゃい。なけりゃ領主様にでも借りてくるといい」
「……な、なん…だそれは…」
うろたえて小声になった兵士の後ろから、別の兵士が板のような物を差し出した。
「主任、コレを…」
厚みのある板のような器具は、細かい彫刻が施されていて、美術品のような美しさだった。
四角い板の周囲には絡み合うツタの彫刻があり、隣り合う二つの角には同心円の紋様があった。上部表面には平らなガラスのようなものがはめ込まれている。ツヤがある乳白色で、磨いた水晶かメノウのようにも見えた。
「さあ、そのカードを置いて」
ルーベンさんに促され、判定機を持ってきた兵士が先輩からカードを受け取り、判定機に乗せた。
その後ろから、別の兵士が声をかける。
「…四角い枠の部分に被験者の右手親指を押し当て、その状態で左右の……あった、ココだ!……えー、円模様の中心に微量の魔力を流し…」
手には小さな小冊子。どうやら取り扱い説明書のようだ。
判定機を持った兵士は手の位置を調整し、紋様の部分をつかむように持ち直した。
「指を乗せてください」
「ミリアナ。このカードに君の魔力パターンを登録した時のことを覚えてるかい? 同じように指を乗せてごらん」
兵士とルーベンにうながされ、ミリアナは自分の右手親指を指の腹を下にしてカードに押し当てた。
誰でも生まれた時から多少の魔力は持っていて、成長や訓練と共に量が増してゆく。ただしその成分、すなわち属性の混ざり具合は人によって違い、短期間で変わることはほとんどない。それを利用した判別法が魔法認証。魔法に長けたエルフが開発した技術だそうだ。個人の判別や国家間の取引、重要な証文の署名として使われるものらしい。
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