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第1章 初めての旅
今日の予定は
しおりを挟む「全部読んで勉強すれば、すぐに冒険者の試験が受けられるぜ」
そう言いながら、マグリーが横から本をのぞきこんだ。
冒険者になるには、ちょっとした試験があるのだそうだ。ほとんどは常識問題でそれほど難しくないが、冒険者入門を読んで覚えておけば、さらに楽になるらしい。
「じゃ、マグリーが使うんじゃないの?」
と、冒険者入門を渡そうとすると、マグリーは、
「いいよ。一通り読んだし、試験は受けないから」
との返事。
「マグリーは冒険者にはならないの?」
「兄さんがやってれば聖域を通れるから充分かな。資格を取ったら組合費を払わなきゃならないし」
「男の子って、みんな冒険者になりたいんだと思ってた」
緑の羊園のタークとジェンクだけでなく、ウモグル村の男の子達にも冒険者は人気だった。
「俺はどちらかというと、細工師の方に興味がある。伝統工芸じゃなくて、魔法を織り込んだ新しい技術の方。そういう工房に見学に行ったりしてるんだ」
「へー」
歳はそれほど違わないはずなのに、マグリーはしっかりと自分の将来について考えているようだ。
「ミリアナは魔法に興味があるんだし、とりあえず試驗を受けてみれば?」
「でも、未成年じゃ無理でしょ?」
「そうでもない。成人前に水晶どころか、もっと上まで行った奴もいる」
デレファンによると、マホテアの冒険者ギルドにそういう人がいるという。
「その辺りのランクは回数勝負のところもあるし、最初は街中でできる簡単な仕事や聖域での薬草採取なんかでポイントを稼ぐんだ」
「薬草や各種素材は依頼を受けずに採取しても買い取ってもらえるから、こまめに集めるといいぜ。俺も兄さんを手伝ってる」
「おいおい、お前たち。ミリアナは仕事の面接に向かうところだぞ?」
すっかり「冒険者を目指して都会へ向かう田舎娘にアドバイスする先輩の図」になってしまい、ルーベンさんがあきれている。
「ミリアナ。私からはこれを渡しておこう」
取り出したのは小袋だ。受け取って確認すると、中には銀貨と銅貨が入っていた。
「これは…?」
「君の旅費の一部だよ。先方から届いた為替手形を換金したんだ」
「それじゃあ、ルーベンさんが持っててください。町に入る税金も宿代も食費も、全部ルーベンさんが出してくれてますよね?」
袋ごと返そうとすると、ルーベンさんはそれを私の手に乗せて包み込んだ。
「預かった金額は、君が完全なお客様なら妥当で悪くない。だが息子たちの後輩で、何かと手伝ってくれてる現状ではもらいすぎだ。これはお釣りだよ。時間が空く午前中は、マグリーと一緒に必要な物を買いに行ってみてはどうかね?」
お買い物!
何という、心踊るワード!
思わず顔がほころぶ。
あるもので何とかしようと思っていたけど、本当は足りない物が結構ある。先生に買ってくれと言えなかっただけだ。だって孤児院には、まだまだたくさんの子供達がいるのだから。
「私、これからもたくさんお手伝いします!」
「ははは。それは頼もしい」
「安い店も品質の良い店もどっちも知ってるから、どこでも案内するぜ」
マグリーが任せろと胸を叩く。
これで全員の予定が決まった。
私達は歌う小鳩亭を後にした。
ルーベンさん達と別れた後、私とマグリーはまず噴水広場に向かった。
広場に入ると、目についたのは食べ物や飲み物を売る屋台。まるで光の曜日のように、いくつもの屋台が並んでいる。
アゼッサでは、闇の曜日以外は毎日、こんな風に屋台が出ているのだそうだ。おなじみの軽食やジュース、食べ歩きできるナッツやドライフルーツ、それにお菓子や他の地方の郷土料理まで。どれも美味しそうすぎる!
「コレ! 絶対うまいから食ってみ?」
その中でもおススメだという串焼きを、マグリーが約束通りにおごってくれた。
南の方の島々で広く食べられている串焼きだそうだ。一口大に切った鳥や獣の肉をスパイスの効いたタレに漬け込み、長い串に刺してあぶり焼きにしてある。
彫刻から湧き出る水がよく見える位置のベンチに座り、まだ湯気の出ている串焼きに齧り付く。
「んんっ………おいしい!!」
「だろ?」
慣れない風味に一瞬とまどったが、脂が乗った肉に香辛料と塩がよく絡み、焦げたタレが香ばしい。
噛めば噛むほど食欲が湧いてくる感じ。
歌う小鳩亭で朝ごはんを食べたばかりだってのに、こういうのは入るんだよ。不思議だよね!
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