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第1章 初めての旅
歌う小鳩亭
しおりを挟む「着いたぞ」
デレファンの声に顔を上げると、大きな建物の前にいた。
柱が太く、頑丈な作りだ。天井が高いのか、玄関の扉も普通よりだいぶ大きい。窓の並びを見ると建物は二階建てで、屋根裏部屋まであるようだ。横手には馬小屋があり、裏には馬車を停める場所もあるらしい。
「ここは?」
「今晩、泊まる宿だよ」
ルーベンさんが教えてくれた。それからマグリーの肩を叩き、
「さあ、マグリー。ミリアナを案内してやりなさい。先に中へ入って、女将さんにルーベンが来たと伝えてくれ。いつもの二階の部屋を用意してくれてるはずだ。ミリアナ用に追加のベッドを頼んでくれ。私とデレファンは馬車を預けてから行くから」
「ああ! 来いよ、ミリアナ!」
マグリーは元気を取り戻し、私を先導して歩き出した。
「すごい宿だね。ウモグル村の村長さんちより大きいよ」
「俺、ここに泊まるの好きだな。飯はうまいし、ベッドは清潔で大きいし。人間より大きな種族の旅人が来ることもあるから、部屋を大きく作ったんだって」
「へええええ」
宿の入り口に近づくと、看板がかかっているのが見えた。
描かれているのは白い鳩だろうか?
翼を広げてポーズを取っているが、丸々と太っていて今にも転がりそうだ。
「『歌う小鳩亭』さ。でも『踊る子豚亭』って呼ぶ奴もいる」
重い木の扉を押し開けながら、そう言ってマグリーはクスクスと笑った。
歌う小鳩亭は、うわさ通りのステキな宿だった。特に食事。
パンもシチューも付け合わせの野菜も本当においしくて夢中で食べてしまった。
デレファンとマグリーは、おかわりまでした……らしい。
私はと言うと、食べ終わった直後にスプーンを握りしめたまま、その場で眠ってしまったんだそうだ。
「覚えてない…」
翌朝、話を聞いてビックリ。
「最後のひとくちまで食べきってたのはスゴイと思ったね。執念だよ」
「食堂にいた人達みんなに笑われちゃったんじゃない?」
「大丈夫。3人くらいは笑ってなかった」
「それってほとんどの人は笑ってたってことじゃない!」
いやぁ! もう外を歩けないよ!
「よっぽど疲れたんだろう。もう少し寝ててもいいよ」
「いえ! 起きます! 平気です!」
というより、寝すぎて寝られない。
「それじゃあ、今日の予定の確認だ。私は数ヶ所に納品を済ませてから商業組合に顔を出す。午前中いっぱい、かかるだろう」
と、ルーベンさん。次にデレファンが、
「俺は冒険者組合だ。受けられる仕事があるか分からないが、情報収集がてら、見るだけ見てくる」
「え? 冒険者ギルド!?」
タークとジェンクが憧れていた冒険者の組合だ。
大人からは、「少し胡散臭い何でも屋」と見られているらしいが、子供達には大人気。
もちろん私も興味がある。べ、別に子供じゃないけど!
「何しに行くの?」
「何って…、俺、冒険者だし」
「ホント!? ウソ??」
思わず身を乗り出して詰め寄ってしまった。
「ホントホント。商人の方が本業だけど……ほら!」
と、胸元から革紐で下げた金属のプレートを取り出して見せてくれた。
プレートには名前と所属、認識番号、それに冒険者ギルドの象徴である翼のマークが刻印されている。どこまでも飛んで行って迅速に問題を解決します、との意味が込められているらしい。
その端には、小さくカットされた水晶が埋め込んであった。
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